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正直≒愚か

「あ」

「ん?」

 自宅へとあと一分、といったところで女性とすれ違った。茶髪のウェーブかかった髪に金色の目。恐らくカラーコンタクトだろう。ラフな格好をしている。

 その女性がすれ違った途端、こちらを振り返り、あ、と声をあげたのだ。反射的に振り返ってしまう。

「大地?」

 私は名前を呼ばれてビクッと体が強張った。前日取材があった時に写真を撮られた。なので顔を知っている人間がいたとしてもおかしいことはない。だが、そこで本名は掲載しないよう頼んだ。なので、”大地”という名前を知っているということは、知り合い、つまり近所の人程度だろう。

 だが、この女性の顔は見た事が無い。背丈や肌の老化から鑑みて大学生か、大学卒業したばかりの新卒だろう。

 …では、私の前世を知っている者か?

「ご、ゴメン。名前忘れちゃって。顔は思い出したんだけど」

 私はとりあえず”大学時代の友達”という設定で通すことにした。大学で今でも深い交流がある、という状況以外ではやり通せると思ったからだ。もし違ったとしても、似た人と間違えた、と言える。

「えーっ。忘れちゃったの? ヒント。同じ文豪会のメンバーだよ」

 この女からどれだけ情報を絞りだせるだろうか。少し面白くなってきた。

 まず第一に、彼女は大学生。そして同じサークル(?)の仲間とうことは記憶喪失前の私も大学生ということだろう。

 文豪会、という名前からして、小説を書くか文豪について調べる会だろう。偏見混じりで言うなら、男性よりも女性が多いと思われる。

「そうそう!文豪会…! 女子って確か六人だっけ? まだ広くない?」

「楓ちゃんと香苗ちゃん忘れたでしょ。まぁ、幽霊部員だから仕方ないけど」

 なるほど。女子は八人のようだ。つまり、前述の偏見から見るに、男性は多くて六人程度、実際は四、五人といったところか?

 それと、幽霊部員ということは楓と香苗は私の人生にさして関わっていないように思える。

 そして、この女性は反応や距離感から思うに、通常の友人よりも仲が深いのだろう。もしくは、彼女のパーソナルスペースが一般人よりも狭いのか。

「ってうか、全員の名前言える? 大地忘れっぽいから。今も私の名前忘れてるみたいだし」

「ぜんっぜんダメ。一人も思い浮かばないや」

「へー…それにしても、口調変わったね。もっと野暮ったかったのに…就職に向けて直してんの?」

「え? あ、あぁ。そんなとこ」

 過去の私はどんな性格だったのだろうか。もしかしたら今のような道化ではなく、本心をそのまま口に出す、正直(愚か)者だったのかもしれない。

「にしても酷いなー。彼女の名前忘れるなんて。ちょっとショック」

「彼女? あぁ、うん。そうだったね」

 意外や意外。まさか彼女がいたとは。

「まぁ、自然消滅寸前だったから…仕方ないか」

 そういう彼女の顔は哀を擁していた。きっと、私を愛していたんだろう。

 必要な情報は引き出せた。

 私の彼女であるというなら、記憶喪失であることを暴露してもいいかもしれない。元々粗悪な性格だったということは、素を見せても大きな問題が発生する可能性も低いだろう。

「あのさ、実は記憶喪失なんだ」

 周りに聞こえないように彼女の耳元に口を近づけ、ぼそっ、と呟くように放つ。

 彼女はこちらの気も知らないで大きなリアクションを取った。目を見開き、きょろきょろと周囲を見渡した後、小さな声で「本当?」と聞き返した。

「うん。まぁ、詳細は僕の部屋で話さない? 僕も過去を知らなくて怖いし」

 自分で言ってて寒気がする。

 恐怖心なんてあるものか。過去にぽっかり穴が開こうがどうでもいい。否、それすら楽しんでいる一面もある。小説のネタになる。それだけで嬉しかった。

 彼女はこくんと頷いて私の後をついてきた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 ここからは与太話がメインとなりますので、時間に余裕がない、興味がないという方はそのままブラウザバックしてください。


 皆さんは、『どっかで見たことあるけど…誰だっけ?』となった経験はありませんか? 私は顔を覚えるのがどうも下手でしてね。一瞬振り返っただけで顔が思い出せないんです。会えば名前もわかるんですが…。名前も顔も分からない時は『誰だっけ?』と素直に聞くようにしています。正直とは時に人を傷つけるもので、それでもそうするしか私には選択肢がありません。嘘は下手です。

 皆さんはどうしてるでしょう。ちょっと気になりましてね。知ってる風を装うのか、それとも私のように知らないと言うのか。


 次回ではどこまで話が進むんでしょうね。ワードで書く時は話を区切らないので、試行錯誤しています。作者である私でも分からぬカットが入るのでしょう。楽しみでなりません。

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