ネルのお遣い~到着編~
※ネル視点です
いよいよ、ドラゴニュートさん達とのご対面となりました。猫獣人の方々は、もう慣れたもので、普通にしていらっしゃいます。私は平静を保ちつつ、内心ドッキドキです。ワクワクと言った方が正しいでしょうか?
何せ、初めて会う種族の方なのですから、多少は緊張しますし、天界から見ていただけでは分からないかっこよさがあるかもしれません。
そうです、私はドラゴニュートのファンなのです。かっこよくて、とてもとても憧れます。
なので、今回コーマが依頼してきたとき、密かにガッツポーズをとっていました。気付かれてはいませんが。あ、でもギル様は気づいていたかもしれませんね、あの方は中々目ざといですから。
「よく来たな、里は君たちを歓迎するよ。」
里の近くまで来ると、そちらの方から歩いてくるドラゴニュートの方がこちらへ挨拶をしてきました。顔がドラゴンさんぽいので、年齢はちょっとわからないですけど、ナイスミドルな気がします。気がするだけですけど。凄い渋い声です・・・か、かっこいい・・・。
「今回はロクオウ村のネル様を連れてきたにゃ、なんでもここの山のドラゴン様に御用があるようなのにゃ!」
ユキさんがそう言うと、ギラリと鋭い目で射抜かれます。穏やかな笑みを浮かべた姿も良かったですけど、こういう鋭いかっこよさもいいですね!
っとと、いけないいけない。今はお仕事の事を考えなければっ!
「ロクスト大陸を司るコーマという神の使徒をしております、ネルと申します。よろしくお願いします。此の度は、この山に住まうドラゴン様達に神より伝言を賜っておりまして、その事でお話したく参上しました。」
ドラゴニュートは意識高い系とコーマは言ってましたので、しっかりと目を見て、真剣な面持ちでお話しします。姿勢よくお辞儀、これ基本、です!
「ほう、この大陸の神が・・・。分かりました、そういう事ならば、山に登る事を拒む理由はありませんね。失礼しました、私この里の代表を務めております、カゲツと申します。」
なんと、普通に通していただけました。これはコーマが凄いのか、この方の懐が広いのか。なんにせよ、通行許可は頂けました。後は山に登ってドラゴンさんとお話するだけですね。
その後は一緒に里まで歩き、里では猫獣人の方々も一緒に歓迎され、そちらはそちらで色々用事をすることになりました。私は、単独で山へ挑みます。
「我々は、畏れ多く、山へはご一緒することは叶いませんが、どうかお気を付けて。ドラゴン様にはよろしくお伝えください。」
「ええ、分かりました。それでは行って参ります。」
ぺこり、と頭を下げて、しばしの別れを惜しむ(心の中で)。ああ、カゲツさんかっこいいです。渋いです、紳士です。里の入り口からここまでの短い間でしたが、少しばかりお話ししたあのお声を頭の中で繰り返し反芻して、余韻を楽しみつつ山を駆け上っていきます。
こういう形のご褒美もいいですね! コーマには成し得ないご褒美なのです。
旅の移動中は猫獣人の方々に合わせていましたが、本来の私の移動速度は多分、ロクオウ村の中ではトップだと思います。本気を出すと、誰もついてこれないので。
山は、人の手の入ってない大自然といった感じで、道などはありません。なので、木から木へと飛び移った方が早いと見て、その移動方法を取っています。ここはドラゴンの住む山なので、魔物は気になる程居りません。暴れたらきっとプチッとやられちゃいますからね、魔物も本能でそれを理解している事でしょう。
この分ですと、あと1時間程で山頂へと到達するでしょうか。ドラゴンさんは山頂付近に居を構えているそうなので、そのあたりに行けばきっと分かるでしょう。
~ドラゴニュートの里~
「なんか、凄い速度で走っていったにゃ、ネル様は凄いにゃ~」
「流石は神の使徒といった所ですか、姿勢も良いし、態度も真摯だ。可憐な見た目とは裏腹にあのスピードは実力も相当あると見ました。」
「平和なところだから、誰かと争う事がないから実力はわかんにゃいけど、多分強いにゃ!」
「ええ、その実力が発揮される事がないよう、平和が続くといいですね。」
「まったくだにゃ! 私達はのんびり暮らすのがいいにゃ~」
ネルを見送ったカゲツとユキはこんな話をしていたのだった。憧れのドラゴニュートからお褒めにあずかっているとはつゆ知らず、ネルは爆走している。知ったらきっと小躍りする程度には喜ぶのだろう。
~1時間後~
「かなり山頂付近まで来ましたが、ドラゴンさんてどういうお住まいに住んでらっしゃるんでしょうか? コーマに詳しく聞いておくべきでしたね。鳥の巣みたいな感じだと分かりやすかったんですけどねー。」
キョロキョロと見回しながら山頂へ近付いていきます。巣! みたいな主張の強いものは見当たりません、もしかして、洞窟とかなんですかね?
普通に探していては、時間が掛かってしまうかもしれません、ここは精神を集中して、気配を探ってみましょう。・・・むむ、・・・ううん、・・・ん? ちょっと気配を感じたかもしれません。気配を探るなどやったことなかったので不安でしたが、もしかしたら魔法か技能が生えるかもしれませんねこれ。
無事に気配を探る技能を習得した私は、ドラゴンさんの住む洞窟を発見したのでした。




