夜叉鵺の処遇
「さて、大人しくなったのはいいけど、この子どうしよっか・・・。いくら大人しくなったって言っても、流石に怖い思いした魔物が近くにいるのは、ちょっと精神衛生上よろしくないわよね。」
ギルが出て行ってから、大人しくなった夜叉鵺の処遇を、シエルと二人で考えていた。目撃してトラウマになっちゃった人がいる集落からはとりあえず離すということにはなったのだが、他の集落の人が見て、どうも思わないというのはちょっと考えにくい。分からないものは怖いのだ。
見た目こそ穏やかになった夜叉鵺だけど、見た事もない魔物には変わりない。どこに連れていくにしても、不安要素は拭えないのだ。
「うーん、ラピンの森に住まわせるか・・・。」
あそこなら集落からは離れた場所にある。だが、新たに配置した獣人の集落が割と近いので、目撃してしまう可能性はある。鳥さんたちはいいかもしれないけど、兎さん達がねえ・・・臆病な性質だから、見たら卒倒しちゃうかもしれない。
「母様、シュウに相談してみるのはどうでしょうか?」
「シュウ君に? でも流石に色々と頼りすぎじゃないかしら? いくら転生者とはいえ・・・働かせすぎじゃ・・・。」
「気性が穏やかになっているとはいえ、夜叉鵺の身体能力は驚異的です。シュウはトリルを護るために毎日奔走しているのですから、戦力が増えるのは逆に喜ぶのではないでしょうか。」
「ああ、戦力と考えれば確かに強力だね、シュウ君には魔物や動物と契約する魔法を習得してもらおうかしら。」
いわゆるテイムというやつね。でも、これからまた今回のように新種の魔物が現れたりしたら? またシュウ君に頼ってしまうの?
シュウ君の住む集落は、シュウ君の頑張りにより、錬金魔法が周知されつつある。普通の人達も、新たな魔法に興味を持ち、それぞれの特性に合った魔法を創ろうという意識が芽生えてきているのだ。
「ねえ、シエル。今までラプールはこう・・・平等というか、平均的にレベルを上げてきたけどさ、ちょっとこれからの事を考えて、それぞれの特性を生かした街づくりをすべき時期にきているような気がするのよ。」
「そうですね、大陸全土に同じものを広めるというのも、素晴らしいですが、特性を伸ばしていくというのも大変魅力的だと思います。お互いに高め合う機会にもなりますしね。」
「シュウ君の居る町は、魔法の研究が盛んだから、最終的には魔法学術都市みたいな感じになればいいかなって・・・。」
錬金魔法や他の魔法も現時点でも結構多彩な感じだからね。これで契約魔法も追加となると、やはり魔法特区になるだろう。
すぐには、無理だろうから、構想だけは伝えておこう。
「じゃあ、ギルが帰ってきたら、また朝の礼拝の時に時間止めてもらって、直接お話しよう。シエルは一度下界に降りて、夜叉鵺を連れて、シュウ君の居る集落の近くの森に待機させてくれるかな?」
「わかりましたわ、母様。では、お手数ですが、夜叉鵺と意思疎通を図れるよう、設定を調整していただけますか?」
「ああ! そうね、穏やかなだけだし、言葉を理解することができるとかでいいかしら? それとも、こちら側の言う事に従うってしたほうがいい?」
「そうですね、言葉を理解するだけでは命令には従わないかもしれませんね。では一時的にでも構いませんので、私の言う事に従うというのも付けておいてください。」
「わかった。その二つをオプションで付け足しておくわね。」
夜叉鵺のステータスを出しながら、シエルを見送る。さて、夜叉鵺の設定項目を追加だ追加!
備考欄的なところに、人間の言葉を理解することができる。を、追加。これはポイント無料なんだ、良心的ね。
次に、アイリーンの使徒シエルの言葉に従う。を追加。あ、これは有料なんだ、そんな高くは無いけど。ログインボーナスだけで賄えるレベルと言った方がわかりやすいかしら?
そういえば、この子、特技というか、なんか固有技みたいなのって・・・あ、私が設定しないといけないのかな? こういう大きいサイズの魔物ってなんかブレスのイメージあるのよね。体はライオンぽいというか、獣? 爪が大きそうだから爪でバシーンってやるような技があってもいいかもしれない。
尻尾が蛇っぽいよね、キマイラみたいな感じなのかな。じゃあ、毒攻撃もできそうっぽい? 毒攻撃ができるということは、解毒することもできるよね? 解毒薬を生成することができる、としておこう。
ブレスを選択って出てきた。ほうほう、色々あるのね・・・。イメージ的には、雷・・・かな。雷獣みたいな? 某ピカちゃんみたいなのじゃなくて、バチバチッって感じのやつが竜巻みたいなのと同時にくるような。
・雷吐息(ブレス攻撃)
・爪撃(近接・物理)
・毒霧(範囲攻撃・状態異常:毒)
・解毒薬生成(状態異常解除:毒)
うん。強そう!
あ、シエルが夜叉鵺と接触した! おおう・・・お座りしてる。や、やだちょっと可愛いじゃない? ペットにするにしてはデカすぎるけど・・・。サイズ調整もいれとくべき?
結局サイズ調整能力も追加した。ちっさいの可愛いよ。




