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ラプールにスライム現る

 ここはラプールにある、とある集落。集落に住む人は各々畑仕事や物を作る仕事、紙漉きを習いに行くなどと、日常を送っていた。

 この集落は川のそばにあり、川には洗濯をしに来る女性たちがちらほらといる。子供の面倒を見ながら洗濯をすることが多く、その日も何時ものように、子供達を見ながら洗濯をしていた。


 その日、川には奇妙な生き物がいた。


 「おかーさん、あれなぁに~?」


 子供に問われるが、見覚えのない生き物だ。母親同士で顔を見合わせ、知ってるかどうかを尋ね合うも、誰も知る人はいないようだ。迂闊に近づいて子供が怪我をしてはいけない、そう思った母親達はその奇妙な生き物から子供たちを遠ざけた。

 しかし、奇妙な生き物とはいえ、丸いフォルムにつぶらな瞳。どう見ても獰猛そうには見えない、母親たちの一人が恐る恐る近づいてみるが、その生き物に動きという動きはない。ただその場でプルプルと揺れているだけだった。


 「ちょっと、誰か知ってそうな人は居ないかしらねえ・・・」


 動物に詳しい人を連れて来るべきなのか、それとも知識が豊富な人?母親達はどういう人を連れてくればいいのか、お互いに意見を出し合い、一人の男性の名を挙げた。

 その男性とは、色んな動物をよく観察しており、動物限定の鑑定が使えるらしいのだ。その男性の自宅付近には捕まえてきた動物が色々と飼育されている。鶏は毎日卵を産むので世話になった母親もこの中にいる。


 「ぼうや、ちょっとミゲルさん呼んできてくれないかしら?」


 「わかったー!いってきまーす!」


 「転ばないように気を付けていくのよー」


 そんなやり取りをして、奇妙な生き物の居る場所から少し離れた場所で洗濯をしながら待つこと30分。呼びに行った子供に手を引っ張られて、走ってくる人の姿が見えた。


 「お呼びだてしてすみません、ちょっと見てもらいたいものが・・・」


 「あ、ああ、別に構いませんよ、ちょっと動物の世話しながら居眠りしちゃってただけで・・・忙しくはなかったので」


 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、男は答える。この男の名前はミゲル、先程子供に呼んできてほしいと頼んだ動物限定の鑑定の使える男だ。


 「あの、その川辺なんですけど、見た事もない生き物がおりまして・・・」


 自分達が見た物の形状や、動き、そして敵意はないようだという事をミゲルに伝える。


 「ふむ・・・ちょっと鑑定で見てみますね」


 そう言うと、ミゲルは奇妙な生き物の近くまで歩いていき、それを見ながら動物限定の鑑定を使用した。


 「クリーンスライム・・・と出ました。魔物という分類になるらしいのですが、これは色んなものを綺麗にしてくれる生き物みたいですよ」


 色んなものを綺麗に、という部分にそこにいた母親達全員が反応した。各家庭にトイレはあるが、肥溜めの臭いに日々悩まされていたのだ。汚物が溜まれば、処理をするのは自分達だ。もしかしたらこの生き物が解決してくれるかもしれない、そんな希望が見えたのだ。


 「そ、それはもしかしてトイレに入れてあげてもいいのかしら?」


 「そうですね、トイレに入れてあげると汚物を食べて処理するようです、その後に水魔法の水を掛けてあげるとリセットされるようですね。中々凄い生き物ですね・・・。」


 「おかーさーん!こっちにもいるよぉー!」


 クリーンスライムと呼ばれた生き物は、その一匹だけではなかったようだ。どうやら複数いるようで、捕まえるのも簡単みたいだった。子供が普通に抱えていた。


 「大人しい生き物みたいですから、触っても平気ですよ。村に連れて帰って一度使ってみては?」


 「そ、そうですね・・・一度試してみようかしら?」


 その場にいた母親達は子供にそれぞれ、クリーンスライムを探すように伝えた。その間に洗濯を済ませてしまう、子供たちは暇つぶしもできて満足だろう。

 ミゲルは一匹譲ってもらい、洗濯場を後にした。村に先に戻り、他の人達にこのことを伝えるらしい。

 このクリーンスライムの有用性が確認されれば、村の中の臭い問題は解決するだろう。肥料に使っていた肥だが、他にも代用品は色々とあるし、今は魔法で土壌改良も多少はできる。

 

 家事を色々こなす母親達だからこそ、確信する。



 「これは・・・女神様が齎した生き物なのでは?」


 その場にいた全員が、薄々思ってはいたのだ。声に出していなかっただけで・・・。見た事もない物=女神関係みたいな図式が既に出来上がっているラプールにおいて、ごく自然な考えだった。

 毎回何か新しいものが齎される時、女神様が~という言葉を聞く。自分達がまさに今、その現象のさなかにいるのだと、母親達は考えた。それは畏れ多い事だけど、それよりも生活環境がこれから改善されると思うと、ありがたいという思いの方が強かった。


 その場にいた全員で女神に感謝の祈りを捧げるのであった。


 祈りを捧げ終わると、子供たちが一人1匹ずつクリーンスライムを抱えてこちらへ走ってくるのが見えた。結構いっぱいいるらしい。これからトイレに入った後は水魔法の水を掛ける、という行動が生活に加わる。水を流す的な意味ではトイレが進化したとも言えるのだろうか・・・?


 こうして、こういった話が各地で聞かれるようになる。後に語られる(かもしれない)トイレ革命である。


 めでたしめでたし・・・?

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