43話 野営訓練10
43話 野営訓練10
野営訓練四日目
今日は朝から移動して初日にいた森を目指す。
そこで一泊してから明日の昼に森を出て、王都に戻る予定になっている。
移動しながら、みんなの昨日までの狩の結果を聞いていると、
アルマジロドラゴンを十人グループで合計三十匹倒したり、
ワイルドスコーピオンを魔法を使って一人で二十匹倒したり、
ゴーレム相手に戦ったけど負けてしまった人達もいた。
みんな色々やってるんだなぁ。
森の狩については、ゴブリンやホーンラビットをはじめ、モンスター系は何も見つからなかったみたいで、私とファムちゃんが狩ったユークが唯一らしい。
今日の森でも諦めずモンスターを探す人もいれば、薬草採取に切り換える人もいた。
モンスター組の人にパーティーを誘われたけど、取りたい薬草があったから、お断りした。ごめんね。
ちなみにファムちゃんはモンスター組に行くんだって。ネアカ君も別行動だから、今回初めての単独行動になったよ。
それにしても、モンスターが全然見つからないのは、ちょっと意外だよね。
人の気配があるとはいえ、ゴブリンとかは好戦的だから、見つけやすいとは思うんだけどなぁ。
ユークやフォレストウルフは慎重だから、逃げるか隠れると思うけど。。。
森に着いた後、本当はテントを立ててから探索に行くようにと言われたんだけど、暗くなるとちょっとどころではないぐらい危ないから、すぐ森の中に入った。
拠点を出て、前回ユークを狩ったのとは違う方へ向かって、目指すのは一際大きな崖
採取したいのはそこに生えているアールギーという薬草で、体力を一時的に増加させる体力ブースターや、体力を回復させる体力ポーションの材料になっていて、長距離移動する人や体力が落ちた病人とかに人気らしい。
冒険者でも使う人はいるけど、普段の食事や睡眠の方が体力作りや回復効果が高いから、王都では野営の時の携帯食糧の味の向上もあって、持ち歩く人は少なくなったらしい。
それでも、何故か断崖絶壁にしか生えなくて、平地で種から栽培しても育たないのと、採取してから三日以内にポーションにしないと効果がなくなる事から、冒険者が取りに行く事が少なくなった王都だと高値で取引されている。
目の前には頂上まで四十メートルぐらいかな?ある崖があって、その途中にアールギーが生えている。凸凹とした崖で手や足をかける場所があるから、熟練者なら登っていけるかもしれないけど、私には四十メートルを登り切る能力も根性もない。。。
絶対無理。
だから、ちょっと私なりのやり方でやってみるよ。
「よし、じゃあ登ろうかな。アイビー(吸盤つる)を強化して崖に這わせて、、、
あれ?これって、成長させながら私の体もアイビーに固定したら自動的にスイーっと登れるんじゃないかな?」
と思ってやってみたら、全然だめだった。
根本からぐいぐい伸びるんじゃなくて、先っぽから伸びていく、、、伸びていくアイビー、それを地面から見上げる私、、、なんだろう、このちょっとした恥ずかしさ。一人でよかったよ。
ある程度成長させて気がついたんだけど、つるが邪魔してアールギーが見えない、、、一応何株か目視できたから、そこは覚えてるから取れるけど、それ以外がさっぱりわからないよ。
崖の足場とアイビーのつるを補助に使って、崖を登りながら、アールギーを採取していく。
アイビーがあるから安定しているけど、これって風が吹いたり、ワイバーンがいたり、なんだったら崖上から攻撃されたら、かなり危ないよね、、、そりゃ誰も取りにこなくなるよ。
こんな事考えてたらフラグみたいになっちゃうから、さっさと登り切ろ。
風も吹かない、ワイバーンもこない、崖上からも何もないナニモナイ。
言えば言う程フラグ感が、、、
コッチダヨ
ほら、フラグきたよー
コッチダヨ ハヤク
ん??
ワイバーンはこんな鳴き声しないよね。
風の音にしたら、凄い偶然言葉に聞こえるよね、、、いや、ないない。
すぐ側から聞こえるけど何もいない。
というか、コッチてどっちよ。
ウエダヨ
上か。そうかそうか、、、
え?!
今私声出してないよね?!
、、、
登り切る予定だったし、悪意は感じないからひとまず警戒はしながら登ってみよかな。
四十メートルの崖を登り切り、頭をひょこっと出して崖上を警戒する。
崖上は少し開けていて、少し奥には森が続いている。森の方はよく分からないけど、目の前に危険性はない、、、かな?
「大丈夫、そうだよね。」
というか、登り切りたいんだよね。
「よいしょ。。。さっきの声はなんだったんだろ??」
森の方に歩いていくと
コッチダヨ
また声が聞こえた。
そして、目の前には蝶らしきものが飛んでいる
「蝶々?」
らしきものって言うには理由があって、蝶の形はしているけど実体はなくて、蝶の形をしている光の集まりだった。
森の中に誘導するように飛んでいく。
テッポウウリとマァリッシュを準備して、警戒して森の中に入って、誘導されるように付いていく。
森の中は人はもちろん、動物やモンスターも寄り付かないのかな?茂っている。
ただ、不思議と蝶が案内する道だけ、植物たちが避けたように動いて、通った後はまた閉じて行く。
何かの意思がそこに働いているのは確実。
ただ、そこには悪意は感じ取れなくて、何かを大切に護る気配があった。
辿り着いたのは大きな樹がある所だった。




