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お風呂報告

また一つ惑星が死んだ


沢山の命が失われたというのに表情一つ変わらない、神様なんて人間たちは崇めたり祈ったりするけど

そんないいものじゃない。命なんてそこらへんにある目に見えない塵のようなものだ。


顔を顰めるところを見られたくないから平静を装う。


俺もここにいる最低な神々のお仲間ってことだ・・・不本意だが。


「まーた戦争で滅亡かよ、バカの一つ覚えだな?」


相変わらず誰彼構わず罵倒し続けるこのグループのトップの神。

科学の発展自体は地球より凄まじかったが、それに伴う惑星の疲弊、資源の枯渇。

ポイントで補えないほどに大地は傷つき、そして争いが絶えなかった。

ついには強大な力を持つ兵器が人類を襲った・・・この星も残る人類は数少ない、近いうちに全ての生命が死に絶えるだろう。

この星を造り、導いたのは元科学者だったそうだ。

大いに進んだ技術発展はその科学者の悲願でもあっただろうが、争いには全く関与せず放置していたらしい。


暇つぶしも終わったということでその元科学者も処分されるのだろう・・・。


これで二つ目


無慈悲なる神々の遊びに翻弄された哀れな人々に心の中で祈りを捧げる。

もし生まれ変わるなら、平穏に人生を送れますように・・・と。


────────────────────────────────────────


「あれ?今日はギルいないの?」


ところ変わってここはトリルの白い部屋。

いつもの3人+ネルで定時連絡会が開かれようとしていた。


「はい、神々の集まりがあるそうで、適当にやってて~って言われました」


「適当に、ねえ・・・まあ大体適当にやってるけども」


厳格なルールがあるわけでもなく、定時連絡会と銘打ってはいるものの、ただの雑談会なのである。

報告は最初にざっと概要を伝えるだけで残りはほぼほぼ雑談なのだ。

MMO時代から集まると最初にリリース情報やら狩場情報やらを連絡し合い、その後は雑談。

神になったとて、人が変わるわけでもないので、行動も割とそのままな3人なのであった。


「あー・・・お風呂ができました・・・」


「おぉ!凄いじゃん!でもなんかあんまり嬉しくなさそう?」


「・・・なんかやらかしたか?」


素直に褒めてくれるシュミカには苦笑を返すが、言い淀む感じで心配されてしまっていた。

鋭いのかなんなのかよくわからないコーマには図星をさされ「ウッ!」な顔を見せてしまった。


「で、なにやらかした?緊急で連絡入ってないからそんな大したことじゃないんだろ?」


さすが幼馴染とでも言おうか、アイリーンの事をよくわかってらっしゃる・・・。


「うん・・・まあやらかしたっていうか・・・やらかしたんだけど」


ごにょごにょ言いつつも、ぽつりぽつりと妄想が神託されてしまって自分のお湯に浸かる姿絵が

お風呂屋さんの壁の絵にまでなってしまったことまでワンセットで語っていく。

恥ずかしさから最初からずっとアイリーンは俯いたままだった。


「お湯に浸かると気持ちいいんですか?」


話を聞き終えたところでネルがアイリーンに質問する。

生まれて間もないところで召し上げられ、使徒になったためというのもあるが、そもそもまだお風呂とかの文化がなかったので、致し方ない質問である。


「あ、ああ・・・そっかネルちゃんはお風呂入ったことないんだねえ、よしっ今から私とお風呂入ろっか!」


シュミカがそう言ってネルの手をとる。

ネルは「お風呂・・・?」といった感じで首を傾げたまま、シュミカに押し切られてお風呂へと向かっていった。

実際に体験した方が分かる事もある・・・はず。

と、残された二人はシュミカの素早い行動に唖然としつつ、思いついてからの行動はえー・・・と

妙な感心を覚えた。


「まあでも結果オーライじゃないか?お風呂、広まったんだろ?」


「う、うん・・・広まったけど・・・絵も」


あれから暫くは研究と開発と建設で時間は経過したものの、めでたくラプール全土にお風呂文化は広まった。集落に一つずつ公衆浴場が出来、衛生環境も、住人の肌環境も断然良くなった。良くなったのだが


気持ちよさそうにお風呂に浸かるアイリーンの絵姿もきっちり全土に広まっていたのであった。


ちなみにお風呂屋を示す看板にもお風呂に浸かるアイリーンの簡単な絵が描かれている。


暫くすると、ほかほかに茹で上がった二人が戻ってきた。

ネルはうっとりしたように頬を上気させて口も開いたままだ、シュミカは普通にさっぱりしましたーって

顔をしている。


「あの・・・ネルちゃん大丈夫なの?」


「ネコちゃんだからお風呂嫌がるかと思ったけど洗ってさっぱりさせて、湯船に浸けたらこうなった!」


渾身のドヤ顔で報告するシュミカ。

こうなった!じゃねーわ、ともあれ特に何かしたというわけでもなく普通にお風呂に入ったようだ。


「きもちよかったですぅ・・・」


「そ、そっか・・・それならよかった」


「むむむ・・・うらやまけしからんな・・・」


「コーマ黙って」


その日、ギルは帰ってこなかった。

帰ってきたとしても蕩けたネルを見てハテナマークを浮かべるだろうからそれはそれで良かったのかもしれない。

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