幻獣の遺跡5
123話 幻獣の遺跡5
「私に何か聞きたい事があるという風に聞いてますが、どうかされましたか?」
優しい表情で話しかけてくるマスターだけど、どこか少し警戒をしている雰囲気がある!
のは気のせいかな?
「このフォギに伝わる伝承や昔話を教えてほしいのと、明日遺跡に行くのでそこでのマナーとか遺跡を見るポイントを教えて欲しです。」
「そういう事ですか。
伝承や昔話については、今話してしまうより、明日の夜に広場で人形劇があるので、少し待てるならそれを見るのが理解しやすいし楽しいと思いますが、どうでしょうか?」
「明日の夜ですか?」
「はい、幻獣祭が始まる数日前から何回か開催されていて、今日は子供向けにアレンジしていて、明日は大人向けになっています。
それを観た後で気になる所があればお話ししましょうか?」
「そう、、、ですね。そうします!」
「マナーに関しては、幻獣の遺跡付近の野生動物の殺害・捕獲・保護は禁止されています。」
「怪我をしている動物がいた場合はどうしたらいいの?」
「怪我をしていたとしても保護できるのは、国が認めた人のみです。」
「えぇ!!見過ごさないとダメなんですかー?」
「そうですね。
それがルールです。」
「ポーションをかけるのもダメですか?」
「あまり宜しくないですね。
例えばその怪我をしている理由が、モンスターや他の動物から襲われたとしましょう。つまり、狩られる側だった場合、それを回復させてしまうと、狩をしていた側からすると、獲物を奪われ食事ができなくなってしまいます。
そうなると、怪我をした方を助けたのはいいけど、狩をしていた側の邪魔をしたという事になってしまいます。
なるべく自然にいくのがいいんです。」
「う〜、、、」
「まぁお気持はわかりますが。」
「モンスターはどうですか?」
「モンスターに関しては遺跡での戦闘は禁止されています。
というより、不思議と幻獣の遺跡でモンスターに遭遇したという話は聞かないですね。」
「そうなんですか?」
「はい。不思議ですね〜。もし、出てきたら遺跡の外に移動して、そこで戦闘して下さい。」
「結構無茶がありますね。」
「まぁその為に有志達で見回り隊を結成して、モンスターを定期的に追い払ってるんです。
あとですね、見てほしいポイントは壁画ですね。壁画は街のあちこちに描かれていて、それを自分なりに解釈して見るのも面白いかもしれませんね。答え合わせは明日の夜の人形劇でできますしね。
遺跡の観光パンフレットを差し上げますので、それを参考に見て回って下さい。」
っと言いながらどこからともなくパンフレットを出して、私の前にスッと置いた。
「あ、ありがとうございます。」
渡されたパンフレットは三つ折りになっていて、表面には 〜ようこそ、幻獣の遺跡へ〜 と書かれていた。
「さて、他には何かありますか?」
「んー、、、あ!幻獣祭の後夜祭の儀式ですけど、何か用意しておいた方がいいものとかありますか?」
「後夜祭のお面の話は知っていますか?」
「儀式に参加するなら、高いお面を買わないとダメってやつですか?」
「ハッハッハッ、そうそう。高いお面です。
アレはねチャリティーなんですよ。
先程お伝えしたモンスターを追い払うのに有志達だけでは負担が大きいので、冒険者に依頼する事もあるんです。それにお祭りの時の警備役もね。
それを賄うお金に充ててるんですよ。」
「そうなんですね!知らなかったや。」
「ちなみに他のお面は
・子供用は児童施設への寄付
・上を覆うものは自然保護への寄付
・下を覆うものは動物保護団体への寄付
になってます。
まぁ話しを戻しますが、用意する物は特にないです。
まぁ強いて言うとすれば、高いお面があれば祝印が受けられるという事ですね。」
「色んな寄付先があるんですねー!
けど、それでもやっぱり高いや。」
「まぁ、
無理してはダメですからね。
けど、ラヴァルさんは冒険ですよね?
もしかしたらお面貰えるかもしれませんよ?
幻獣祭が始まる前の一週間の間の、ランク二〜四の冒険者で各ランクで貢献ポイントが高い上位二名に高いお面をお渡ししているんですよ。
日々の感謝を込めてね。」
「私今日来たばかりだからな〜、、、
素材は提出しているけど、微妙かもです。」
「そうですか。」
「はい。それに今日は活動はしないし、明日は遺跡を楽しむつもりなんで。
お面は諦めるか買うかにします。」
「あ!そうだ!
もし遺跡に行った時にシードルの実があれば持ってきて欲しいです。」
「シードルですか?あれって秋の食べ物じゃないですか?今まだ夏前ですよ?」
「そうなんですよね。
フォギに伝わる昔話でシードルの実が出てくるのですが、この季節にはないのでいつも作り物で代用していてね。
一応毎年一日だけクエストをかけてはいるのですが、依頼が達成された事はないです。
今年も今から私がクエストをかけるのですが、、、まぁ、、、恒例行事みたいなもんですよ。」
「んー、、、、、、」
(樹魔法を使えばできなくはないけど、いいのかな?)
「まぁ気軽に捉えてください。
昔は樹魔法を使える人に頼んでいたのですが、最近は使い手が現れなくてねぇ。」
「あ、魔法もありなんですね。」
「おや?やはりラヴァルさんは樹魔法が使えるんですね?髪の毛の色が緑だったので、もしやと思いました。」
「はい、使えますよ。
じゃぁ取ってきますね。」
「よろしくお願いします。
シードルの樹は遺跡の教会跡地に生えているので、頼みますね。」
「教会、、、」
さっき渡されたパンフレットを開きながら場所を確認して
「真ん中らへんですね!わかりました。」
「さて、私はお店の準備もあるので、そろそろ行きたいですのですが、大丈夫でしょうか?」
「あ!はい。
助かりました!ありがとうございます。」
「そうですか。では、また。」
そう言って再び握手をしてマスターはギルドの受付の方に消えていった。




