102話 ボスコ砦12
102話 ボスコ砦12
「では、会議を始める。」
石造りの会議室に部隊長さんの声が響き渡る。
集まっているのは、私達学生の代表数名と七十名程の騎士団の人達。
目の前にはこの周辺の地形を書いた大きな地図がある。
「先日からのモンスターの異常発生と本日確認された大型のシルバーエイプの変異種。この二点によって、スタンピートが起こったものとする。
討伐隊を編成し討伐とツリを行い、砦にモンスターを誘導し砦で迎え撃つ。
シルバーエイプの変異種は火魔法が使え、身長五メートル程度、性格は非常に好戦的。また全身を火に包まれても動いていた報告があり、火の耐性が高いと思われる。
紫色の眼をしている事から[紫眼]と名付ける。
一時アムル様が[紫眼]を一匹拘束していたが、先程従魔が上空から確認した所、拘束は破られていた。
尚[紫眼]は複数確認されている。
集まっているモンスターの種類を見ると、他の変異種もいるはずだ。
騎士団に所属している者は知っていると思うが、学生もいるから説明しておくが、スタンピートの場合、変異種が同族のモンスターを中心に率いる場合が多い。
モンスターの大部分は東のダンジョンから少し北に位置する場所に集まっている。
数はおよそ五百。
問題なのは、そこに行くまでに川を渡らないといけないが、途中にある橋を渡っている間に襲われると厄介だ。
モンスターは我々を無視して近くの村に行く可能性もあるから、早急に対処しないといけない。
早急に準備をして明日朝から作戦を開始する。」
「アのー少しいいでしょうカ?」
クマちゃんがそう言いながら立ち上がる。
「うむ。どうした?」
「カわを渡る橋が一本なんですよね?しかも細めなんですカ?」
「そうだ。馬車が一台分といった所だ。」
「モし、私がモンスターなら例え敵に釣られて川までいったとしても、その橋で行列ができるなら、他の場所に行っちゃいまス。」
「かと言って、攻めに行って向こうで殲滅は難しいぞ。」
「ハい。なので、川を渡らせ易くするのはどうでしょうカ?」
「渡らせ易く?渡り易くではなくてか?」
部隊長さんが眉間に皺を寄せて、言葉の意味を再確認するように聞いてきた。
「ハい、渡らせ易くでス。
幸い川の上流には湖があるので、そこから流れる水を堰き止めれば大丈夫じゃないでしょうカ?
で、渡ってる途中で押し流すのも有りだと思いまス。」
「それを作る時間をどう稼ぐ?」
「ソれは、上空から眠り草を粉にしてふりかけるのはどうでしょうカ?
五百匹全員にかける必要はなくて、変異種でいいと思うので、彼等を眠らせてしまえば、ある程度なんとかなるかもしれないでス。」
「、、、」
部隊長さんが腕を組みながら横を見る
「どうだ?副部隊長?」
部隊長さんの質問に、隣に座っていた豹の原種人の女の人が少し考えるように間を取ってから喋り出す。
「ええ、いいと思うわ。
問題はその工事を誰がするかだけど、、、
必要なのは適性が土魔法、もしくは第一職業が魔法使い。
あとは、空からは飛龍が三匹いるから、三人選出ね。。。足りるかしら?」
「はぁ〜い。わたし魔法使いですよぉ〜。」
魔法使いちゃんが手を振りながら立候補した。
「あら、じゃぁアナタ宜しくね。
他に適正者いなかったかしら?」
「私ならいけますよ。適性が土です。」
いつも一緒に行動してくれてるエルフさんだ!
「よかったわ。二人でいけるかしら?」
「そうですねぇ。大丈夫だとは思いますが、決壊させる時の仕掛けをどう作りますか?
普通だと木の板を使って塞いで、タイミングを決めて誰かがその板を壊すんですが。。。
しかもかなり強度がいりますよ?
土魔法だけだと大量の土砂が出てしまいます。」
確かにそうだよ!
この作戦いろいろ大変じゃない?
あ、でも板の強度は担任の先生が錬金術師だからできるかな?
あれ?違う。できないや。
確か錬金術するには色々制約があって、板は難しいんだっけ?なんかそんなのを父さんが言ってた気がする。
そうなると、土壁作って魔法使いちゃんが一人で決壊までやる!ってのが一番なのかな?
みんなの視線が自然とクマちゃんに集まる。
それを確認してからクマちゃんが堂々と喋り出す。
「ソれはご心配なク。」
お!流石ウチの指揮官!いい案があるんだね!
いつもクラス対抗戦の時も色んな戦術を用意してくれるし、それが外れた事がないもんね
「メティスさんがやってくれまス。」
、、、、
、、、、
「ふへぇっ?!」
暫くの沈黙の後、変な声で返事しちゃったから、みんながこっちを見てくるよ。
「メティスはいるか?」
部隊長さんが首を伸ばして探すように呼んでいる。
うぅぅ
なんでだよー
「はい。私です。」
なんか今喋ってる人達はみんな立ってるから、私も立ち上がって返事をする。
「どういう風にやるんだ?」
いや、知らないよ私、、、
クマちゃ〜ん、、、
スーッとクマちゃんの方を見ると、クマちゃんが頷いて話出してくれた。
「シつれいします。ワタシの作戦を彼女は知らないので、代わりに説明します。
まずはメティスさん以外の二人で土壁を作ってもらいます。
それと同時にメティスさんの樹魔法で、植物をその土壁に這わせて強化していきます。
タイミングを見て樹魔法で土壁の植物を枯らせるか移動するかして、決壊させます。
これだと、決壊する時の爆発音がなく、土砂の飛び散りが少なくいです。また、水の流れをコントロールしやすくできるので、比較的安全にできまス。」
「なるほど。メティスできそうか?」
「、、、決壊させるのが上手く行くかはわからないですが、土壁に植物を這わせるのはできます。」
「、、、そうか、、、まぁそこは最悪魔法で壊せば大丈夫だから、一先ずその案でいくか。」
「アと、上空から薬を撒く要員が足りないなら、ファムさんの従魔を使うのもありじゃないでしょうカ?今ここにはいないので、後で招集してみて下さイ。」




