ネルのお遣い~お宅訪問編~
※ネル視点です
「ふう、技能習得ついでにやっと見つけました・・・。」
気配を探るために集中し過ぎて、ちょっとだけ疲れました。すぐ回復しますけども。
いよいよドラゴンさんの住んでる洞窟です、入り口からすぐの場所にいるわけがないとわかりつつも、入る前にお声を掛けさせていただきます。
「こんにちはー、ドラゴンさんはご在宅でしょうか~?」
はい、返事はありませんね、ありませんね? 耳を澄ましてみるも、何の音もしません。とりあえず一応声はかけたということで、中へ入りましょう。
普通の洞窟ですが、ドラゴンさんが出入りしているということもあって、中は広いです。入り口付近だけ普通の洞窟で、中へ入って少し進むと、綺麗に整備されたような空間が現れました。ドラゴンさんが工事したんでしょうか? それともコーマがそういう設定で配置したんでしょうか?
まだまだ気配は近くにはないので、ずんずん進んでいきます。人様のお宅ですので、むやみに走ったりはしません。私はお行儀が良いのです。使徒なので。
廊下的な空間には、松明のようで松明ではない灯りが両側についていて、程よく明るいですね。これはどういった原理なんでしょうか? 持ち帰って研究してみたいですね、便利そうです。
どんどん気配は濃くなっていくものの、これ一体どういう構造になってるんでしょうか・・・。明らかに山の大きさと中の大きさが噛み合ってない気がします。空間魔法で中を拡張しているとか、そういった感じでしょうか? コーマならロマンとかなんとか言いながらやりそうな気はします。残念ながら。
廊下の先に大きな大きな扉が見えました。ドアノッカーとかそういうのは付いてなさそうですね、一応手でノックしてみましょう。
コンコン
「あのー、ドラゴンさんにお会いしたいのですが、今入ってもよろしいでしょうか?」
ノック音は一応するものの、分厚そうだしあちらまで音が届いてない可能性がありますね・・・。仕方ありません、普通に開けさせていただきますか。
ギギギッ
床に扉が擦れる音がして、ゆっくりと開いていきます。結構重たいですねこれ、見た目が見た目なだけはあるといった感じです。普通の人だと多分開きませんね、やはりドラゴンは力が凄いんですね。
「お邪魔しますー」
自分の通れる隙間を開けて、中へ入ります。ちゃんとお声かけは忘れませんよ、無作法な奴だ! とか言われて印象が悪くなるのは良くありません。これから交渉するわけですから。
中へ入ると、ひときわ広い空間です。ドラゴンさんが5人(匹?)居ても平気な広さです。おっと、部屋の広さに気を取られている場合ではありません、目標のドラゴンさんが案の定寝ています。
声がちゃんと届くように、近くまで歩いていきます。足音はしているのですが、気付く様子はありません。爆睡です、しかも5人とも。
「あの~、すいませ~ん、ちょっとよろしいでしょうか~?」
大声過ぎない程度の大きさで呼び掛けてみますが、耳がどこにあるかわからないので、ピクピクと反応しているかとかそういうのが分かりません。これ本当に起きるんでしょうか・・・。
「ドラゴンさ~ん!起きて下さ~~~い!!」
全く反応がなかったので、今度は大きな声で叫んでみました。
お、起きるかも!
「んー?なんだ、珍しいな・・・ここに来る奴がいるなんて・・・くぁ~、あー良く寝た。」
これは、おじいちゃんでしょうか、お父さんでしょうか。兎に角喋る声は男性っぽいので、どちらかですね。
「この大陸を司るコーマという神の使徒をしております、ネルと申します。」
まだ寝ぼけ眼なドラゴンさんに、自己紹介をしておきます。
「お? おぉ、ここの大陸の神の使徒か、それはわざわざどうも。」
あっ、なんかこの反応、凄く村で見た気がします。どこの世界のどこの種族でもお父さん的な人は大体同じような感じになる法則でもあるんですかねえ。
「いえいえ、お休みの所申し訳ありません、ちょっとばかりお話よろしいでしょうか?」
「ああ、はいはい、他のも起こしちゃうからちょっと待っててね、使徒のお嬢さん。」
普通に優しそうです、ドラゴンさんはもっと気位が高いイメージでしたが、コーマが設定し直した効果でしょうか? それなら、まあ今回は良い仕事をした方ではないでしょうかね。
「おーい、父さん、母さん、シルヴィア、ミュウ、起きろ~、お客さんだぞ~」
お父さんでした、お父さんドラゴンさんは確か火属性でしたね。お母さんはシルヴィアさんというのですね、そして娘さんはミュウちゃんと。心にメモっておきましょう。
お父さんドラゴンさんが呼び掛けると、次々と起きだしてきました。おぉ、叱られないところを見ると、中々家族内の仲は良さそうですね。ゴブリンさんのご家族で、母ちゃんに逆らえないんだ~って言ってたゴブリンお父さんが居ましたが、ここはそこまでではなさそうです。
皆さんが起きて、しっかり目が覚めたのを確認すると
「さて、コーマ神から話があるんだったね? 聞かせてもらっていいかい?」
交渉開始だ。




