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13話:遺跡調査

 馬蹄の音が静かな朝の空気を切り裂く中、俺たちはアルカディア王国の王都を後にした。

 険しい山道と広大な平原を越えながら進む一行は、刻一刻と帝国の国境へと近づいていく。


 道中、仲間たちと簡単な会話を交わしつつも、俺の頭の中では常に作戦の細部を再確認していた。

 目的は偵察と、悪魔教徒の目的を探ること。


 俺は改めて仲間を見る。

 仲間の命を預かる身だ。中には俺よりも階級の高い騎士もいるが、全員が長年一緒に戦ってきた戦友であり、信頼している仲間たちだ。

 俺を信頼してくれたんだ。死なせるわけにはいかねぇな。


 途中、エリアスが馬を並べてきた。


「リクさん、これが帝国との国境に近づくってことですよね?」

「そうだ。予定通り帝国領に入る前に一度拠点を設け、周辺の情報を集めるのが先決だ」


 エリアスは前方を見据え、少し緊張した面持ちで頷いた。彼女もまた、この旅の重みをしっかりと受け止めているようだった。


 セリナが後ろから声をかけてきた。


「リクさん、妙に静かな気がします」


 王都を出発してから数日が経過し、今は帝国との国境付近。日中であるにもかかわらず、異様に静かだった。

 俺も気にしていたことを、セリナは聞いてきたのだ。

 俺は握り拳を上げ、止まることにした。

 仲間の一人、カイルが口を開いた。


「リク、どうしたんだ?」


 これまで見かけていたはずの旅人や商人の姿が、ここ数里ほど一切見当たらない。


「確かに……警戒を強めよう。全員、各自の武器を確認しておけ。いつ何が起きてもおかしくない」

「了解!」


 大きな声でもなく、それでいてしっかりと全員が頷いた。

 俺の指示を受けて、仲間たちは一斉に装備を整え直し、緊張感が一層高まった。


 日が沈む頃、俺たち一行は適切な場所を見つけて仮の拠点を設営した。

 崖下に広がる森林を見渡せる高台で、敵の接近を監視しやすい場所だ。良い場所を見つけたと思う。


 俺は見張りを交代で立てつつ、地図を広げて次の行動を考えていた。その隣にはセリナが座り、静かにお茶を差し出してきた。


「リクさん、少し休んでください。ずっと考え事ばかりしていては、体が持ちませんよ」

「……ありがとう、セリナ。ここまで順調だとしても、次の一手をどうしようかとな」


 俺が悩んでいると、エリアスが多きな声でこちらに向かってきた。


「リクさん! 先ほど偵察に行った仲間が帰還しました。近くに奇妙な遺跡を見つけたらしいです!」

「遺跡だと?」


 俺はすぐに立ち上がり、偵察を担当していた仲間のもとに向かう。


「どういう遺跡だ? 詳しく話してくれ」

「はい。森の奥にある崩れた建造物で、中央には祭壇のような場所がありました。どうやら、最近誰かが出入りしていたような痕跡もありました」


 祭壇と出入りの痕跡……放置しておくわけにはいかないだろう。

 しかし、無防備に突入するのは自殺行為だ。


「明朝、慎重に調査を進める。全員、今夜は最低限の休息を取るように。明日は厳しい一日になるかもしれない」


 俺の命令に全員が応じ、一行はそれぞれの役割を胸に刻みながら眠りについた。

 翌朝、俺たちは準備をして遺跡へと向かった。


 遺跡は森の奥深く、自然に覆われてひっそりと佇んでいた。薄暗い木々の隙間から見えるその建物は、何か不気味な雰囲気を漂わせている。


「セリナ、魔法で周囲を感知できるか?」


 この中で魔法の扱いに長けているのは、セリナだけだ。エリアスも使えるが、どちらかと言うと戦闘向きが多い。

 かくいう俺も、探知はできるがここは適材適所といこう。


「はい。少しお待ちください……」


 セリナが目を閉じて呪文を唱え始めた。その瞬間、周囲の空気が微かに揺れ動くのを感じた。確認すると、魔力の流れが不自然だった。


「……この遺跡の中、明らかに異常な魔力の流れがあります」


 セリナも感じ取ったようで、その言葉に全員が表情引き締めた。


「内部と周辺に人の気配はないようです」

「俺も先ほど確認しているが、内部の魔力が不自然だから確認できない可能性もある。注意して進もう。五名はここで待機し、周辺の警戒に当たれ」

「では、勇者様とリク以外なら俺が魔力の扱いは得意なので残って警戒しよう」


 カイルが率先して名乗り出て、他四名も名乗り出てくれた。


「俺たちは遺跡に向かうが、何か起きた場合はセリアに合図の火球を出させる。二つの火球が出た場合のみ遺跡に突入するように。一つだけの場合は、周辺の警戒度を上げてくれ。戦闘になった場合、時間を稼ぎつつ誰かが俺たちを呼べ」


 全員が頷いた。


「よし、行くぞ」


 俺たちは互いに目配せをし、慎重に遺跡の中へと足を踏み入れた。

 内部には古い石像や壊れた柱が散乱しており、空気は異様なまでにひんやりとしていた。

 奥に進んでいくと、祭壇があった。儀式を行った後なのか祭壇には魔法陣が描かれており、輝いていた。

 その祭壇の上には人間の死体が十人ほど積まれるように無造作に置かれ、大量の血が流れていた。


「うっ……」


 エリアスとセリナが、濃い血の匂いに鼻を覆う。

 それでもすぐに剣を引き抜き、警戒する辺り臆してはいないようだった。

 死体を確認しようとして、奥から足音が聞こえた。





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