ウレイン大陸南端の島
ウレイン大陸の南端、海を隔ててもうもうと煙の上がる山が見える。
「おぉ、さくらじま・・・・きりしま?」
「うろ覚えなら黙っておきなさい」
金色のライオンちゃんになっているギルにさらっと注意される。
それも大して気に留めてないようにシュミカは続ける。
「あそこに火の精霊さんがいるんだよー、まだ会った事無いけど~」
「知ってる・・・」
シュミカが設定していたのを眺めていたから何をどこに配置したかなんて普通に覚えている。
得意げにドヤ顔しながら言うシュミカの言葉を呆れた様子で対応する。
大陸の発展の役目を棄権したことで神の力を失ったシュミカだが
この大陸でのお困りごとが全くないわけではないのだ、大したことではないが。
ギルが代理で弄るということもできないので、現地でお困りな事は無いか聞き取り調査を行い
対応をする、アナログ方式で解決に導く。
毎日遊んでいるようで、一応そういう仕事はやっていたのだ。
シュミカはほとんど遊んでいるようなものだが。
「火の精霊は基本的に気性が荒い、余計な事言って怒らせないように」
「はぁい・・・」
そんなうかつな事しませんよーだ!と言わんばかりに頬を膨らませて不満たらたらにシュミカは返事をする。
いつも余計な事しか言わないだろう・・・と今に至るまでの苦労を思い出してギルはジト目でシュミカを見やる。
精霊や妖精に会う→話を聞く→余計なことをシュミカが言いだして苦労が増える
大体このルーチンで現在に至る。
苦労性が板についてきたようで何よりである。
「アイリーンのとこの使徒ちゃんも目覚めそうだし、ウレインにも遊びに来てほしいからね!がんばるよ!」
頼むから余計な方面へ頑張らないでほしいと、ギルは居もしない神に祈るのだった。
「んで、どうやってあそこに渡るの??およぐ?」
「どう考えても泳がないよ、僕一応神だし君は神に準ずるものなんだよ?」
「じゃあ飛ぶ?」
「ある意味飛ぶに近いけど、あの島に瞬間的に飛ぶ。」
言い終わると同時に、ライオンのギルとシュミカの姿がそこから消えたのだった。
「コーマが喜びそう」
「え、感想それだけなの・・・」
現代の日本人なら「うおおおお瞬間移動きたこれ!」とまでは行かなくてももっとなんか・・・
感動とかするものなのではないのか?というギルのイメージは崩れ去った。
シュミカに期待する方が悪い。
島はそこまで大きなものでもなく、緑が全くないわけでもないがあちらこちらに煙が上がっていて
硫黄のにおいがそこかしこから流れてくる。
きっとそのへん掘り起こしたら温泉でも出るんじゃないか、とでも思っているのだろうか
シュミカはしきりにキョロキョロしている。
「温泉は出ると思うけど、今日の目的はそれじゃないから我慢しなさい」
「・・・・へぇい・・」
図星だったらしい。
気を取り直して、火の精霊の気配が強い場所を探る、ここからそう遠くないところに居るようだ。
「ここからは歩いていくよ、一応足元気を付けてね」
「はぁいお母さん」
「誰がお母さんだ誰が」
「んじゃせんせーで」
「はぁ・・・もうそれでいいです」
最近ギルのおかん化が止まらない、とギルがいないときにアイリーンが言っていたのを思い出す。
でもそれは流石に伝えたらいけないと理解したので黙っている、まさか心までは読まれまい。
暫くギルを先頭に歩いていくと、だんだんと熱気が強くなってきた。
目視できる場所に火の精霊がいる。
「こーんにーちは~~~」
「あっ、こらシュミカ!」
手をブンブン全力で振りながらそちらへ向けて走り出すシュミカをギルは慌てて追いかける。
ちょっと前に言ってた注意を全く聞いてない!
余計な事は言わないが、挨拶はする。
シュミカの事をまだまだわかってないギルが悪い byアイリーン
「なんだ?人間・・・?エルフか?森の引きこもりがこの島に何しに来た」
明らかに怪しまれている・・・。
「えっとですね、何かお困りな事とかってありませんか?」
コテンッと首を傾げながら火の精霊の顔を覗き込む。
シュミカの顔を訝しげに一通り眺めると、精霊の顔がハッとなる
「創造主殿か・・・・」
「元ね、元」
エルフたちはともかく精霊たちはシュミカが元神でこの大陸を創った事を知っているのだ。
魂に刻まれた記憶は消える事は無いので、シュミカの力が無くなっても精霊たちは理解している。
「困りごとという訳ではないのだが・・・以前何やら温かそうな湯に浸かっているイメージが頭に過ってな・・・」
まさかの大陸渡ってたアイリーンの妄想・・・!
「あーあーあー、それね!」
ビシッと指をライオンのギルに向ける。
これは丸投げする気だ、と瞬時に悟り軽くため息が漏れる。
「それはここのお隣の大陸を司る女神の願いが強すぎてここまで流れてきてしまったのだと思う」
それがお風呂だという事と、この周辺のどこかを掘れば温泉が出るかもしれないという事、お風呂と同様に浸かって楽しむものだという事を説明すると、火の精霊は「それは中々に面白そうだ」となぜか好意的に受け止めていた。
火なのにいいんだ・・・。
「では我はそのおんせんとやらをいくつか掘り当ててみようと思う、創造主殿も暫くしたらまたこちらの島へ渡っておんせんを楽しみに来て欲しい」
「おっけー!お友達も連れて来るね!」
こうして緩いクエストは終了した。
バトル?そんなものはない。




