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簡単魔道具作成キット、実践

 「これは・・・?」


 材料と冊子を前にして、地下都市の中の部屋に集まった生き残り組は、小首を傾げた。目の前にあるのは、小さな魔石とサラダボウルのような淵のある器、それに細い木が何本か。

 いつも通り唐突に表れて、生き残り組を集め、小部屋に連れて行かれて見せられたものがこれだ。これが一体何の材料なのか、見当もつかない様子で、コーマの言葉を待つ。


 「これはな、簡単な魔道具作成キットだ」


 「さくせいきっと」


 「そこにある冊子を見てくれ、字が読めれば子供でも作れるようにしてある」


 「ほう・・・絵が入っていてわかりやすいですな、字が読めなくても勘のいい子なら理解できそうじゃ」


 ドワーフがそういうと、後ろで冊子を覗き込んでいる他のメンツも頷く。


 「一応一番初歩的なものとして、ランプ、まあ明かりだな。それを作ってもらう、一応第一号だから、ここをこうしたほうがいいとかの意見も大歓迎だ。どうだ、できそうか?」


 「眠る前までに見た魔道具とは、かなり構造が違うのですな」


 「ああ、以前の魔道具は、魔法の知識や魔法陣の知識、それぞれに高いレベルを要求されてたはずだ、まあ見たわけではないが、推測できる。だが今はその知識を有する者はいないだろ?」


 「なるほど、専門的な知識がなくとも、簡単なものであれば誰でも作れると」


 「そういうこと。今は地下都市でそれなりに設備も整ってるから必要はないが、地上に出ればそうはいかない。以前の知識を提供することはできるが、今は人口も少ないからな。これならこれから生まれてくる子供にも簡単にライトの魔法くらい教える切欠にもなるし、どうだ?」


 「素晴らしいと思いますわ、そこから次の知識への意欲が沸くかもしれませんものね」


 当然、それも狙いの内だ。平等にきっかけを与えれば、それに食いつくやつは何人かに一人くらいはいるはずだ。


 「とりあえず一つだけ試作品として持ってきたんだが、代表で一人で作ってもいいし、全員で作ってもいい、早速始めてくれ」


 「は、はいっ」


 そういうと、生き残り組は冊子を眺めながら、手順と材料を確認している。


 「コーマ様、この魔石なんですが・・・」


 「あー、魔石はな、それを産む鶏を作ったから、人口が増えて地上に出るようになったら、こっちに釣れてくる予定だ」


 「魔石を・・・産むんですか?」


 生き残り組が生きていた時代、魔物を倒してその中にある魔石を手に入れるという手順と、鉱山の中の魔素が濃い部分に自然発生するものを手に入れるという手順しか知らなかったせいで、卵を産むように魔石が生まれるというのがいまいちピンとこないらしい。それもそうか。


 「ああ、今までは魔物を倒して手に入れたりしてただろ? でも今は魔石が手に入るような魔物はあまり存在してないんだよ。知能のある生き残っている種族が食糧にしたりして、その周辺の魔物を狩ってるから、昔に比べてこの星全体の魔素が安定しまくってるんだ。だから魔石が今までのやり方じゃ手に入らないんだ、というわけで新しく創った」


 ないなら創ればいいじゃないっていうのは、アイリーンが言ってたんだったか。なにそのゴッドアントワネット。でもまあ、神としてはそれが一番手っ取り早いというのは分かる。わかりすぎるくらい分かる。


 「ほほー・・・わしらが生きてるうちにその魔石を産む鶏を見てみたいものですなぁ」


 「まあそのうちなー」


 どのタイミングで出すかはまだ決めてないが、とりあえずお前らは子供さっさと作れよ? そのためのノアの方舟的なやつだろう。その視線の意味を理解したのかしてないのかわからないが、会話を終了させて、続きをやりはじめた生き残り組だった。


 組立自体も、そう難しいものではない。手先が器用でなくても、一定以上のクオリティにはなるはずなんだが、壊滅的に手先が不器用なやつは・・・どうだろうな。まあ歪でも魔石に願いがこもっていれば明かりはつくんだが。


 「この願いを込めるというのは、どうやるんですか?」


 「そこはなー・・・ちょっとふわっとした感覚でしか説明できないが、お前たちは全員ライトが使えるか?」


 全員がコクコク頷く。まあ、初歩的な魔法だもんな、大抵の奴は使えるだろう。生き残り組に選ばれるくらいの能力の持ち主だし尚更だ。


 「ライトを使いながら、条件を頭の中に思い浮かべるんだ」


 「条件ですか」


 「指先で一度触れれば<ライト>が発動する、もう一度触れれば取り消される、とかな」


 「ちょっとやってみますね」


 エルフの女性が前に出てきた。エルフは魔法が得意だし、魔道具にも興味あるんだろうな。エルフの女性はそのまま魔石を手に持ち、目を閉じ祈りだした。


 「わわっ、目の前に何か出てきました!」


 「うん、その出てきたやつに書かれているので良ければ”はい”と願ってくれ」


 つまりウインドウが出てくるのだ、魔石を手に持ち願いを込めればそれを適用するかの選択肢が出るように俺が設定した。元SEだから、システム改変は慣れてるしな。


 エルフの女性は魔石を机に置き、それに手を触れると、ぽわんとした光の球体が魔石の上に現れた。


 成功したようだ。

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