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創造力≪イマジネーション≫で最高異世界ライフ!  作者: Aito
第1章 創造力≪イマジネーション≫
4/4

#4 王城侵入

 とりあえず、王城侵入は明日決行することにして、今日はもう休むことにした。

 裏路地から出て、街灯に照らされる表通りに戻る。未だに結構な人が通りを通っていた。酒場なんかは未だに賑わいを見せているし、屋台もまだ閉めているところは少ない。宿屋はどこだ?


「あの~、ちょっといいです?」

「?どうかしたのか?」


ちょいちょいっと、ルーナが俺のコートの袖口を引っ張った。俺の隣を歩くルーナに視線を向ける。


「いえ、まだお名前をお聞きしていなかったなと」

「……ああ、まだ言ってなかったっけ?龍雅、天神 龍雅(あまがみ りゅうが)。龍雅でいいよ」

「龍雅様……」


まるで愛しいものの名前でも呼ぶようにルーナが俺の名前を呼ぶ。思わずドキッとしてしまった。な、何でそんな呼び方すんの……?


「様はいいよ。そんな身分じゃないし、正直むず痒い」

「では、龍雅さんで」


赤くなってそうな顔を逸らし、様付けは止めてとルーナに要求する。さん付けも少し恥ずかしいけど、育ちのいいお姫様だし、これぐらいが普通なのかもしれない。


「お、あったあった」


目的の看板を見つけた。「宿屋 アミルン」とりあえずここに泊まることにしよう。この騒動が片付いたらまたちゃんとした宿屋を探せばいいや。




「いらっしゃい。食事かい?それとも泊りかな?」


木製の扉を開けて中に入ると、扉の縁にかけてあったベルからチリンチリンっと音が鳴る。カウンターにいたお兄さんが声を掛けてきた。年は大体、23歳ぐらい。長い金髪を立たせて、鉢巻みたいなものを巻いている。そして、その鉢巻の上から左目にかかるほど長い前髪が垂れていた。……なんかチャラそうな人。


「二部屋お願いします。とりあえず1日だけ」

「あ~、ごめんねお客さん。今日はもうあと一部屋しか空いてないんだよ。相部屋でもいいかい?」


相部屋かぁ……。チラッと俺は視線を隣に立っているルーナ(すでにフードをかぶり直している)に向ける。俺よりこっちの意見を優先させよう。俺の視線に気づいたルーナは、手をひらひらさせ、耳を寄せるように指示してくる。声を聞かれたくないのだろう。


『私は構いませんよ』


ルーナの息が耳にかかって少しむず痒い。


「相部屋で構わないそうなので、それでお願いします」

「おっけー、そんじゃこれにどっちかの名前書いて」


カウンターの下からお兄さんが宿帳とすでにインクがつけられている羽ペンを取り出す。それを受け取って、俺は自分の名前を書いた。


「天神龍雅っと」

「へぇ~珍しい。お客さん名前漢字なんだ」

「え、珍しいんですか?」

「うん、基本はカタカナだし名前の順番も違うね。ああ、もしかして天照(アマテラス)の人?この形式の名前使うのはあの国だけだったはずだし」


天照(アマテラス)?天照って天照大御神のことか?この世界だと国の名前になってるんだな。


「いや違いますけど」

「あ、違うんだ。じゃぁ親が天照(アマテラス)の人とか?」

「まぁ……そんなとこです」


とりあえず適当に誤魔化しておこう。馬鹿正直に「異世界出身です!」なんて言えるわけないし。


「一泊だから銀貨一枚ね」


巾着袋から銀貨一枚を差し出す。銀貨を受け取ったお兄さんは、後ろの棚の引き出しを引いて、中から鍵を取り出した。その引き出しには『203』の数字。きっと部屋の番号だろう。


「ほい、これ部屋の鍵ね。部屋は二階の奥から二番目、鍵はお昼前までに返してくれればいいよ。大浴場と食堂は君たちから見て右手の廊下を進めば札が立ってるからすぐわかる」

