77話 アウレ連邦8
77話 アウレ連邦8
〜ルラー到着三日目〜
鍛冶ギルドは二棟になっている。
片方は解放された鍛冶施設になっていて、ギルドメンバーなら料金を払えば使えるようになっている。普段は別の街で仕事をしている人や工房の鍛冶炉が使えないお弟子さんや、引退した人が偶に使っていたりする。
鉱石をギルドで買えるから、利便性は高い。
もう一方の建物は鉱石の買取、武防具の査定、ドワーフ族長会議場など、ギルド業務に意外にも活用されている。
今私がいるのもその建物
冒険者ギルドの修練場程の大きさはないけど、それでも充分演武ができるぐらいの広さがあり、マルゴ商店のメンバーとドワーフ族の人が一名、それと対峙する形で他の鍛冶職人達がいる
「では、こんれからマルゴ商店さんの新しい武器の発表会をじます。」
少し訛りのある言葉遣いで会を仕切り出したのは、アウレ連邦議長のドワーフさん。
ちなみに四部族から各二人議員を出して、議長は五年に一度変わるんだって。
「では、マルゴ商会さんどうぞ。」
「こんにちは。わたくしマルゴ商店の外商担当のトルベールと申します。
早速武器を紹介したいと思いますが、、、
その前にこの武器の成り立ちについてお話しをした方が、武器をこよなく愛する皆様に、より一層興味を持ち、理解し、思いを込め、素晴らしい武器を製作していただけるのではないかと思います。
どうか、わたくしの話にしばしお付き合い下さい。」
物語りを語りだした。
「人に与えられた知恵・魔法・武器により、魔物からの脅威が薄れ、人の営みが豊かになった。
人とは愚かなもので、大きくなり豊かになった国々は次第に覇権を争うようになり、威信をかけ戦いだした。
後に五国間戦争と呼ばれたその戦いは、英雄を育て物語を産んだ。
それに民は多くの希望を抱き、熱中し、多くの戦士を産み出した。
しかし、百年続いた戦いは互いに多くの血を流し、互いに多くの英雄を失った。
民は父を失い、子を失い、光を失った。
国の力は弱まり、次第に増える魔物の脅威。
やがて増えた魔物のより一つ、二つと国が消えていった。
残った国々は手を取り魔物に対抗すべく抗った。
獣人族・巨人族の[力]
エルフ族・妖精族の[魔力]
精霊族・ドワーフ族の[知恵と技術]
魔物との戦いで多くの友情が芽生え、多くの伝説が産まれた。
巨人族の英雄ギース。
類稀なる身体能力と巨人族の巨体を生かして戦う姿は正に戦神。
しかし、あまりにもの怪力、あまりにもの速さ、あまりにも多い技の数、強すぎるが為に耐えれる武器がなかった。
ドワーフ族にとって、戦神への奉武は誉れ。
多くの武器がギースに与えられ、使われ、崩れ去った。
やがて、人々は魔物を退け安寧を手に入れた。
晩年ギースが愛用していた武器は戦槍バルディッシュの柄を短くした、片手斧マァリッシュ。
格闘術と共に使い、攻めの手を緩めない武器。
天才が愛した武術故使い手が限られ、次第に伝承も失われていった。
しかし、その武器はドワーフ族の叡智が宿った完璧ともいえる機能美、その中に宿る無駄のないフォルムとそこに共存するデザイン性。
今一度現代の名工達の手で、途絶えられたマァリッシュに、現代の叡智と技術を加えて、後世に伝えるべく武器にして頂きたい。」
話し終えると、トルベールさんが自分の横にあった布を外した。




