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抗議

 今、神々の集まる部屋には一人の神がいる。現在のこの部屋の代表となっている神だ。トリルの事を亀ペースだの罵っていたあの神で、ギルの上司に当たる。

 ゲームに興じている星々を眺めながら、つまらなそうに欠伸をして、ふわふわと浮かんでいる。


 「・・・そろそろ、ギルが怒鳴り込んでくる頃かねえ?」


 もう一つ欠伸をして、これからこの部屋に飛び込んでくるであろう、ギルを待ち構える。丁度いい暇つぶしのおもちゃが来ると思うと、自然と笑みが漏れる。

 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて、血相を変えたギルを想像する。自分に罵られても表情一つ変えなかったギルの気配が、激情を溢れさせている、こんな楽しい事は無い。


 「おい!」


 予想通り、怒りに肩を震わせたギルが現れる。自分達には見せた事のない、必死の形相だ。まるで人間だ。


 「良い顔してるじゃねえの、ギルよ。言いたい事は大体把握してるが、一応聞いておこう、何の用だ?」


 「分かってるなら、なぜアイツの横暴を放っておくんだ!」


 「あーあー、折角御用を伺ってあげたのに、無視とはつれないねえ?」


 普段なら煽ったところで何の反応も帰ってこないギルから、怒声が聞こえてくるなんて! 楽しくて、もっと虐めたくなるじゃないか!

 それに、こちらを睨みつけている、殺したい程に忌々しく思っている目だ。たまらない。


 「流石に俺が手を出すと、ちょっとアレかな~って思って我慢してんのになあ。あいつは性格最悪だから、あきらめろよっ☆」


 バチコーンとウインクをして見せるが、ギルにとっては怒り以外の感情は出てこない。最高にイラついてるんだと思うと、喜びのあまり、笑みがもっともっと溢れ出る。

 これが、あの性悪から引き出されたと思うと、多少残念ではあるのだが。


 「そんな理由で諦められるかっ! これ以上の干渉はやめさせろ、それ以上は求めん!」


 「へえ、えらい入れ込んでるねえ? あんなつまんねー星がそんなに可愛いか? それとも、あの面白みのない星を創ってる子らが可愛いのか?」


 「そんな事はお前に関係ないだろう!」


 「いや~、お前がそこまでお熱になるような可愛らしい子か~・・・それは、妬けちゃうねえ?」


 ニタァ・・・と厭らしい笑みを濃くし、こちらを睨みつけているギルを舐めるように見てやる。こんなギルが見れるのなら、自ら手を下すのも悪くはない。だが、一応このゲームを取りまとめている立場にある自分がそれをするのはちょっと体裁が悪い。所詮は暇つぶし、その後の事を考えれば、流石にそれは躊躇われた。


 「ま、いいや。アイツには口頭で伝えるくらいしかできねーよ? 言った所で聞くような奴とは思えんがな、ククッ・・・可愛い子達をほっぽり出してここにきてるってことは、ちゃんと対処できたんだろ?」


 「あまりにもやり過ぎだ、今回は偶々上手くいったからいいようなものの、人の命を弄ぶような真似は断じて許されることではない!」


 「禁忌に触れる様なら、何らかの罰は与える事になる。だが、それ以外はお遊びの延長として、こちらからは何もしない。言いたい事あるんなら、直接言ってやれば? 喜ぶんじゃないか? ハハハッ!」


 性格は最悪だとしても、禁を侵すような真似は流石にせんだろう。そこまでの馬鹿なら、神としての資格はないと切り捨ててもいいわ。人手が足りないわけじゃない、暇を持て余す程度には余裕あるんだ。

 俺としては、こうしてギルが怒鳴り込んでくるイベントが有る方が、退屈しなくていいんだがな。


 ギルは、俺の言葉に、拳を握り締めたまま、睨み返すだけだ。もしかして、もうあっち行った後なのか?


 「その反応ってことは、もう袖にされた後ってことか! あいつの事だ、証拠がないだの言いがかりだの言われて締め出されたか?」


 ギルの反応を見るに、正解のようだ。こんなに分かりやすい反応してくれるギルなんて貴重だ! これは今のこの時間を楽しまなければ損というものだ。

 長らく神として退屈な時間を過ごしてきた。たまにはこんなご褒美があっても罰は当たらないさ。


 「でもあいつのおかげで、色々進んだろ? 魔法とか、ゴミみたいなやつしかなかったしなぁ? 錬金術とかまともなものが出てきてよかったな?」


 「そういう問題じゃないんだよ! 口頭だけでも結構だ、しっかり伝えておけ!」


 あーらら、出て行っちゃった。ご褒美タイムも終わりか~、残念だ、非常に残念だ。こりゃまたあいつにちょっかい出すように促さないとな? 俺の楽しみが一つ増えたわけだしなあ!


 いくつかの星が脱落して、ゲームに参加している神達は軒並み、日和ったからな。今更遅いが、助言しだしたりしてるみたいだ。それでも手遅れな星がいくつかある、そいつらは今後どうなるか俺が知った事ではないが。


 願わくば、他の神々もギルにちょっかいを掛けてくれると、俺の楽しみが増える。


 「次はどんな手で、ギルに嫌がらせすんのかな~。」


 再び頬杖をつきながら、今度は鼻歌交じりに上機嫌で星々を眺め始めるのだった。

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