「分かりました。ありがとうございます」


そう言って頭を少し下げ、階段へと向かう。後ろのルーナも声は出してはないが頭を下げていた。

 部屋は質素な感じで、これと言って特徴は感じられなかった。木製のベットとタンス、机に椅子ぐらいの家具しかない。いやまぁ、浴場とか食堂は下にあるしボロくもないんだから案外いい物件なのかも。ここに寝泊まりし続けるのもありかもな。

 部屋の確認を済ませると、俺たちはすぐ食堂に降りた。食堂はそれなりの広さがあったが、結構人が座っていた。

 俺は「アマカリエ」というものを選んだ。その下には「カラカリエ」とか「ニガカリエ」とかあったけど、絶対これ「カリエ」ってのが食べ物の名前で「アマ」とか「カラ」とか「ニガ」って味のことだよな。

 ルーナは「サイブウィンチ」と「ソーンスーピ」を選んでいた。「サイブウィンチ」は何か分かるけど「ソーンスーピ」って何だ?「スーピ」ってのは多分「スープ」みたいなもんだと思うけど。

 そしてその疑問は、料理が届いた瞬間に解消されることになる。


「「カリエ」は「カレー」、「ソーンスーピ」は「コーンスープ」だったのか……」


届いた料理を見ながら思わづ呟いてしまう。言われればなんとなく名前の響きは似てるよな。「アマカリエ」は「甘口カレー」と遜色なかった。まぁこんな感じだと思ったよ。ただ、具材が入ってなかったけど。「ソーンスーピ」も「コーンスープ」と見た目に違いは見られなかった。味は食べてないから分からないけど、同じようなもんだろ。

 ご飯を食べ終わった後、俺は大浴場に、ルーナは部屋に戻った。ルーナは人に姿を見られるわけにはいかないので、今頃は部屋でお湯で濡らしたタオルで体と髪を洗っていることだろう。

 大浴場は、真ん中に大きな湯舟がある感じで、シャワーとかはやっぱりなかった。少々不便だが、中世時代のヨーロッパみたいな世界だし、それぐらいが普通なんだろう。湯舟は暖かかったし、文句はないさ。……今度暇があったら家を作ってみよう。

 部屋に戻ると、ルーナは既に体を洗い終えているようだった。こういうのは、着替えに遭遇してあわあわみたいな展開が待っているのではと、少し身構えていたのだが杞憂だったようだ。……期待なんかしてないぞ?


「明日は早朝に侵入するから、ルーナはもう寝な」

「龍雅さんは?」

「俺は明日の準備があるから。終わったら寝るよ。あ、ベットはルーナが使ってね」


俺がそう言うと、ルーナはしばらく「龍雅さんがベットを使ってください」と少しごねたが、何とか納得してもらった。

 部屋の隅にある机に腰掛ける。おいてあったランプの灯を消して、部屋の中は月明かりが照らすだけとなった。ルーナの寝息が聞こえ始めると、俺は正面の机に向き直った。机の正面には窓があり、町の様子がうかがえる。すでにほとんどの街灯が消されており、町もすでに月明かりだけに照らされていた。

 さて、王城に潜入と言ったはいいもののいったいどうやればいいのか……。とりあえず透明化の魔法ぐらいは作っておかないとな。体の奥底に意識を向け≪創造力イマジネーション≫を発動し、頭の中に≪透明化ステルス≫のイメージを詳細に思い浮かべる。まずは光の屈折とかを利用した感じにしてみるか。

 そんなこんなで、俺は≪創造力イマジネーション≫を使って、王城潜入に必要そうなものをあらかた揃え終えた。そして気づいたら眠っていたらしい。朝日がもうすぐ昇ろうとしていた時間帯にルーナに起こされた。うぅ、面目ねぇ。




「≪透明化ステルス≫」


ルーナの頭に手を置いて、昨夜作った透明化の魔法をかける。俺が魔法をかけると、俺の手の辺りからルーナの体がだんだん薄くなり、次第に見えなくなる。試しに机に置いてあったランプを手に取ってもらう。


