間
118話 間
王都を出て一週間、目的の街まではあと少しの所までやってきた。
今夜が最後の野営になりそうだから、狩ったモンスターの肉を使い切る勢いでいつもより多めに焼いたり、スープに入れていく。
森の静けさの中で焚火のパチパチという音と、肉の焼ける匂いが周りに漂う。
休んでいた従魔のヴィゾーちゃんが首を持ち上げ、肉の匂いに目を爛々と輝かせている。
「もぅちょっと待っててね。」
優しく話しかけると 『わかった』 という返事が脳内に届いた。
※以降『 』内は魔力パスを使った会話になります。
ヴィゾーちゃんは人の言葉を発声できないから、魔力パスでやり取りする事が多い。
肉をひっくり返しながら、スープの火加減を確認していると、目の前に光の球が現れてフワフワ浮かんでいる。
「スプちゃんもお腹すいたの?」
光の球はゆっくりと縦に動き、肯定の意をしめした。
掌を出し、そこに乗るのを待って、ご飯という名の魔力を与えていく。
スプちゃんはスプライトという妖精?精霊?の一種で訳あって一緒に行動している。
ヴィゾーちゃんみたいな意思の疎通はできないけど、なんとなく何を言いたいのかは伝わってくる。
スプちゃん自身特に大きな力を使わない限り、大気中の魔力からの補給で充分みたいだけど、気分的なものらしい。
可愛いやつめ。
夕食後、テントに入り込み眠りに着く。
『お姉ちゃん起きて!』
ヴィゾーちゃんが脳内に語りかけてきた。
見張りの交代の時間まではまだまだなのに、どうしたんだろ?
テントから這い出すと、ヴィゾーちゃんは座ったままで特に変わった様子がなかった。
「どうしたの?」
といいながら、頭を撫でてあげる。
いつもなら気持ち良さそうな顔をするけど、今はそんな顔をせずにいる。
『スプちゃんが敵が近付いてきてるって言ってるの』
目の前にフワっとスプちゃんが現れてゆっくり点滅している。
『二体いて、挟み込むようにしてるんだって。』
「モンスターの種類はわかる?飛ぶのか地面を歩くのか?特徴だけでもいいよ。」
『熊っぽいけど、顔が梟なんだって。』
アウルベアかな?
それなら夫婦で狩をする習性があるから、二匹いるっていうのも辻褄が合うよね。
よし、じゃあ戦いますか!
「ヴィゾーちゃんは一緒に来て。
で、スプちゃんはここに残って、もう一体がここを通りそうになったら教えてね。」
そう言いながら、周りの植物を確認して、何種類か種を蒔いていく。
スプちゃんから敵の位置を確認して、ヴィゾーちゃんに跨り駆け出した。
暫くすると正面から風の刃が飛んできた。
それを最小限の動きで避けて距離を詰めていく。
程なくしてアウルベアと会敵
「ヴィゾーちゃんよろしく」
『任せてお姉ちゃん』
魔力を高めていく
私の魔力を警戒して、アウルベアが防御体勢を取りながら魔力を高めていく。
「!!!」
スプちゃんからの合図が届く。
読み通りだね。
野営地点の植物を成長させるように魔法を放ち、
正面のアウルベアの足元の草を成長させる。
それを合図にヴィゾーちゃんが身体強化と風魔法を使い、アウルベアに突進して押し倒し、顔と肩を足で踏み付けて、起き上がれないにする。
首を刺し捻り息の根を止める。
遺体を回収して急いで野営地点に戻る。
後ろから攻撃が来なかったから、多分どれかの罠にかかってると思うけど、、、
、、、
野営地点に戻るとアウルベアの首無し遺体があった。
いや、正確には頭は空中に浮いていて、首より下は地面に転がっていた。
首を切ったのは最近手に入れたクモノネっていうほそ〜い植物。
細いけど強度があるから、防具に使われたりもするけど、火に弱い。
それを木の間に張っていたんだけど、それに突っ込んだみたいだね。
「ヴィゾーちゃん、スプちゃんお疲れ様!
他にモンスターは寄ってきてない?」
スプちゃんが淡く光る。
『大丈夫みたいだよ。』
「そう。
どうしよかな。眠くなくなっちゃったから、ヴィゾーちゃん寝てていいよ。」
『ぼくも眠くないや。
ねぇ、なんかお話してよ!』
「そうだね〜」
、、、、
、、、
、、
、




