137話 幻獣の遺跡 従魔達の戦い1
137話 幻獣の遺跡19 従魔達の戦い1
幻獣祭の後夜祭
その日は霧の街フォギから人々の気配が消える日だ。
後夜祭に参加して街から出て行く者達。
冒険者ギルドから派遣されて、住民を守る冒険者達も街を出て行く。
もちろん後夜祭に参加しない人も多くいるが、大体は昨日遊び・酔い疲れて倒れている。
そんな状態だから、商店なども休業にしてのんびり過ごしている。
そんなフォギの街に全身を揃いのアースカラーの服でくるみ、人目を盗むように動いている集団がいる。
「おい、あそこの宿だ。気を引き締めろ。」
集団の中で一番小柄な男が小声で仲間達につたえる。
「へっへっへっあそこにあの珍しいヴェデルがいるんだな!?ありゃ高値で売れるぞ!」
縄を片手に大柄の男がニヤつきながら宿を見つめる。
「他にも従魔がいるから、まとめて掻っ攫おうぜ!」
小柄な男がそれに続く。
「もちろんだ。
ただ、最優先はヴェデルだ!いいな。
いいか、まずはだな、、、、」
リーダー格の男が場を仕切り出した。
〜〜〜
ヴィゾーちゃんがむくりと立ち上がり、自分の方に近づいてくる悪意に警戒をしだした。
その近くでフワッと光の球が点滅している。
スプちゃん『ねぇ、気づいてる?』
ヴィゾーちゃん『もちろん。あいつら俺の事をジロジロ見てきたやつだよね!』
スプちゃん『うん。多分ね。二日前からこの辺をウロチョロしてたからね。』
ヴィゾーちゃん『来たら倒すしかないかな?でも勝手に戦ったらお姉ちゃんが怒られないかな?』
スプちゃん『どうだろ?けど、大人しくする必要もなくない?』
ヴィゾーちゃん『んー、、、、』
スプちゃん『だってアイツらモンスター捕まえてたよ!絶対悪い奴らだよ!』
ヴィゾーちゃん『じゃぁやっつけるにしても、この宿の人に目撃してもらうのは?』
スプちゃん『それがいいかも!』
『無駄だぜ』
二つ奥の部屋から声がしてそっちの方を向くと、のそりと影が動き、胴体がお姉ちゃんの体ぐらいある黒い蛇のモンスターが舌をチロチロさせてきた。
ヴィゾーちゃん『どうして無駄なの?』
蛇『昨日祭りがあっただろ?あんなんがあった次の日は大体どこいっても人間は休んでるもんだぜ。起こしても起きてきやしない。』
ヴィゾー『えーどうしよ?』
『なーに、バレなかったらいいんでしょ?』
蛇さんの更に奥から声がしてそっちを見ていたら、急に逆側から声がした。
『なんとかしてあげるから、坊やは好きにやっちゃいなさい。』
そこにいたのは、銀色の毛並みで尻尾が三本に分かれている狐型のモンスターだった。
ヴィゾーちゃん『信じていいの?』
狐『任せておきなさい。蛇のおにーさんも手伝ってくれるしね。』
蛇『コラっ!お前!勝手に決めるな!
っと言う流れだが、意外と素直に俺も戦うつもりだから、まぁ気にせずやってしまえ。』
狐『あら。血の気が多いのね。』
蛇『お前ほどでもないと思うがな。』
狐『ふ〜ん、、、
そこのスプライトちゃん。
サポートよろしくね。』
スプちゃん『は〜い。』
〜〜〜
「確かこの建物の裏手の方にいるはずだ。」
小柄な男が記憶を辿るように呟きながら移動し、それに続くように影が続いていく。
厩舎の一つ一つを覗き込みながら奥へと進んでいく。
空っぽの部屋もあれば、とぐろを巻いているモンスターや毛玉みたいになっている狐?もいて、みんな大人しくしている。
目当てのヴェデルは厩舎の一番奥にいた。
「あれ?こんな奥だったっけ?」
小柄な男が首を傾げながら呟く
「は?いいじゃねぇかそんな事。場所なんてお前の記憶違いかもしれねぇだろ?
それよりお前、袋でそいつの頭被せろよな!その間に俺が縄で縛ってやる。」
そう言いながら大柄の男がヴィゾーちゃんの部屋の前に来た。
小柄な男が麻袋を構え、ヴィゾーちゃんの頭に被せようと飛びかかると、ズドンと音を立てて盛大にコケた。
「イツツツツ」
強く打ち付けた肘を摩りながら顔を上げて周りを見渡すと、そこにいるはずのヴェデルの姿はなく、何もない厩舎でポツンと座っていた。
「おい!どういう事だ!ヴェデルはどこに消えた?!」大柄の男が大声をあげながら周りを見渡す。
少し離れた所にいたリーダー格の男は、姿勢を少し落とし周りの気配を探りながら警戒しだした。
「わからねぇ。確かにいたよな?!」
小柄な男が立ち上がり大男の方に振り返ると、そこには誰もいなかった。
いや、そもそも周りの様子がおかしい!
いつの間にか辺りは暗くなっている!!!
いや、違うな。
夜になったわけじゃなく、真っ暗な空間にいるみたいで、目を開いているのに何も見えない。
匂いもしない。
音もしない。
俺はどうなったんだ?!
すると体を何かで拘束され動けなくなっていった。
「やめろ!誰だこんな事をするのわ?!」
騒ぐがどうにも声が出ない。
体を暴れさせるが強い力で押さえつけられ、腕や足が拘束されていく。
「ちくしょう!いてぇな!
やめろやめろ!このーーーー!!!!」
大男の前からヴェデルが消えたと思ったら、それは勘違いで目の前にコッチを向いているヴェデルがいた。思っていたより小柄だし、色も少し燻んでいるが、まぁそんなのどうでもいい!
捕まえるか。
大男は手慣れた感じでまずは、翼をしめつけ縄で締め付け、続いて足を絡めて縛った。
やたら暴れるし騒ぐヴェデルだったが、まぁ何となったかな。
やがて身動きができなくなったヴェデルを担ぎ宿を出ようと歩きだすと、厩舎の入口付近にもう一頭ヴェデルがいた。
今捕まえたやつより大きめだ。
「ッチ。こっちにちゃんとデケェのがいるじゃねぇか。あいつ間違えやがって。」
担いでいたヴェデルをドサッと乱暴に下ろして、大きいヴェデルの方に近づいて行く。
 