「あの、これって本当に透明になってるんですか?」

「大丈夫だよ。自分の体は見えるようにしてあるから、あんまり自覚できないかもしれないけど」


今度は自分の胸に手を置く。そして≪透明化ステルス≫を自分の体にかける。≪魔力≫が体に広がっていく感覚がする。ルーナにちゃんと出来ているか確認してもらう。


「どう?」

「すごい……、しっかり姿が消えてます」


問題ないようだ。それじゃ次は……。≪バックパック≫を発動し、中から二つの近代的なデザインのサングラスを取り出す。目の周囲を囲むような感じの一つの大きな藍色のレンズがきらりと光を反射して輝いている。サイバーサングラスってやつだ。

 取り出したサングラスを机の上に置き、ルーナにかけるように言う。俺もサングラスを手に取ってかけた。すると、先ほどまで姿が見えなかったはずのルーナがそこにはいた。≪透明ステルス≫が解けたわけではない。このサングラスのレンズ越しにのみ≪透明化ステルス≫の効果を無効化しているだけだ。


「あ、龍雅さんの姿が見えるようになりました!」

「やっぱり互いの姿が見えないと不便だからね。よし、それじゃ王城に行こうか」


そう言って、部屋の扉を開けて一階へと降りる。早朝だししょうがないのだが、まだカウンターに人はいなかった。なので置手紙とカギを置いてアミルンを後にした。

 やっと朝日が差し込んできた。小鳥のさえずりが聞こえ、柔らかな風が吹き抜ける。正面にそびえ立つ大きな純白の城が、朝日に照らされて美しく輝いていた。


 ろうそくの光だけが辺りを照らしている城の地下牢へ続く廊下を歩く。早朝に潜入したからか、城の警備はざるだった。いや、本来なら騎士団とかが警備しているらしいので今回が異常なだけだろう。なんせすでに騎士団の団員は軍に捕えられてるのだから。


「もうすぐ地下牢に入ります。さすがにここには軍の者が警備をしていると思いますのでご注意ください」


地下牢へと入る扉の直前、ルーナは俺の方に振り返って注意を促す。その言葉にうなずき、静かに地下牢への扉に触れる。慎重に、音をたてないようにゆっくりと扉を開く。少しひんやりとした空気が扉の向こうから漂ってきた。

 足音を立てないように、そろりそろりと歩みを進める。途中、何人かの軍人が通り過ぎたが、壁側によって、息をひそめさえすれば問題はない。それにこの時間帯は夜勤と日勤が入れ替わる頃だろうし、見張りも眠気で少しばかり注意力が散漫になっているはずだ。

 地下牢は、石レンガ造りで牢には鉄格子がはめてある、牢屋と言ったらこれ、みたいな感じだった。一つの牢は大体6畳ないぐらいの、想像していた牢屋より広い。その牢屋には3~5人ぐらいの騎士鎧を着た人たちが入れられていた。助けたいところではあるのだが、今回の目的は王族の救出。無駄に大人数でぞろぞろ行くとバレてしまう可能性もあるので、スルーするしかない。

 地下牢を進んでいくと、そのうちルーナが足を止めた。


『ルーナ?どうしたんだ?』

『……彼』

『彼?』


ルーナが牢屋の中を指さす。薄暗くてよく見えないが、そこには他の人と同じような騎士鎧を着た人がいた。ただ、その鎧の作りは妙に豪華で、ただの騎士には見えないが……。


「誰かいるのか?」


ふと、その騎士が声を発する。透明になっているとはいえ、気配までは消せていないから恐らく気づかれたのだろう。声は50~60代ぐらいの渋めの声で、なんというか歴戦の戦士って感じがする。


「ガルドゼス……?ガルドゼスなのですか!?」

「その声……、姫様!?」

「ちょっ…!声が大きいって!」


ルーナが勢いよく鉄格子に飛びつき、牢屋に入っていた騎士に呼びかける。その声に反応し、騎士も顔を上げてこちらへと素早く移動してきた。見えた顔は、白髪交じりの黒髪をオールバックにかきあげていて、その左頬には大きな切り傷が刻まれていた。っていうかガルドゼスって確か騎士団の団長さんだったか?


