7話 お買い物4
7話 お買い物4
大通りの商店群を抜けた先には、アトリエ兼鍛冶工房地区があって、街並みは商店群と比べやや小さめの間口になるけど、統一感は先程の場所から続いていて、色彩的には大店とこの地域に分け隔てはない。
この辺りは大手から独立した、個人の職人さんやそのお弟子さん達が店を開いてるんだって。
大手は、常に商品はあるし品質も一定で粗悪品がないけど、掘り出し物のような商品と出会う事がない。
個人店は、品質は店によって差が激しいし、店によって職人の得意なモノが違うから、慣れないと色んな店にいかないといけない。そのかわり職人との距離が近い。
大手でオーダーする場合、個人的な繋がりがない限り職人は選べない。個人店は職人を指名できる。そして、職人のこだわりも詰まったいい意味で癖のある一品に出会える事もある。
また原種人がやっている店もあるから、原種人はオーダーする場合、大手より個人店を選ぶ事が多い。
そんな地区の裏通りを更に奥に、一番奥ばった所にマルゴ商店の工房兼アトリエがある。
店の近くには治水された川が流れていて、奥ばった所だけど、大通り並とはまで言わないけど、衛生面が悪いという事はない。
また随所に街灯があって、夜も明るいから、治安もそれ程悪くはない。
まぁ、この辺は冒険者の出入りが多いから、常に人の目があって、悪事を働きにくい。仮に悪事を働いても、付近の冒険者が解決する。
冒険者にとって、この地域は大切な場所だから、皆んなで守るという意識があるらしい。
なんで大手のマルゴ商店の工房が表の方でなく、奥まった所にあるかというと、マルゴ商店から独立した職人や、他の地域から来た職人に譲っている。
父さんが言うには、「色んな人が儲かる事で、国が豊かになる。マルゴだけで一人勝ちはダメなんだ。」らしい。
マルゴ商店の工房は鍛冶と魔道具に分かれている。
っと言っても隣り合わせになっているから、扉が違うぐらいの感覚だね。
カランカラン
マルゴ商店の魔道具工房の扉を開けると、机が四つあり、全て向かい合わせに椅子が置かれていた。そして奥には胸の高さまであるカウンターがあり、そこには高めの椅子がおいてあった。
家具はシンプルで使い込まれているけど、手入れはしっかりされていて、艶のある風合いになっている。
店内には二名お客さんがいて、それぞれ机で職人さんと話をしていた。
カウベルの音に反応して、店の奥から職人さんが出てきた。
出てきたのは細身で小柄な坊主頭の希薄人。五十代ぐらいかな?父の同僚である。
「いらっしゃい。今日はどうしたんだぁ?オーダーか?受け取りか?」
かなりフランクな接客してくるけど、若い客に対して舐めた態度をとっているのではなく、どうしても冒険者相手でオーダーを取る事になると丁寧な口調より、フランクに話している方が、冒険者側も要望を言いやすくなる。
なので、職人とはそういう感じで話すようになる。偶にどこかの国の貴族がオーダーをしに来て、言葉遣いに対して怒る事があるみたいだけど、それで職人さんが罰っせられる事はない。職人ギルドは世界各地にあり、彼らを敵に回すと魔道具や武器を融通してもらえなくなるからだ。
もちろん、だからと言って職人が横柄な態度を取る事はない。依頼者があっての仕事だと分かっているから。
「こんにちはっ!こちらに、モンモランシ・ラヴァルさんが居るとお伺いしたのですが、現在お手隙でしょうかっ?!」
「おぅ?!モンモか!いるぞ。呼んで来てやるから、そこのカウンターで待ってな!メティスちゃんもカウンターで座ってな。」
「メティスちゃん?って君の名前かっ?知り合いなのか?」
「この状況で私以外の選択肢ってある?知り合いというか、父さんの同僚だよ。」
「えっ?!あ、そうなのかっ!?いや、ちょっと待って、色々とk、、、」
「ほら、早く座るよ。ちなみに、君が探してる人、私の父さんだよ。」
「ええええっ!!!早く言ってくれよっ!」
「だって聞いてないもん。それに、マルゴ商店の工房の職人さんって何人もいるんだよ。名前を知ってる職人さんなんて、ほぼいないから、聞いた所で分からない方が大半だよ。」
「そうだとしてもっ!」
「けど、よかったね、父さんが君の母親と知り合いで。父さんここの工房長だよ。お探しの凄腕の錬金術師だよ。」
「大物じゃないかっ!助かるけど、なんというか、展開早くないかっ?」
コツコツコツ
話している間に工房の奥の方から人が現れて、カウンターの前に立って話しかけてきた。
「やぁメティス。お友達を連れてきたのかい?」
「あ!父さん。なんか、この人が父さんを探していたみたい。」
「そうなんだね。初めまして、モンモランシ・ラヴァルだ。今日は私に何の用だい?錬金術の依頼かい?残念ながらマルゴ商店は職人は指名できないよ。」
「あっ!はいっ!はじめましてっ!ネアカ・ノーキンと言いますっ!依頼ではなく、母がラヴァルさんと知り合いだそうで、王都に行った際は挨拶をするようにと言われましたっ!」
かしこまって立ち上がりながら喋り出す根明赤髪くん
、、、というか、名前が根明脳筋って、、、そのままだよ。
「ほぅ。私と知り合い、、、ノーキン君、母親から何か預かってないかい?」
「あ、はいっ!手紙を、、、どうぞっ!」
「うん。今ここで読んでも?」
「はいっ!」
渡された手紙を父さんが読み出す
読み進める間に頬を弛ませて、優しい表情になる
「うんうん。懐かしいなっ。昔君の母親とは何度か一緒に冒険した事があってな。
今は引退してギルドマスターをしているんだな。
ノーキン君は王都の学校に行くのかい?」
「そうなんですねっ!はい、第二職業は騎士です。寮に部屋を借りてます。」
「なるほど。騎士なのか。今夜は予定あるのかい?」
「今夜ですかっ?いや、特にないですっ!」
「そうか、では今夜我が家でご飯でもどうだい?」
「えっ!いいんですかっ!ありがたいですっ!」
「よし、じゃあ寮に連絡して来なさいっ。メティスはノーキン君を家に連れて行って上げなさい。父さんも今日は早めに帰るから。母さんには私から伝えておこう。」
「はーい。」




