105話 ボスコ砦15
105話 ボスコ砦15
湖の方を見ていると森の影からゆっくりと、灰色の毛皮を纏った大型の猿型モンスターが現れた。
周りの木と比べてもかなり大型なのは見て分かり、一見すると大型のシルバーエイプに見えるけど、特徴的なのは目が紫色で右目が潰れている。
、、、
アムル様の所で戦った[紫眼]だ!
こっちにはまだ気付いてなく、ゆっくりと歩いて近づいてきている。
「まだだ、まだ動くなよ!魔力も高めるな!
チャンスは来るから冷静にいろ!」
クマさんが小声でみんなに伝える。
確かに隠匿効果のある装備をしているから、バレたらせっかくのアドバンテージを無駄にしちゃうよね。
[紫眼]は湖の周りを歩きながらフラフラと歩き回ってる。
右目が見えなくなってるからか、たまに距離感が掴めなくつまずいたり、右を見る時は首ごと動いて見ている。
やがて私達が作った湖と川の間に作った土壁に気付いて、不思議そうに見ている。
「壊すないでよ!どっかいってよ!」
と心の中で願っていると
[紫眼]がその場を離れていった。
よかった〜
と思っていたら
[紫眼]が振り返り、土壁に向かって走り出し体当たりをした!
ズゥゥウウン
体当たりは、水の圧力と土壁の柔軟性もあって、多少窪んだ程度で済んだだけだったが、それが気に食わなかったのか、火魔法を使い植物を燃やしてそのまま土壁を破壊しようとしだした。
ダメだ!今土壁を壊されると大変な事になる!!
その瞬間クマさんが飛び出して[紫眼]を大楯で殴りつけた!
土壁壊しに夢中になっていた事と隠匿効果が効いていた事もあり、綺麗な不意打ちになり、紫眼の体が大きく揺れた。
続くようにエルフさんの矢が[紫眼]に襲い掛かる。
遅れて私と魔法使いちゃんも飛び出していく。
[紫眼]の体勢が整わない間に、クマさんが距離を詰めて攻撃を続けていく。
魔法使いちゃんと私とクマさんの三人で取り囲むように位置取りをしていく。
鞭を取り出し背後から頭を狙って攻撃をする。
なるべく頭全体というより、耳を狙って出血と痛みを与え、首筋を狙って腫れ上がらせて呼吸をし辛くさせる。
最初は無視をしていた私の攻撃もウザさと地味な蓄積ダメージが効いたのか、次第に鞭を警戒するようになってきた。
その分クマさんの攻撃への防御が疎かになり、徐々に攻撃が直撃するようになる。
一撃一撃重い攻撃が入るたびに[紫眼]の顔が苦痛に歪む。
ただ、[紫眼]も打たれてるだけではなく、尻尾や爪、噛みつきなどを繰り返し、クマさんに襲い掛かる。
けど、それを騎士が得意とする防御技術で効果的に凌ぎ、逆に爪や拳を大楯で破壊していってる。
どれぐらい戦ったのか、明け方だった空が気付けばかなり明るくなっていた。
戦場に一羽の飛行系モンスター、パシクルが現れて円を描きながら飛び
ピーヒョロロロロロ
と鳴いた。
ファムちゃんの従魔で、事前に決めていた合図だ。
土壁を壊して湖の水を川に流さないと!
「コイツを押し倒すぞ!」
合図に気付いたクマさんが叫びながら[紫眼]に組みかかる。
それに応えるように、[紫眼]の右腕を鞭で絡める。更に魔法使いちゃんが足元を不安定にさせる。
身体強化を使って鞭を引っ張る
ググっ
、、、
っお
もたい
ブチッ
鞭の一部が切れる音がして聞こえ、
引っ張るどころか、逆に引っ張り返されそうになってる。
どんだけ力あるんよ!!
「お二人さぁ〜ん。
タイミング作るからぁそれに合わせてねぇ」
魔法使いちゃんがそう言って、右手を光らせながら[紫眼]の右側から走り込んでいくのが見えた。
「せ〜のぉ」
バチッッッ
弾ける音がしたと思ったら[紫眼]の力が緩まった!
もう一度身体強化の魔法を使って鞭を引く!
さっきとは違い、重さはあるけど簡単に引き倒せた。
振り返ると[紫眼]が痙攣しながら倒れているのが見えた。
それを見下ろすようにクマさんが立っていて、倒れている[紫眼]の足を狙って大楯を振り下ろす!
ガギン!!
硬いモノ同士がぶつかったような音がする。
これが片方は生身の生物と考えると、痛々しさが酷い、、、
二度、三度と打ちつけ足を破壊していく。
[紫眼]の足が肉が切れ骨が見え、膝から変な方向に曲がっている。
「メティスさん〜土壁の方をぉお願いぃ〜」
「わ、わかった」
土壁の所に行き、樹魔法で土壁に生やした植物を枯らせていく。
川の方を見て、仲間のみんなが退避していているのを確認して土壁を完全に崩壊させる。
川底に倒れている[紫眼]が水に飲まれていった。




