おこさまたち
「いや~絶景かな絶景かな」
わらわらとちびっ子たちが駆け回っている。そしてひじょーにかわいい。これはもう、ヤバイレベルで可愛い。軽く語彙力が粉砕された。
コーマが子供たちを眺めながら心の中は非常事態になっている。ビー族の子供達、総勢20名がうごうごと動き回り、シャリオン管理室は大賑わいになっている。
子供たちの世話をするために呼んだラピス1体では、ちょっと手が足りなそうだったので、もう1体追加した。
「実際子守をしてるところ、初めて見たけど、中々これは・・・」
ゆるキャラに群がる子供。第一印象はこれなのだが、ほっこりハートフルな様子を見ていると、癒される。可愛くないサージェスとかギルとかを見ていただけに、本当に癒される。
「ここでずっとこうしていたい・・・」
ダメです。
「子守用にラピスも派遣しておくか・・・? あ、でもバナナねえな・・・何か代用品でも考えるか」
シャリオンもトリルも、土にはそこまで違いはないはずだから、育てるのが容易な食用植物を考えてみる。そもそも、人間が食べるわけではないから、そこまで食用に拘らなくてもいいのだが。
「れんげとか・・・それはミツバチか。まあでも、ラピスれんげとかって名前にしておいて、軽く育つように設定したら別に問題はないな」
そうと決まれば、早速生成していく。見た目はモロにれんげの花であるが、ラピスが好んで食べる花、と設定しておく。シャリオンのどこでも育てる事が可能。
「よし、これで・・・派遣するラピスの設定を書き換えてと」
トリルバナナからラピスれんげに食べ物を変えておいて、ラピス達に種を渡しておく。
「地下都市の畑を間借りしてもいいし、地上に植えてもいい、その辺は実際に下に降りてみてから考えるか?」
「ご主神様のお望み通りに」
「いやそんな重たい返事はノーサンキューだぞ」
相変わらず忠誠心が重い。
それはさておいて、総勢20名にもなるおチビさん達を連れて行くとなると、このままでは迷子が発生しかねない。子供は予想以上に動き回るので。
「とりあえずリアカーでいいか」
パパっとリアカーを創りだし、子供たちを乗せるようにラピス達に指示を出す。既に寝落ちしている子も何名か出ているので、すんなりと全員乗車完了。
地下都市に着くと、早速シャイターン族が出迎えてくれる。
「コーマ様、ようこそいらっしゃいました。そちらのお子様たちは?」
「新しく俺が創った種族で、ビー族という。土魔法に特化した人族寄りの獣人だ、地上部分に町を作る計画は聞いたか? そのための人員だ。まだ子供だから、これから育てていく事になる、ちょっと気の長い計画にはなるが、構わないな?」
「勿論でございます、コーマ様のお望みどおりに」
こいつらも基本的に忠誠心が重い。
「んで、子守専用の魔物であるラピスラズリを2体ここに派遣しておくから、子守まではしなくても大丈夫だが、この子達に建築魔法を教えてやって欲しい」
「承知いたしました、ドワーフさんに協力してもらって、私共もついでに習得します」
「おう、使えるやつが多くなる分には全然構わないからいいぞ。家をなんとかできるようになったら、子供たちは極力地上で育ててやってくれ」
「立派なシャリオン民に育て上げます事をお約束申し上げます」
「あと、困った事や、やりたい事とかあればいつでも連絡して構わないからな」
「畏れ多い事でございます」
「シャリオンの発展のためだ、神でもなんでも利用してくれ」
頭を下げているシャイターン族の頭をぽんぽんと軽くたたき、ラピス達にも子供たちを宜しくと頼み、コーマは管理室へと戻った。
「なんか、短時間しかいなかったのに、凄く寂しく感じてしまうな・・・俺も年か」
20代で、既に年寄り臭いセリフが出てくるあたり、コーマはおっさん臭い。意外と寂しがり屋なのである、自覚はないが。
「ま、いいか。さて、地上に出るとして、地下都市の上にあった町はどの規模だったか一応確認しておくか」
気持ちを切り替えて、元々あった町の規模を瓦礫などから見ておく。アイリーン達が来た時に多少瓦礫は片づけた・・・というより、寄せただけだが、その他の箇所はまだまだ瓦礫で埋め尽くされている。長い間放置されていたせいもあるが、元々破壊しつくされたせいもある。余程激しくやられたんだろう。
地下都市があの規模だったので、地上部分も相当発展していたとコーマは見ている。面積を見るに、かなりの規模の都市だったようだ。魔法使いが多くいたのであろう、この都市は、なんとかドーム何個分とかでは言い表せない程度の広さだった。これを全部片づけるのは、少々骨が折れる事だろう。
「瓦礫の撤去くらいサービスしとくか?」
急ぎではないから、そこまでしなくてもいいようにも思うのだが、現時点では、かなり人手が少ないため、瓦礫の撤去に手が回るようになるのは、当分先になってしまう。
「石の素材と木の素材を分けて・・・金属も反応があるからそれも分けておこう」
結局やるらしい。




