86話 アウレ連邦17
86話 アウレ連邦17
〜ルラー到着十三日目〜
今日は職人さんによる片手斧マァリッシュの新モデル発表会。
会場は鍛冶ギルドの演武した場所。
二階に観客席があって、そこにも人が入っている。
鍛冶の良し悪しは私には分からないけど、何故か審査員席に座っている。
大賞に選ばれた人は工房が贈られるうえに、師匠やギルドから独立を許されたも同じなので、中途半端な気持ちの参加者はいない。
参加資格は、工房長が独り立ちの許可を出した弟子かフリーの鍛冶師。
公平性を取る為に匿名での出品になっている。
目の前には大きなテーブルに二十丁のマァリッシュが並べられていて「どうぞ」と言われて前に出て、一つずつ見ていく。
ランダムに番号が振られている
形は私が持っていた、というかマルゴ商店で売り出しているモノを少し大きくしたり、小さくしたり意匠を凝らしているっていうより、無難に置きにきてる感じが大半。
もちろん中には刃物部分が波状になっていたり、刃が二枚になっているモノもあった。
手に持ってバランスを確かめてみるけど、正直あまりピンとこないし、そもそも鍛冶の良し悪しがわからないのよ。
使いやすさというより、自分の技術自慢的な感じが否めない。
というか、一丁もつ度に多分製作者なのかな?
ジッとこっちを見てくるから、誰が作ったのか分かってしまうよ。
ふと視線を部屋の入り口付近にやると、そこにもマァリッシュがあったから、そっちにも歩いていこうとすると、議長さんが声をかけてきた。
「ゃや、ラヴァルさん。
中央の大テーブルの方だけで大丈夫ですぞ。」
「え?!そうなんですか?
入口付近のもエントリー作品じゃないんですか?」
「いんゃーエントリーはしているけど、技術的にまだまだというか、工房主にするにはなんというか、、、ごにょごにょ。。。」
なんだかハッキリしない言い方だなぁ、後半は尻すぼみで聞き取れないし、、、
「ぁーーー、、
!!!
議長さん。ここだけの話、中央テーブルの作品はどれも素晴らしくて、素人の私からしたら甲乙付け難くて、、、私の一票で得票差ができて大賞が決まってしまっても申し訳ないので、私の一票は他の作品から見て選んでもいいんじゃないのかな?って思うんですが、ダメですか?」
「んっ?!あ?!
そんか?そんだろ!?
そん言う理由ならいいんぞ。」
よしよし。
入口付近のマァリッシュは中央と比べると、確かに持った時のバランスが悪かった、、、元々持っていたやつのバランスが相当良かったのか、私がそれに慣れてしまったのか、、、
後半になるにつれてマルゴ商店の焼き増し作品ばかりで、持つのもめんどくさくなってきて、戻ろうかな?って思ってたら、変化系があったから、一応手に取ってみた。
形は通常のマァリッシュの刃の部分を少し大きくしながら一部分くびれを作って、先っちょ部分を尖らせている。
突きがしやすそう。
試しに蹴りや薙払いからの突きなど、軽く動いて重心のバランスを見る。
うん。
いい感じ。
使いやすそう。
「気に入ったんですか?」
「わっ!トルベールさん!!
いきなり現れないでくださいよ〜。」
「はははっ。
すみません。
癖なんですよ気配を消して歩くのが。」
なんだか何処かで聞いた厨二病の人の心をくすぐるフレーズに似ている気がするんだけど、、、
「このマァリッシュ、私の演武凄い良く見てくれてるんだなぁって思って。」
「と、言いますと?」
「私リーチが短いから、よく突きをするんですよ。
なので、父さんがやる演武より多分突き多いんですよね。
だから、私の演武を見て武器の形を変えてきたんだと思います。」
「ほぉ。それは凄いですね。
ラヴァルさんに寄り添った武器ですね。
少し見せていただけますか?」
「あ、はい。
どうぞ。」
マァリッシュを手渡すとトルベールさんも重心や振り心地を確認して、刃先を目を細めて見て頷いてる。
「ありがとうございます。」
「あ。どうも。といっても、私のじゃないんで、ここに戻しておきますけどね。
目利きもできるんですか?」
「えぇ、多少は目利きができないと、マルゴ商店の外商担当を任せてもらえないので。
さて、私は少し議長さんとお話をしてきますので、ラヴァルさんはもう少し武器を見ていて下さいね。
「は〜い。」
 




