4話 お買い物1
4話 お買い物1
「お待たせ」
「やぁやぁやぁ、早速行こうか!」
「うん。で、どこに行きたいの?」
「マルゴ商店は分かるかっ?」
「マルゴ?うん。そりゃぁもちろん。世界各地にある商店じゃない。それなら大通りにあるよ。」
「いやいやいや、そこにも後で行きたいんだが、行きたいのはマルゴ商店の工房なんだっ。住所は貰ったんだけど、見てもらえるかっ?」
「工房ね。場所は分かるよ。ここからなら、お店に行ってから工房の方が動きやすいよ。その順番でもいい?」
「おおおお!流石地元っ子っ!順番はそれでもいい、任せたっ!」
「じゃ、行こっか。
あ!そうだ!さっきも聞いたけど、今日はどんなクエストを受けたの?」
「あーそうだったっ!聞いてたなっ!ごめんっ!すっかり無視する形になってたなっ!今日はゴブリン討伐と薬草採取だっ!」
「凄いね。ゴブリンって複数でいたりするから、ソロだと厳しいって聞くんだけど、大丈夫だったの?」
「小さい頃から両親に武術を習っていたから、特に対人技術は得意な方でさっ!ゴブリンって二足歩行だし、関節や作りも人とほぼ同じだから、その技術がそのまま活きるのさっ!」
「そうなんだ。殺すのに躊躇はないの?」
「ないなっ!だって向こうも殺す気で来てるんだろっ?!躊躇して自分が死んでしまったら、どうしょうもないっ!ただ、慣れはしないし、ドキドキはあるさっ!」
「そんなもんなんだ!なんだか、同じ歳なのにベテランだね!経験の差を感じるよ。」
「ハッハッハッ!先輩と呼んでもいいんだぞっ!」
「いや、遠慮しとくよ」
「けどさっ!俺は魔力量が少ないから、魔法がなぁ、、、水晶玉も光らなかったしっ。」
「ぁーそれは残念。けど、逆に武術と騎士の職業に集中できる!っと考えるといいよ。」
「そうだなっ!そうするよっ!君は水晶玉は光ったかっ?」
「うん。光ったよ。けど、あれってなんなの?」
「え!え!いいなぁっ!
ってあれ?説明受けてないのかっ?」
「うん?ギルド規則の説明なら受けたよ。」
「いやいや、そうじゃなくて、水晶玉が光った理由だっ!」
「んーーー、、、光りますよって言われて、水晶玉触ったら光ったよ。説明ってあったっけ?」
「んんん?!なんで光るって言われたんだっ?」
「そーそれ!最初はみんな光るもんだと思ったけと、よく考えると他の人は光ってなかったなぁって考えてたら、なんか部屋に移動になったよ。」
「ぅーん、、、まぁいいかっ!水晶玉が光るのは、魔法の中で適正をもった属性があるって事さっ!適正があると同じ魔法でも、魔力の消費量が少なく威力や効果が高くなるんだっ!」
「そうなんだ!なんで言ってくれなかったんだろう?!」
「気になるなら後でギルドに行くかいっ?受付で確認できるからっ。」
「うーん。まぁまた今度行く時でいいかな。詳しいね。」
「母親が地元の冒険者ギルドのギルドマスターだからなっ。」
「えー!凄いね!!どうりで詳しいんだ。」
〜〜〜〜〜
大通りに面してる店は、街並みを統一する為に使用できる壁面の素材や色を制限している。
その中でどう個性を出すのかというと、扉の上の看板になる。
目の前にある建物の扉の上には「⑤」とだけ書かれている。ここが目的のマルゴ商店の販売店舗。
一階がポーション等の消耗品
二階が武器
三階が防具
四階が魔道具
五階以上はオーダー品の受け渡しやVIPルーム
マルゴ商店に着いてからは別行動になった。
根赤赤髪君は消耗品を買ってから、武器を見たいらしい。(そういえば、名前聞いてないな。)
今は二階の鞭エリアに来ている。
といっても鞭エリアは狭い。
鞭は武器はある程度使えるようになるまで、修練が必要だし、相当上級者にならないとパーティで戦う時、どうしても味方にあたっちゃうから、活躍の幅が狭い。
だけど、攻撃速度が非常に速くて、皮膚を切り裂き、肉を歪ませ、骨を断つ事もできるのから、実はかなり強いんじゃないかと思っているの。
けど、狭い場所では扱えないから、ダンジョンの通路だと、完全に詰む。
そして、ダンジョンはお宝が出てきたり、魔物が多く出現して収入が多くなるから、王都の冒険者の多くはダンジョンに籠りたがる。
うん。人気がないのがわかるよ。
だから、世界に数多く出店しているマルゴ商店の王都店であっても、置いてある種類が少ない。
「いらっしゃいませ。鞭をお探しですか?」
声をかけて来たのは、黒髪ロングのパッツン前髪、スタイルは細身で背の高い、美人系の20代後半?ぐらいの希薄人?のお姉さん。
マルゴ商店の制服を着ているけど、なんとも言えない大人な雰囲気を醸し出している。
サキュバスかな?と思ったけど、羽根がないから違うのかな?
