神様って結構大変
神様という役割を得てからしばらく経った。
じわじわと時間を進めながら自分の大陸が発展していく様を毎日眺めている。
よく物語で不老不死を得たいお偉いさんが出てきたりするけど、そんないいものじゃないっていうのが
今ならよく分かる。だって・・・・
ありあまる時間あったってめちゃくちゃ暇だよこれ・・・。
人が生まれ、老いて死んでいく、でも自分は年を取らないし死にもしない。
好きな人ができたとしても当然先に死んでいく。
自分の心がじわりじわりと壊死していくような、そんな感覚に囚われそうになる。
神様ってこういう時どうやって自分を保つんだろう、神様初心者にはツライよこれは・・・。
などと考えながらもその瞳は大陸の動きを映している。
緩やかに発展していっているアイリーンのラプール大陸。
小さな村が複数でき、それがさらに集まって街になり、それが大陸各地に点在しているのが矢印に示されている。
示された中でも大きな町っぽいものにある矢印を一撫ですると、町の名前が表示された。
拡大していくと今までは遠目でしか見ていなかった町の全容が明らかになる。
どうやらもう原始的なものではなくなっているらしい、ある程度の文明が生まれているようだ
それでも自分たちが元居た世界には程遠いのではあるが。
「古代ローマくらいかしら・・・来ている服というか布?は麻・・かな?」
某お風呂大好きローマ人の映画を思い出す。
街を指でなぞりながら人々の営みを見ていく、建物は石造り、道は石畳が敷かれているが、質はそこまでいいものではないようだ。
街の中心部に目をやると、民家ではない感じの大きな建物があった。
「神殿・・かな?」
パルテノン神殿を彷彿とさせる造りの建造物の内部に入ってみる。
といっても実体をそこに存在させているわけではないので
分かりやすく表現するとするならば某Gアース的な感じである。
静かな雰囲気の中、視点を進めていくと一際広い空間に出る。その最奥に、石像のようなものが立っていた
「石像・・・?女性かしら・・・んん??なんだか今の私の見た目にそっくりなような・・・」
どこで見たのか、なぜかアイリーンの姿を模した石像が奉られていた。
「えっ・・・!な、ななななにこれ!?」
思わず声を上げてしまい、はっとするが人々に反応はない。聞こえてはいないようだ、そりゃそうだ。
「ねえギル、下界の人々になぜ私の姿がバレてるのかしら?」
当然浮かんだ疑問をギルに通信を使って尋ねてみる
「ここの信仰を決定した時から漠然とここの大陸の人々の脳内に存在するようになっているからね」
選択するとき、GOD的な神様を信仰する、例えばキリスト教的な~と安易に考えて選んだのだが
それは自分ではない何か漠然とした神様なイメージだったのだ。
自分を信仰されると分かっていれば他に何か選びようがあったのかもしれないが、今となってはもう手遅れである。
「自分が信仰対象とか聞いてないよ!」
「そりゃ言ってないからね~、聞かれなかったし」
そんなぁ・・・とガックリ項垂れる
なんでどうしてと言いたいところだが、後の祭りなのも理解できるのでぐっと堪える。
「今から神様のお姿だけでも変更とかは・・・」
「無理だねえ」
ですよねー・・・。
自分が崇め奉られているとかなんともムズ痒い限りではあるが、そういう仕様なのだと諦める外ない。
ふと考える。
物語の中でちょくちょく目にする場面で、神に仕えるものに神様からのメッセージが届けられるものだ。
聖書的なやつにも確かそのような記述があった気もしなくもない。
「これって、神託とか出来るのかしら」
神託として指示を出して自分の思うように発展させることができれば、ポイント獲得にも役立つんじゃないかと考えたのだ。
「一応できるけど、直接的な言葉では関与が過ぎる。だから君の思うような神託は下せないんじゃないかな」
oh・・・ダメすか。
完全に下界の人々任せなのね、ええいもどかしいっ
ただ、漠然としたイメージをヒント的な感じで伝えて、あとは人々の解釈に任せるといったことは
できるようだ、めんどっちぃ。
何かどうしても神託として下したい時はギルとよく相談してから決めよう、他の二人じゃちょっと参考にならなそうだし。
神様も案外大変なんですね、とため息交じりに言うと、ギルの苦笑した声が聞こえた。