「ど、どこにおられるのです?」


しかし、こちらに来たガルドゼスはルーナの姿を見つけることができず、辺りをきょろきょろと見渡していた。あ、≪透明化ステルス≫がかかってるから姿が見えないのか。俺らは≪透明化ステルス≫を解除して、姿を晒す。いきなり現れた俺達にガルドゼスは驚いて一歩後ろに下がったが、ルーナの姿をその目に捉えると、安堵して息を吐いた。


「ご無事で何よりです、姫様。……してその者は?」


キリッと鋭い視線が俺に向けられる。まぁ警戒するよね。


「彼は軍人に追われて殺されそうになっていた私を助けてくれた、天神 龍雅さんです。あ、龍雅が名前ですよ」

「ども」


疑いの視線を向けてくるガルドゼスにルーナが説明してくれた。その説明の後、俺が短く返事をするとガルドゼスは慌てたように頭を下げた。


「なんと。それは失礼を。姫様を救っていただき、感謝する」

「いや、お気になさらず。ただの偶然ですので」


頭を下げたガルドゼスに、俺は頭を上げるように言う。実際ただの偶然だったし。そう言った俺の言葉に応じ、ガルドゼスは頭を上げた。そしてルーナに声をかけた。


「しかし姫様。なぜまたこちらに戻られたのです?」

「龍雅さんが捕らえられてしまったお父様たちを助け出してくれるそうなのです」

「なんですと!」


ルーナのその言葉にガルドゼスは目を見開いて俺を見てきた。が、少しして先ほどと同じように視線を鋭くする。え、なんですか?


「アイルを倒すつもりか?」

「ああいや、王様たちをここから連れ出すだけですよ。さすがに俺じゃ≪将軍≫は倒せません」


この国トップクラスの実力を持つ相手につい昨日まで高校生やってた俺が敵うはずがない。……とはいえ≪将軍≫との戦闘を一切考えていないわけじゃない。秘策は用意している。これを使うことにならないといいなぁ。


「そういうことなら私も連れて行ってくれ。龍雅殿を侮るつもりはないが、一人ではうまく護衛もできんだろう」

「そういうことなら」


俺たちとガルドゼスを隔てている鉄格子に触れた。そして≪透明化ステルス≫を作った時に一緒に作った魔法を発動する。


「≪編集エディット≫」


魔法が発動した途端、鉄格子がぐにゃにと曲がり始め、やがて人ひとり通り抜けられるぐらいの大きさになった。


「これは……、すごいな」


歪んだ鉄格子を見てガルドゼスが呟く。そんなガルドゼスにもサイバーサングラスを渡し、≪透明化ステルス≫をかけてその姿を隠す。魔法をかけられた自分の体をきょろきょろと見渡して不思議そうに声を掛けた。


「これ、本当に消えているのか?」

「大丈夫です。でも気配や音までは消せてないので気を付けて行動してください」

「分かった」


俺の言葉にうなずいたガルドゼスとルーナを連れて、再び地下牢の廊下を歩く。そろそろ王様達の下につくはずだ。




「お父様!お兄様!お母様!」

「!その声、ルーナか!?」

「何!?ルーナだと!?」

「ルーナ!?」


あれから大体30分ぐらい地下牢を進んだところに王様達は居た。少しやせ細ったようには見えるが、それ以外にこれと言った以上は見られなかった。

 既に≪透明化ステルス≫を解いてあり、鉄格子越しに互いの手を握り、再会を喜んでいる。


「お前、何で戻ってきたんだ!?」


その中の一人、金髪を短く切った翡翠色の瞳を持つ青年が、ルーナに鋭い視線を向け、大きな声を叩きつけるように叫んだ。おそらく王子様だ。まぁ逃がした妹が危険の渦中に戻ってきたらこんな反応もするか。


