表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/261

転生者シュウ、魔法を貰う

 シュウが生まれて3年が経った。転生させた神の隠蔽により、ステータスには表示されておらず、検索にも引っ掛かっていないので、アイリーン達に気付かれることなく3年を過ごした。


 「シュウ~、今日は神殿に行って魔法を貰いに行くわよ~」


 「はーい、わかったよ母さん」


 シュウは両親からの愛情を一身に受け、すくすく健康に育っている。育つ過程で、シュウはこの大陸の事をある程度は知る事ができた。できたのだが、攻撃魔法がないだとか、武器が存在しないだとか、そういう平和な事情はほとんど得られていない。


 両親からも愛情を注がれてはいるが、近所の人にも優しくされ、同じような年齢の友達もできた。長閑な集落で、のんびり遊びながら生活していると、生まれた時のような刺々しい思考もほとんどしなくなっていた。


 (いよいよ魔法を得る事ができるのか・・・、あっという間の3年だったな。結構のんびり暮らしてたからなあ~)


 丸くなったというべきか、この大陸に毒されたというべきか、それとも年齢に引っ張られたというべきなのかわからないが、男は以前と比べて驚くほど穏やかになっていた。


 母親に手を引かれ、近所の同い年の子とその親と合流する。これから集落の中心部にある神殿へ向かうのだ。そこで生活で使える魔法一式が与えられるという。これは誰でもが貰えるものらしい、神殿にお金を収めるという事もなく。


 (随分良心的な神殿なんだな、神殿って言ったら汚職の温床みたいなイメージなんだがな。そういや神官とかいるんだろうか?聞いたことないけど)


 「母さん、神殿ってそこで働いている人とかはいるの?」


 「そういう人は聞いたことないわねえ、お掃除は集落全員で持ち回りでやってるしね」


 「ふうん、そうなんだ・・・」


 (神官いないのか・・・ますます変わった神殿なんだな・・・ここは確か女神なんだっけか、ケチ神の言うには俺と同じ日本人らしいけど・・・)


 とりとめのない話をしながら、どんどん人は増えていく。皆同じような年の頃の子供連れといった感じで、神殿に到着する頃には10組を超えていた。父親も来ているところもあるようだ。うちは父親は畑にいってるから来てない、というか来たがっていたが母親が仕事行って来いと送り出してしまったのだ。


 魔法を得るといっても、全員が石碑に触れれば得られるものなので、そこまで特別なものではない。子煩悩すぎる父親が、母親に頼み込んでついてきているのだ。


 (いよいよか・・・神官がいないならどうやって魔法を授かるんだ?まさか女神自ら降臨したりすんのか?)


 やがて、集団は広間へと出る。そこにはアイリーンの石像が飾られ、その前に石碑が立っていた。シュウくらいの背丈なら手を伸ばせば届く。体の小さい子は母親に抱きかかえられてその手を触れるといった感じだ。


 親たちは一斉に女神の像へ祈りを捧げる、その様子を見て、子供達も女神の像へ祈る。見様見真似をしているだけなので、正確には祈ってはいないのだが。子供はそんなものである。


 「さ、シュウ、そこの石碑に手の形があるでしょう? そこへ手を触れるのよ」


 見れば石碑に手形が彫ってある、彫ってあるのか浮き出ているのかよくわからないが、手形があるのだ。


 「う、うん・・・」


 母親に促されるままに、手を伸ばし、石碑に手を触れる。


 (某天空の城の王っぽいイメージがあるな・・・やはり日本人)


 謎の納得感がシュウを襲う。いや襲わない。勝手に思っているだけで、アイリーンはそのイメージをしていなかった。ただ、子供でも触れれるようにするのと、触ればいい事が伝わればという思いだけなので。


 やがて、シュウの周りを淡い光が包み込む、前の子供がそんな感じだったので、驚くこともなく受け入れられた。程なくして光が収まると、シュウの中に”魔力”が感じられるようになった。


 「これが・・・魔力か」


 自分の中に湧き出る感覚に、ちょっとした感動を覚える。小説やなんかで見たのは血管に魔力が流れる様なそんな感覚。自分が神の真似事をしていた時には感じられなかったものなので、実際に転生するとこんな感じなんだなと、そう思ってしまう。


 (しかしなんだこれ・・・生活魔法つってももうちょっと何かいいのなかったのか?)


 ラプールの最初の魔法は基本セットなので、そこまで難しい魔法はない。水はコップ一杯だし・・・・。


 「これでシュウもトイレに入った後にスライムちゃんに水を掛けれるわね~」


 ご機嫌な様子で母親は言う。


 「トイレにスライムなんていたんだ?」


 知らなかった。3年も生活してて、全く気付かなかった・・・。と呆然としていると、母親がカラカラと笑いながら答えた。


 「1年はおむつだったしねえ、トイレも終わるとお母さんがスライムちゃんにお水あげてたからね、知らなくてもしょうがないわよ」


 どうやらトイレにスライムを飼っていて、それに汚物処理をさせているらしい。実にファンタジーな感じだ、今までそう言った要素はあまりなかったので、やっとファンタジーを感じられた。


 トイレにだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