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男のロマン

 「いや待て、落ち着こう、俺が設定したんだから、今なら修正できるは・・・ず」


 そんなかすかな期待も空しく、新たに設定された種族名は変更できませんと出ていた。新井族、決定である。


 「く、蜘蛛族とかいるかもしれないし・・・」


 蜘蛛系を探すと、なんちゃらスパイダーの文字列がずらりと表示されるのみ。


 「なんとか狼族とか・・・」


 なんちゃらウルフ系。


 「悪魔族はシャイターンになってるし、夢魔はキュバスだし・・・あああああ」


 数ある種族の中に、新井族がデーンと君臨しているのを見ると、脱力感が半端なかった。


 「はぁ・・・もう諦めよう。バレた時に言い訳すればいい、それまでは黙秘だ黙秘」


 余計な事を言わなければバレないのだ、大体の事は。そう決めつけて、コーマは一旦このことを頭の隅に追いやった。第二の新井族一家を用意しなければ。

 見た目を全く同じにしてしまうのは不気味すぎるので、ベースを最初の一家にしておいて、ちょいちょいパーツを変えていく。少しのパーツを変更するだけで、驚くほど別人に見えるから不思議なものだ。


 まんまるおめめか、ツリ目かだけでも、結構な印象の違いはある。ラピスラズリの時は、数が多すぎたので、エプロンの柄だけ変更したにとどまったが、今回はそうもいかないのだ。同じ空間で生活を共にするのだから、見た目が全く同じだと、親が子を、子が親を認識しづらくなるのは気の毒すぎる。


 先ほどの一家が普通の目なのに対し、今回はタレ目で行くことにする。多分次の次はツリ目だろうし、その次はつぶらな瞳かもしれない。そこまで大量に作るつもりはないので、きっとそのくらいで事足りるだろう。


 全部で5世帯くらい作っておけば、暫くは大丈夫だろう。ビー族用に派遣したラピスから、人員要請が来たら、もう一体追加だな。と、これからの予定をざっと考えた。


 「改めて地下都市の構造を確認しておくか」


 第一弾の教育が終了するまでは、まだ時間がある。新井さんたちの頑張り次第ではあるが。その時間を有効活用すべく、現時点での地下都市の利用状況を確認してみることにする。居住空間以外のところはあまりちゃんと見れてないのだ、色々とやっていて。


 「居住スペースだけで、だいぶ広いな・・・まだまだ余裕はある。畑に、一応鉱山的な素材の採れる場所もあるのか。ああ、都市構造になってるけど、ここって疑似ダンジョンみたいなもんなんだな」


 地下都市は、モンスターの出現しないダンジョンのようだった。最下層の、最奥には、ダンジョンコアのようなオーブが設置されていて、その部屋自体は隠されている。きっと、この地下都市を作ったのはシュウだろう、これだけの技術を人間が持っていたとは考えにくい。


 「秘密の趣味ってところだな・・・ロマンを感じざるを得ない」


 まだ未完成な部分もあるようだから、きっと思いつくたびに追加していったんだろうと推測する。そうこうしてる間に、滅亡しちゃってゲームオーバーと、そんなところだろうとコーマは考える。


 「今度会ったときに、聞けたら聞いておきたいなぁ、多分本人にしか理解できないようなギミックとかもありそうだし」


 なんとなく本人的には公開したくなさそうな部分を、選んで、切り離しておく。本人から聞いて、解放してもいいなら、繋ぐ、という風にしておこう。


 「まさかエロ本の保管庫とかあったりして・・・」


 流石にそれは無かった。


 「まあでも、これが疑似ダンジョンてことは、ダンジョンコアを弄れば、魚も採れるように・・・いや、これはもう養殖とかさせ、いやいや、それはまだ早い」


 とりあえず、現在利用されていない空間は結構存在するので、その一角に、池を用意し、そこへ魚を配置しておいた。シャイターン族にそのことを伝えると、食の範囲が広がると、喜んでいた。


 「独り言がうるさいにゃ」


 ずっとコーマの首回りに巻き付いて寝ていたので、服の一部と化していたヴィーアが、ぶつぶつと言いながら作業するコーマへ文句を言ってきた。起きたらこれである。


 「やっぱ猫だし、魚とか食いたいか?」


 「美味しければなんでもいいにゃ」


 「うーん、怠惰」


 「猫だから仕方ないにゃ~」


 そう、猫だから仕方ない。カリカリ気分の時もあれば、ちゅ●るしか断固として食べない時もある。そんなものなのだ、猫なので。だが、そこがいいのだそこが。


 アテにならないヴィーアの意見を聞いて、猫缶の事を思い出した。地下都市に限れば、状態保存の魔法のかかった倉庫があるので、保存食は作らずとも、食糧を保管しておくことができるが、地上に出た場合はその限りではない。移動することだってあるのだ、前にアイリーンが拾ってきたマジックバッグは、各地の遺跡と化した砦跡地やらの、地下倉庫を探さなければ見つからないという、ロストテクノロジーの産物だ。


 「地下都市を唯一の都市として、他の種族の生息地への道を切り拓くにしても、外で活動するようになったら必要になってくるよな。作り方とかは・・・どっかに本とか・・・」


 そういえば、アイリーンが大量の本を持って帰ってきていたような?

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