140話 幻獣の遺跡22 アフターエピソード
140話 幻獣の遺跡22 アフターエピソード
カランカラン
カウベルが鳴り、男が一人入ってきた。
どうぞと促すと慣れた足取りで、カウンターの席に座った。
何も言わずにドライフルーツとカリフォルニアレモネードを出した。
男は闇に紛れるように深い黒色のマントを被り、うっすらと見える唇からカクテルを一口含み、口を開いた。
「今年も無事に終わったな。」
「過去を忘れずに、現在の汚れを清算する。
毎年の事だが大切な日だからな。」
「あの森が平穏でいれるのも、この霧の街があるから、、、いや、幻獣様のおかげだからな。」
幻獣「ふっ、よせよせ。全部君の、、、モ、、、
おっと、その格好の時はマルゴ様だったかな?」
「どっちでも。」
幻獣「じゃぁマルゴ様にするか。君のお陰じゃないか。
霧で街の人の邪気を払い、集めた魔力で幻獣の遺跡の幻影結界を強化する。
それを可能にした魔法陣、、、
感謝してもしきれませんよ。」
マルゴ「どういたしましてだな。
報酬は十分に頂いてるから気にしなくていいですよ。」
幻獣「そうそう、今年は少し危なかった!
壁画じゃなく、地上絵に気付いた者がいましてね。三つ見つけていたみたいだった。
この時期になると地上絵が浮かび上がるから、それを偶々見つけたんでしょうね。」
マルゴ「ほぅ。勘がいい者がいるもんだな!それで?」
幻獣「儀式が終わると地上絵が再び消えるだろ?そのタイミングで言われたから、なんとか誤魔化せたが、、、危なかった。」
マルゴ「まぁ、四つめに気付かなかったら、いいんじゃないかい?空にあるから気付かないだろうしな。」
幻獣「まぁあの者なら四つめを見つけて、結界の向こう側にいっても動物達を傷付ける事もないでしょうけどね。」
マルゴ「そうか、、、
そういえば、あいつらは元気か?」
男が話題を変えると再びカウベルが鳴り、人が入ってきた。
銀狐「お呼びかしら?マルゴ様」
マルゴ「おお久しいな!」
大蛇「どうも。」
マルゴ「おお!また大きくなったな。」
大蛇「我の種族は成長が止まらぬからな。これでも大きさを押し留めているのだが。」
マルゴ「いや、わかるぞ!その身の密度やいなや。」
大蛇が少し嬉しそうに身体を揺らしながら、人の形になり椅子に座ると、幻獣様からドリンクを出してもらった。
幻獣「で、ちょっと血生臭いがどうしたんですか?」
銀狐「あ!そうそう。ギルドで紹介した娘がいたでしょ?あの娘が連れていた変異種のヴェデル、密猟団に狙われていたみたいだから、気に留めていたんだけど、祭りの翌日にやっぱり来てさ、、、」
幻獣「そうですか。
密猟団は街で泊まらないので、邪気が払えないので助かります。
それで、、、」
銀狐「大丈夫。ちゃんと痕跡は消したよ。
あと、アドバイスもね。
凄い良い仔だったよ。主人と似てるよね。」
幻獣様はそれを聞くと何も言わずに頷いて、少し安心した顔を見せた。
その夜カスミの雫を訪れようとした人々は、何度も通い慣れた道を歩こうが、
まるで幻影を見せられているのかの如く、カスミの雫を認識できず通りすぎ、遂には訪れる事ができなかった。




