裏で起こっていた事
皆で温泉に浸かってほわほわしていると、ギルの表情がなんだか険しい・・・?ように見えたので、どうしたのか尋ねてみた。
「うーん・・・今はちょっと・・・いや、帰ってから連絡会でコーマも交えて話をしようか」
なんか問題でも発生したのかな?
「トリルに直接影響があるわけじゃないから、心配しなくていいよ」
そうか、トリルの問題ではないのか・・・。じゃあそこまで深刻でもないのか、な?
もう既に美少年人形と化したギルが一緒に温泉に浸かっていても、何の違和感もなくなってきた事の方がよっぽど問題な気はするけどね!羞恥心どこいったん。
ま、今更だけどね・・・神なので。
今回も火の精霊さんがきっちり案内してくれて、歓迎してくれた。広大な温泉の周りには様々な植物が茂っている。前回から時間がちょっと経ってるので、色々用意してくれたようだ。果物とかも成ってるし、至れり尽くせりだなぁ。
あ、あと今回は火の精霊さんと土の精霊さん以外にも、妖精さんとか水の精霊さんも加わって、温泉を満喫しているのだ。かわいい。流石にエルフさんは加わってないけどね。
仕事の疲れは十分に癒され、いや元々肉体的には全くもって疲れてないんだけど、気分的なものね、気分的な!久々の地上も楽しんだので、そろそろお開きにしようかという流れに。
「次回来るまでに何か要望がありましたら、可能な限り努力いたしますので。」
精霊さん達のサービス精神が留まるところをしらない。いつの間にこんな接客のプロみたいになってんの!?いきなり要望だなんて言われてもね・・・今ので十分な気がするんだけど・・・。
思いつかずにうーん・・・と悩んでいると
「はいはーい、次回は動物さんも一緒に入りたい!カピバラとか!」
よりによってカピバラさんですかい。シュミカの発想力ェ・・・。
「カピバラというのは、良く分かりませんが、動物ですね、承知しました。」
ですよね、カピバラこの世界にいないよね。一瞬普通に了解されるかと思って焦ったわ。
精霊さんや妖精さん達に見送られ、私達4人はウレイン温泉を後にした。
~白い部屋~
「おう、楽しんできたか?」
既にコーマが待機してて、若干びっくりした。いつものだらけた様子ではなく、しっかりしてる感じ・・・なんだろう、趣味が楽しくて仕方ない時のコーマって感じなんだけど。一抹の不安が・・・。
「なんか失礼な事考えてるかもしれんが、ちゃんと仕事してるぞ」
読まれた。まあいいわ、ギルからの話があるから来てるんだよね?あの時のギルの顔は険しくて、ちょっと怖いくらいだったけど、今は多少真剣って感じで怖さは感じない。
「さて、僕からの話なんだけど───」
ギルがぽつりぽつりと話し出す。私達の他の星の話ではあるんだけど、ギル達神のグループの中の一つの星の話だそうだ。
これまでにも、いくつかの星で人類が滅亡したり、星そのものが死んだりと、私達の知らないところで色々あったらしい。大体行き着く先は戦争なんだって・・・やっぱり武器は持たせるもんじゃないね・・・。
今回の話は、その中の一つの星の人類が滅亡ということで、その担当をしている私達と同じように連れられてきた人間が消滅を免れる為に、他の星へ転生したというのだ。他の滅亡したとこの担当は罰として消滅させられたとか・・・怖い・・・。
トリルはその転生した人の目に止まらなかったからいいものの、もし様子がおかしい人がいたら注意して見ておいて欲しいとのことだった。私達の知らないところで別の星から地球人が転生してくる可能性があるという事、それは文化文明が一気に塗り替わってしまう恐れがあり、最悪武器が齎される。
折角トリルは穏やかな発展をしているところなのに、そんな物騒な思想を持ち込まれてはたまったものではない。絶対阻止せねば・・・!とはいえ、阻止する方法なんて知らないんだけど・・・。
「阻止は・・・できないの?」
「転生させているのは、僕と同じくらいの力を持った神だから、阻止はちょっと難しいね・・・」
「変なのが来たら、俺たちで対応しないとってことか。結構厳しいな」
「別の星からの転生者で常時検索ってできるのかしら?」
「そうだね、それくらいしか方法はないね。もし見つけたら僕に知らせてほしいんだ、手間かけさせてすまないね・・・。」
「ううん、ギルが悪いわけじゃないもの、謝らなくていいわよ」
「そうだぞ、そもそも滅亡させる星作ったそいつが悪い」
「あんたもあんまり人の事は言えないけどね、コーマ」
「うっ・・・!い、今は真面目にやってるから!発展もしてるから!」
私達と同じように地球から連れられてきた人達が、一体後何人いるのか想像もつかないけど、これから先、今回みたいに他の星に転生させる神が現れないとも限らない。転生してきた人が良い人ならまだいいけど、大体からして戦争放置したり、人類滅亡させたりする人だしね・・・。そこまでの期待はできないと見ていいだろう。
今回実害というか、実際に転生してきてはいないので、いつそういう事態が来てもいいように心の準備だけはしておく、ということになり、連絡会は解散となった。
美少年人形は再び人形部屋へそっと戻された。




