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トリルの車窓から~その3~

 朝から始まった列車の旅も、あっという間に数時間が経過して、車窓には夕陽が映し出されていて、中々の眺めが堪能できる。夕飯は再び食堂車で食べれるようになっていて、これまたディナープレートなるものがメニューにあったので迷わずそれをチョイスした。


 各地で夕飯として食べられている物をちょっとずつプレートに盛り付けたものだ。多分これが一番人気なんだろうなーと思いながら、舌鼓を打つ。


 夕暮れが近づく頃に停車した町では、新しい車両が連結されていた。多分そのうちその車両の説明もアナウンスされるんだろうなーと思いつつ、その瞬間を待っていた。


 『これより、寝台車両を解放致します。ご利用になる方はそちらへ移動をお願い致します』


 寝台列車キター! 一応夜間も停車する町はあるらしいんだけど、やっぱ列車旅の醍醐味といえば寝台車よねぇ! シュウは良く分かってる・・・鉄道マニアだったりしたのかしら?


 アナウンスが終わると、寝台車を利用すると思われる人たちが移動を始めていた。その移動が落ち着いてから、私と肩に乗った鳥のシエルは移動を開始する。こういうのは慌てずに落ち着いてから移動する派なのだ。

 コンサートとかで我先に帰ろうとする人とかいるけど、あれなんでなんだろうね? 私は結構余韻を楽しみながら、じっくり帰りたいタイプなので、時間には余裕を持って予定を立てる。早く帰らないといけないような事態を作らないように心掛ける。


 まあ、それも今では遠い昔よね・・・なんて思いながらも、寝台車へ歩みを進める。寝台車の受付では、シュウから既に話が通っているようで、普通に案内されてしまった。や、まあそれのほうが有難いけどね、一応お忍びだし。


 案内されたのは、個室。二人部屋だった。ああ、ここならシエルが人型に戻っても問題ないかも! シュウったら気が利くわねぇ~! 案内してくれた人にお礼を言って、一応鍵をかけておく。ラプールにそんな悪い事をするような人はいないけど、一応嗜みとして?


 個室には、ベッドが二つあって、入り口を真ん中として左右に一つずつといった並べ方。真ん中の窓側には机があって、よくホテルにあるお茶セットみたいなのが置いてあった。


 「そういえば、お風呂とかどうするんだろう?」


 ベッドの足元にはハンガーがあって、そこに上着を掛けるようになっている。ベッドの上には、荷物をしまっておける棚が設置されている。特にお風呂とかはアナウンスもなかったように思えるし、どこかの町でお風呂にでも入らせてもらえるのかなぁ?

 トイレは共同みたいで、車両の前後に設置されているというのは案内してくれた人から聞いたけども、お風呂の事は言ってなかったなぁ。


 ふと机を見ると、お茶セットの横に、ホテルにありがちな施設の説明みたいなアレっぽいのが置いてあった。


 寝台車両の案内・・・お茶セットの使い方────2ページ目

        ・・・トイレの場所───────3ページ目

        ・・・お風呂について──────4ページ目


 あ、あった! お風呂! パラパラッと捲ってお風呂の項目をみてみる。


 現在開発中のため、本日はお風呂をご用意できておりませんが、体を綺麗にする装置を各お部屋にご用意しておりますので、そちらのご利用をお願いいたします。


 ほう・・・! いずれできるのか・・・お風呂車両。完成したら、入らせてもらおうかなっ!


 あ、でもその代わりの体を綺麗にする装置の説明を見ておかないと。置き場所は机の下・・・あ、あった。これね、これに手を触れて、魔力を少しだけ注ぐと、発動します、と。


 手順通りに魔力を少しだけ注ぐと、なんだか体がすっきりした。おぉ・・・これがクリーンの魔法? なのかな? い、一応鑑定しておこうかな? これ凄い便利よね。冒険者的にだけど。


 やっぱりクリーンの魔法で正解だった。服の外も中も綺麗にしてくれるなんて、憎い効果が付いているじゃないの。ずぼらな人が大喜びしそうだわ。


 用意されているお茶も、何種類かあって、ちゃんとティーバッグになっていた。芸が細かい。湯沸かしのポットまで作ってあるのは、本当になんというか、細かいところまで拘りたい日本人気質が滅茶苦茶発揮されているというか。


 このポットはシンプルなようでいて、かなりの技術が使われている。いちいち水を注がなくても、水のボタンを押せば一定のところまで水が自動的に入る。湯沸かしボタンもちゃんとついていて、それで沸かしてくれる。ここまでは割と普通っぽいけども、使い終わって、余っている状態だと、排水機能がついているのだ。

 そして、よく湯沸かしポットといえば、上部分と下部分に分かれているけど、この下の部分はちゃんと動力部分に繋がっていて、そこから魔力の提供を受けている。備え付けなのだ。まあ、持ち帰ったりする不届きものはいないけどね。


 細かい所で、拘りと技術を見てしまったわ・・・。布団もふわふわだし、揺れはないし、ホテルに居るみたいで、なんだかいい気分!


 「母様が嬉しそうで何よりです、来てよかったですね」


 人型にいつの間にか戻ったシエルが、嬉しそうに微笑んだ。



 この微笑みプライスレス。

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