「はい。戦闘職になったので、武器を探してまして、一本鞭を考えてたんだけど、どう選んでいいのかわからなくて。そもそも、鞭でいいのかどうか。」
「ふふふっ。では、武器そのものから選んでいきましょうか。」
「はい。宜しくお願いします。」
「いいわ、任せてね。私マルゴ商店武器マイスターのリリン・ライラーです。」
ただお辞儀をして挨拶をしてくれただけだけど、一枚の絵みたいに凄い綺麗に見えた。
「鞭は初めてですか?その他武芸の嗜みや、差し支えなければ職業と魔力適正の有無をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「鞭は初めてです。武芸は両親から剣と弓をお遊び程度に。職業は第一が学者で第二が騎士です。魔力適正は有るみたいですが、何かわからなくて。
すみません。」
「ふふふっ。緊張しなくていいのよ。
学者なのに剣と弓、、、ご両親は優しいわね。その二つならどちらがお得意ですか?」
口元に軽くまげた指をあてがって、優しく笑いかけながら話してくる
ぅぅぅ、なんか妖艶だよ。気を抜くとほいほい買わされそうだよ。
「どちらかと言うと弓ですけど、弓は矢の補給の問題で候補から外してます。どうしてウチの両親が優しいと?」
「第一が学者になる程勉強しているのに、武芸を嗜ませてるからですわ。
剣はどの近距離武器にも通じる、基本の動きがあるので、応用が効きやすいのです。
本来体捌きだけなら、武道家が一番いいのですが、手の握りがエモノをもつスタイルから遠のくので、第二がエモノを持つ戦闘職の場合苦労してしまいます。剣士や槍使い等ですね。
弓は武芸の中で最も難しい技術の一つです。風を読み・矢の軌道を読み・相手の動きを読み、その上で遠距離から当てる。例え職業適正があったとしても、とても短期間で会得できるものではありません。
なので、その二つを学ばせていたご両親はきっと貴方がやりたい事を応援していたのでしょうね。ご両親は冒険者で?」
「そうなんだ!!知らなかったよ。
はい、今は活動をしていないですが、元々は冒険者だったそうです。」
「やはりそうでしたか。では、次に私と少し遊びましょう。」
「え?!」
「ふふふっ。倒れても大丈夫なように結界を張りますね。」
といいながら、指を鳴らして結界を張り、優しい光のドームが周りに広がった。
「じゃぁ手押し相撲をしましょう」
肩幅に足を広げ、手を触れ合う寸前の所までもっていき、開始。
開始と同時に勢いよく手だけで押すが、いなされる。
続けて同じように二連続でやるも、いなされる。
手を戻してきたタイミングでそのままお姉さんが、手の付け根付近をそっと押してくる。
体制が崩れかけるが立ち直す。
フェイントを三度掛けて四度目で押そうとするが、いくら押しても動かない。
右手の方を強めたり、左手の方でポイントをズラしたりするが、全て対応される。
むしろ時間が経つにつれ、相手が力の強弱をつけたり、押すポイントをズラしてきて、その対応に追われていく。
結局三回やり、全部負けた。
「うぅぅ。悔しいよ。お姉さん強すぎじゃない?いいようにやられちゃったよ。」
「ふふふっ。ありがとうございます。けど、これでだいぶ分かりましたわ。お客様は右手の方が筋力があり、左手の方が若干器用で手首も強いですね。普通はどちらかの方に偏ってるのですが、バラバラは珍しいです。利き足は右で踏切足は左です。」
「そうなんですか?自分ではわからないよ。それでオススメ武器はわかりましたか?」
「いえ、まだですわ。慌てないの。もう少しお付き合い下さい。将来冒険者になる予定でしょうか?」
「はい。そのつもりです。主に古代遺跡を中心に回って、自分が気になる場所に行く予定です。一緒に回る人がいればいいけど、多分ソロになると思います。」
「そぅ。古代遺跡に行くのね、、、面白い発見があるといいわね。」
一瞬何か思うような表情をしたけど、すぐにいつもの表情になって、最後は笑顔で応援してくれた
「では、魔力適正はあるが、属性は分からない。という事ですね?では、検査をするので、こちらへどうぞ。」
「え?!あ、はい。」
部屋の隅に行くと、ギルドで見た水晶玉があった。
手で触れると、先程と同じように淡く緑色の光を発して収まっていった。
「、、、珍しい。属性は樹ですね。」
「珍しいんですか?」
「はい。樹はエルフのごく一部かドリュアスの系譜を引継いでないと、なかなかでない属性です。特に外に出て動けるドリュアスとなると、かなり長い年月を生き、外の世界に興味を持たないといけない上に、周りの協力も不可欠になります。
あまり樹から離れると消えてしまうので。」
「へぇ。。。じゃぁかなり、、、珍しい?ヤバいやつ?」
「ふふふっ。大丈夫よ。ドリュアスは気まぐれに人を取り込み、生まれ変わらせます。正確には人を治療して、治した所に自分の遺伝子を組み込ませます。それが薄いですがドリュアスの系譜になり、偶に魔力適正が樹になる人が出てきます。なので、珍しいですが、全くいない訳ではないです。」
「そうなんだ!よかったよ。樹だと珍しいから捕まって、売られたり実験されたり、逆に保護されて、一生監視されるのかと思っちゃったよ。」
「ふふふっ。面白い子ね。じゃあ武器選びに戻りましょうか。」




