目覚めの時(使徒視点)
※かろうじての子の視点
光が・・・見える
でも・・・眩しく・・・ない
私はだれ?わからない
体がふわりと浮く感覚、そして上へ上へと昇っていく。
自分が誰かも分からないまま私は光の方へと吸い寄せられるように向かっていった。
声が、聞こえる気がする、とてもやさしい声。
安心して目を閉じる
そして私は意識を手放した。
「なぁ、これで後は目覚めるのを待つって事でいいのか?」
真っ暗闇の中、男の人の声が聞こえる。
「うん、体に魂が馴染むまでこの部屋で寝かせておいて大丈夫だよ」
違う男の人の声も聞こえる。
誰だか気になったけど目が開かない。からだも動かない。
石にでもなったみたいだ。
「どんな子に育つのかな、楽しみだね」
おんなのひとの声も聞こえる。やっぱりまだ目は開かない。
「この子がこの星を愛してくれるといいわね」
もうひとりのおんなのひとの声が聞こえた、とてもやさしい声だ。
そして誰かが私の頭を撫でてる気がする。
きもちいい・・・。
「ふふっ・・・ふわふわね」
さっきの女の人の声だ、撫でてくれてるのはこの人なのかな、目が開かないから
わからないけど。
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それからまいにちまいにち、やさしい声の女の人は私の頭を撫でて話しかけてくれた。
私は神の使徒になったらしい。
よくわからないけど、神様のお使いでもするんだろうか。
私が遣わされれるのはロクストたいりくっていうとこらしい。
でも、いっぱい勉強してからみたい。
男の人の声は聞こえたり聞こえなかったりで、撫でてくれるのは優しい声の女の人だけだった。
この女の人が神様なんだろうか。
そうだといいな。
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「うん、結構魂が定着してきたみたいだ、もうすぐ目覚めるんじゃないかな?」
男の人の声が聞こえる。
目を開けようとすると、うっすらと光が差し込んでくる気がした。
「あ、目覚めそうよ!コーマは?」
優しい声の女の人もいるみたいだ、はやく目を開けないと。
撫でてくれてありがとうって言わなきゃ。
「・・・・寝坊してくるくさい・・・」
溜息つきながら男の人が言う。
コーマって人が寝坊しててここにいないみたい、別にいいけど。
少しずつ少しずつ目を開けていく、真っ白な天井が見える。
もう少し、もう少しで優しい声の女の人の姿が見える・・・!
私を覗き込む人がうっすらと見えてきた。
とても綺麗な女の人・・・、この人が神様だ。
「かみ・・・さま・・・」
神様は私の手を握った、とても暖かい。
やっと、やっと神様の事、見れた。
優しい優しい神様、私は貴方の使徒になるのですね。
「いつも・・・撫でてくれて・・・ありがとうございました、かみさま・・・」
やっと言えた。
いつも優しく話しかけてくれて、撫でてくれて
ありがとうございます・・・!
そして私はゆっくりと体を起こす。
ずっと寝ていたせいか、体がギシギシと軋んでる。
すっかり覚醒した目を神様に向けて、握られた手を握り返し私は宣言する。
「これから末永く宜しくお願いします、私の神様」
宣言した瞬間、男の人が吹き出していた、失礼な。
吹き出したらずっとお腹を抱えてピクピクしてる、笑いすぎではないだろうか。
「え・・・と、よろしくね?」
眉を下げて少し戸惑ったように笑いかけてくださった神様。
後ろで笑ってる男の人に困ってるんだろうか?
ああ、そういえば私には名前がない、今から神様がくれるんだろうか?
「神様、私に名前を下さい。」
ズイ、と身を前に乗り出して神様にお願いしてみる。
相変わらず男の人は笑ったままで、もはや痙攣を起こしている。
いくらなんでも笑いすぎだと思う。
「いや~悪い悪い、ちょっと居眠りしてたわ・・・って起きてるじゃん!俺の使徒!」
もう一人の男の人がきた、眠そう。
ん?ちょっと待って、俺の使徒?俺の使徒って言ったの?
男の人が慌てた様子で駆け寄ってくる
体中の毛が逆立つ感じがして、私は思わず
「フーーーーーッ!」
全力で威嚇した。
笑ってた男の人がまた吹き出した、これ以上笑ったら死んじゃうんじゃないの?
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私は、この寝坊した男の人の使徒ということが分かった。
ショックだ・・・。
この白い部屋の中で、私は色々な説明を受けた、笑いまくってた男の人がギルという神様らしい。
優しい優しい綺麗な女の神様はアイリーン様というらしい、名前まで美しい。
そして私が本来使えるべきこの男はコーマというらしい。
ここに浮かんでる丸い奴が私が遣わされる惑星トリルで
その中のロクスト大陸というところがコーマの担当する大陸らしい・・・。
アイリーン様の担当は別の大陸なんだ・・・残念。
同じ惑星を司る仲間として仲良くしてくださいって言われちゃった、全力で仲良くします。
私の名前はネルになった。
コーマが考えてきた名前はなんだかゴツゴツしてるっていうか、変な名前ばっかりだったから
ずっと首を横に振り続けたら、アイリーン様が「ネルってどうかしら」って言ってくださったので
即首を縦に振った。
後ろでコーマが床に手をついて崩れ落ちてたけど、どうでもいいわ。
こうして、私の使徒としての人生が始まった。




