99話 ボスコ砦9
99話 ボスコ砦9
森の奥からなった不快な音は徐々に私達の方に近づいてきて、ついに森の中から姿を表した。
出てきたのは銀色の毛に覆われた体長五メートルぐらいのシルバーエイプ!
口元は赤く染まり、目は紫、手元には何かの腕のような肉片を持っている。
今もそれをミチャ、、、ミチャ、、、と音を立てながら咀嚼している。
いや、シルバーエイプにしては大きすぎる。
通常は二メートルぐらいだから、倍以上ある。。。
こっちに気がつき口角を上げ、赤く染まった歯を見せニヤついている。
片足を下げ、頭を少し下げて前傾になったと思った瞬間
っドンッ!!
という音と共に急接近してきた。
「避けろ!!」
エルフさんが叫ぶ
身体強化を使って直線上から外れるように動く。
ギリギリ避けれたっ。
モンスターは私がいた所を大きく通り過ぎてから止まり、ゆっくりと首を回し体の向きを変えて、こっちを見てくる。
なんで、私なんよ!!
弱そうだから??
ズダダッ!
エルフさんがモンスター、、、あーめんどくさい[
紫眼]って呼ぶわ!
[紫眼]を狙って放った矢は避けられて地面に突き刺さった。
[紫眼]がエルフさんの方を見て、口を大きく開けながら威嚇している。
その間に仲間たちが攻勢に出る!
クマさんが右手と左手両方に大楯を持って走り出して、大楯で殴りにいく。
ファムちゃんは騎獣してハルバートを構えて[紫眼の横に回り込む
私もヴィゾーちゃんに乗って動き出す。
クマさんの体重を乗せた一撃が[紫眼]の腹にめり込む!
が、体重差がありすぎてビクともしない[紫眼]。
気にせず振り下ろした一撃がクマさんを襲う。
危なげなく空いてる方の盾でガードする。
足を止めてその場で大楯を使って殴り合いとガードを繰り返す。
隙をついてファムちゃんがすれ違い様に攻撃するけど、[紫眼]が持っている肉片のせいで間合い負けしている。
エルフの人も随所で顔を狙って矢を放っているけど、目立った戦果はない。
まぁ元々戦闘より調査特化の人だもんね。
私は?というと[紫眼]の周りを走って種を蒔いている。
クマさんが一人でタンカー兼アタッカーの役割をしてくれていて、一進一退の戦いをしている。お互い決定打を打たないまま、様子を見ながら戦っている感じだった。
私は種の発芽のタイミングを図りながら、クマさんとは逆サイドで鞭で攻撃している。
なんとか、肉片だけでも落とせたら、間合いが変わって流れが変わるかも。
何度目かの攻撃でようやく[紫眼]が持っている肉片を落とす事ができて、ここから反撃だ!
と思っていたら、空に赤い煙が登った!
緊急撤退の合図だ!
「撤退だ!離脱しろっ!!」
エルフの人が叫ぶ。
「くそ!わかってる!だけど、離れれん!!」
クマさんが叫び返す。
「大丈夫です、私が止めます!」
「本当か?!」
クマさんが驚いたように聞き返してきた。
「はい。なんとか一歩離れるタイミングを作って下さい。」
「わかった!」
そういうと受け止めていた[紫眼]の打ち下ろしの攻撃を流し受け、頭が下がった所を顎を狙って大楯を殴りつける。
[紫眼]の動きが鈍くなる。
クマさんが反転して離脱したのを確認して、蒔いていた種を成長させる。
蒔いていたのはカラマリツルとノコギリソウの交配種。
ツルが[紫眼]に絡まり付く
振り解こうとするとどんどん絡みつき、ノコギリ状の葉が食い込んでいく。
ぎゃぎゃぎゃ!
[紫眼]がイラついたように鳴き声をあげる。
足止めは成功したはず!
クマさんも警戒しながら足速に離れていく。
「よくやった!撤退するぞ!」
エルフさんの号令でみんなが森に入ろうと移動する。
グワッホ!!
魔力の高まりと共に[紫眼]の雄叫びが聞こえた。
[紫眼]の方を見ると体が燃え、、、いや、ツルが燃えていて、[紫眼]の方は問題なさそうにしている。
火魔法使った?
確かにシルバーエイプは火に強かったけど、、、
っというか、足止め失敗だよ、、、
[紫眼]がまたあのニヤついた顔でこっちを見てくる。前傾になり距離を詰めてくる体勢になる。
ヤバイ!!