「皆をここから連れ出せるものを連れてきたのです」

「な、何!?それは真か!?」


ルーナの言葉に驚き、今度はルーナの隣に立っていたガルドゼスに言葉を放つ王子。


「はい、こちらの龍雅殿が。私も先ほど彼に牢から出していただきました」

「ども」


先ほどガルドゼスにしたように淡白な返事を返す。すると一層と王子の目が鋭くなる。ガルドゼスと同じ反応、疑ってるのか。


「この少年が……?私より年下ではないか」

「……ちなみに今おいくつで?」

「もうすぐ20歳だが」


大体4つ年上なのか。俺は確か2週間ぐらい前に16になったはずだし。


「信じられないのも無理ありませんが、とりあえずここから出ましょうか。≪編集エディット≫」


ガルドゼスを牢屋から出したように、この牢屋の鉄格子にも≪編集エディット≫をかけて歪ませる。段々歪んでいく鉄格子に王子達は驚きを隠せていないようだった。

 そんな王子様を連れて、地下牢から脱出する。幸い、誰にも気づかれることはなかった。……というか正直あんまり人とすれ違っていない。ルーナを探しに町の方に降りているのか?いやでもここには王子様たちを捕えているんだぞ?警備はとても重要だと思うんだが……。


「「ッ……!」」


途端、俺とガルドゼスは後ろを振り向いた。魔力の流れを感じたのだ。きっとガルドゼスも同じだろう。

 ここは王城の城壁まであと数mという地点。ここまで誰にもバレずにやって来れた。何かバレるようなことをしたわけでもない。なら誰なのか。


「【純水よ応えろ、紺碧の殻、アクアシェル】!」

「≪アクアシェル≫!」


水の防御障壁を発動する。瞬間、その障壁にとてつもない衝撃が走り、ジュワァァ、と湯気を上げ始めた。蒸発してる!火属性の攻撃か!

 何とか攻撃をしのぎ切り、障壁を解除する。そこには、赤と黄金で模られたごつごつとしたガントレットを装着している、短い白髪交じりの茶髪の男が立っていた。


「ふむ、警備を置いたのになぜ逃げられたのか不思議だったが、なるほど。透明化の魔法か」

「アイルベルン!」


あれが≪将軍≫……。軍服に身を包んではいるが服の上からでもその屈強な筋肉を確認できる。その余裕に満ちた笑みは、まさに歴戦の戦士の余裕。ここまで来たら逃げ切れるかとも思ったんだがなぁ。


「ガルドゼス、国王陛下、王妃様、王子、王女は分かるとして……。一つ分からない≪魔力≫があるな。君だね?彼らをここまで連れてきたのは」


≪魔力≫を感知できるのか……?ああ、くそっ、盲点だった。≪透明化ステルス≫じゃ≪魔力≫の波動は消せないんだ。その可能性を考えておくべきだった。


「ちっ、仕方ない。皆さんは行ってください。ここは僕が食い止めます」


自分にかけてあった≪透明化ステルス≫のみを解除し、≪将軍≫の前に姿を晒す。そんな俺の肩をガルドゼスは掴んで引き留めた。


「龍雅殿、正気か!ここは私が!」

「あなたは今まで牢に囚われていたんですよ?まともな食事なんてとれてないでしょうし、体も鈍ってるのでは?」

「くっ……しかし!」


尚もまだ食い下がろうとするガルドゼス。早く行ってくれよもう!


「それにあなたは騎士団の≪団長≫。貴方がここで死んではこれからの騎士団がどうなるか分かりませんよ?」

「……………分かった」


すっごい悩んでんな。まぁ納得してくれたんならそれでいい。頷いたガルドゼスは、王様達を外へと促す。今度はルーナが抵抗したが、ガルドゼスに無理やり連れて行ってもらった。

 一つ息を吐き、俺は≪将軍≫に向き直る。この間、≪将軍≫は意外にも邪魔をしてこなかった。王様達に逃げられるのにいいのか?


「待ってくれるとは、随分と律儀なんだな?でも逃がしてよかったのか?」

「ふん、もとより彼らに価値はない。面倒ごとが起きないように捕えていたまで。逃げ出されたとて問題はないさ」


不敵に笑いそう答える。価値がないならさっさと殺してしまえばいいのに。そこまで悪人ではないのか?


「さて、それでは始めようか。君、名前は?」

「龍雅。天神 龍雅」


ガントレットをガンッ!ガンッ!と打ち鳴らし、≪将軍≫は戦闘態勢をとった。それに合わせるように、俺も腰を低くして、体に≪魔力≫を広がらせる。そして……、


「行くぞっ!」

「ッ……!」


戦闘が始まった。

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