建築系種族を創ろう
「とりあえず、いきなり外に出て何もない所から始めるっていうのも何だし、それまでの下地作りは、誰かに任せようかと思ってる」
今現在も、サージェスが色んな種族に交渉中であるし、人手が足りないなら、創ればいい。
いきなり降ってわいた案に、その場に居た者達は戸惑いを隠せず、ぽかんとコーマを眺めている。
「そうだな、とりあえず何か新しい種族を創るとしたら、どういう感じのが仲良くなれそうだ?」
中心になってほしい人間に意見を聞いてみる、だが思考が追い付いてないようで、中々うまく言葉にできないでいるようだった。
「えっと・・・あの」
「あー、すまん、いきなり言われても困るよな。んー、今いない種族で、前にいた種族でもいいけど、お前らが仲良くしてたやつらってどんな感じだったんだ?」
「あ、そ、そうですね・・・獣人なんかは仲良くしてました。獣人にも色々いましたし、昔は差別とかもあったみたいですけど、今はそんなことないと思いますし」
差別をしていたのはもうずっと昔の事だ。それに、差別をするような人間達はとっくの昔にこの世に居ない。生き残り組だって、そんな差別をするような人間は居ないと思う。
「獣人か、とりあえずどの種類の獣人がいたのか教えてくれるか? 可能な限りで創るし」
「そうですね、あと創るのであれば、大人からではなく子供からでお願いできますか?」
「可能だが、理由を聞いても?」
「ここに来てくれる方々は皆気は優しく、問題を起こすような方々はおられません、ですが、既に成熟した様子なのに、どこか無垢というか・・・子供が大人の格好をしているような違和感があるのです」
種族を作り替え、新しい人生を歩み始めた奴らに、そんな違和感を持たれているとは・・・。コーマもまだまだ未熟だなと、そこは少し反省した。
「なるほどなぁ、既存の種族を作り替えるにしろ、その辺は気を遣わないといけないな。となると、教育機関も必要になって来るな・・・、大ぶろしきはあまり広げたくないが、これはさっさとやってしまった方が良さそうだ」
「獣人の子供達の活動場所は地上で構いませんが、帰る家は地下都市にしていただくと、宜しいかと思います。まだまだ地上で一から十までというには、できないでしょうから」
「そうだな、子供達と、大人達の共同で、地下都市の上部に都市を建設させよう、都市計画を練るのが得意なやつはいるか?」
「建設などは、ドワーフさん達が結構得意にしてましたね、あとはシャイターンの方々が補佐に回って頂ければ、都市の方はどうにかなると思います、建設に関しては、人類が滅亡するまでは、魔法との併用で建てていたと記憶しています。獣人の子供達を創るのであれば、素材になる木材などを採集するのが得意な種族をまず創られるのが良いかと思います」
魔法との併用というのは、素材となる木材や石材、それに土などを用意して、それを魔法で加工し、組み立てていくとのこと。現在のトリルの建築方法もそれに近いものはある。
だが、当時の建築を担っていた魔法使いは既に居ないし、その資料も残ってはいないだろう。
「建築系の魔法の資料を探して、それを使える者を創らないといかんな・・・、いやでも新しく生まれ変わったシャリオンの建築方法を確立してしまえばいいのか」
コーマ達の話を聞いたシャイターン族の誰かが、ドワーフを呼びに行ってくれたらしく、ドワーフが重そうな体をどてどてと走らせて、こちらへ向かってきた。
「お、いいとこにきた、ちょっと建築について聞きたいんだが」
「コーマ様がお呼びと聞いてやってきましたが、建築に関してでしたか。現在は地下都市に住んでいるので、建築に関してはまったく触ってなかったのですが」
「ああ、地上にちょっと町でも作るかなって思って、以前の建築魔法なんかは使えるのか?」
「儂らは間取りなんかを考えたり、建築方法を指示するほうで、実際に実行するのは魔法使い達でしたなぁ、小遣い稼ぎ感覚でやっていたと記憶しています」
「なるほど、その魔法っていうのは、使えるやつらは今存在しているのか?」
「いや、生き残り組にはその魔法を使えるのは居ないと・・・おそらくですが」
「まあ急ぎじゃないから・・・その指示を魔法の得意な種族に施して、習得させるのは可能か?」
シャイターン族も魔法は得意だし、キュバス族もまあできなくもない。魔法の得意な種族を創ってしまえば、楽でいいのだが、そう簡単に決めていいようなものでもないと、思う。
「そうですなぁ・・・指導するだけなら可能です、以前あったものを完全に再現させるのは無理ですが」
「それは別に構わない、新生シャリオンでの建築魔法ってことで、今からのオリジナルってことにすりゃいい」
となると、子供の獣人族を創るのがいいか、とコーマは考える。
「あ、じゃあ建築系の魔法が得意な獣人族っていたか?」
「獣人達は軒並み魔法には向きませんでしたからなぁ・・・」
「あ、やっぱりそういう設定になってたのか・・・」
意外と難航しそうだと、コーマは思った。




