ポーカーフェイスな君のその顔が見たかった
どうしてあの人を好きになったのだろう。
真顔なんて怖いし、足が速いけど真顔で疾走してるから殺し屋だよなとか言われる程の無表情。
怒ったことも見たことがないし、どれだけ注意を聞かない人でも穏やかに注意してるけれど無表情のせいで怖い。
人一倍努力していていい成績だけど決して人には自慢しない。周りから褒められても小さく頭を下げるだけ。
何を見ても言っても表情が変わらない。声を上げて笑ったところなんて私は見たことがない。
第一印象。
なんだこの、怖い顔は。
入学式で失礼だけどそう思ってしまった。
基本無口。話しかけられたら話す。声が低い。聞こえづらい。最初はなんて言ってるか分からなくて聞き返した。
人を呼ぶ時に名前覚えてくれてないのか名前で呼ばずに机をトントン。
いやドンドンじゃなくて良かったけど。さすがにその顔じゃ怖いから。変な奴。
──当時は好きになるとは思わなかった、絶対に。
完全に私のタイプと真逆。意味分からない奴としか認識していなかった。
いつからか覚えてないけど、ほんの好奇心で話しかけた気がする。
話す人がいなくて暇だった時、相変わらず無表情なあの人に話しかけてみた。
これだけ表情が出ない人を初めて見たし、その顔が変わる瞬間も見てみたかったからかな。
他愛のない話をしたんだけど、意外と話せる奴だった。
もっと無愛想な生半可な返事をされるのかと思っていたけれど、しっかり人の話を聞いてくれてちゃんと答えてくれて、話がスムーズに進んだ。
あの人の意外な一面を見て驚いたのを覚えている。
いつしか、話すことが楽しくなって自分からあの人に話しかけるのが多くなっていった。
気付けばあの人を目で追っていた。
そしてあの人のことを知っていって、好きになったのかな。
次第に仲良くなっていって、本当にたまにだけどあの人から話しかけてくれるのは嬉しかった。
話せた時は心の中で飛び上がった。
名前も覚えてくれたみたいで名前呼びされると更に嬉しい。
私の学校生活は、あの人のおかげで輝いた。
あの人に本当に恋したんだ。
あの人はもしかしたら断るかもという不安はあった。
今の関係が崩れてしまうのも怖い。
でも後悔するのは嫌で、ついに言うことにした。
結局、泣いちゃったけど後悔するよりはましなのかな。
それでも、君は受け止めてくれたから。
だって告白した時、君の鉄のようなポーカーフェイスが少し崩れて戸惑った顔、レアだったから。
……結局フラれちゃったけどね。
エッセイではないですよ〜!(にんまり)