フェンリル部隊の初仕事
「なんか変な感じだ・・・」
今、私の目の前には可愛らしいフェンリルの子供がいる。その毛並みはツヤツヤで銀色に輝いていて、碧色の瞳はキラキラと煌めいている。つまりかわいい。
ウィードから生まれた宝珠を元に作っただけあって、ウィードの記憶も受け継がれているので、シャリオンとここにウィードが2人いるような感じ。魂を分けた状態なのだろうか、もしかしたら同じ魂だから通信もできたりして・・・?
小さな自分の体をチェックしながら、シルフィーは何やら黙って考え事をしているようだった。子犬状態なのでかなり可愛らしい。モフりたいけど、多分今やると叱られる気がする。
「シャリオンのウィードから伝言、やっとかよ、だってさ」
「!? ウィードと話できるの?」
やはり通信可能なのか。便利ね・・・その魂分けるとか器用な技術。
「ウィードの魂の片割れにはなるが、ウィードではない、記憶もあるが、これからはシルフィーとして生きていくから自我は別になる。通信は普通に思念でできるみたいだ、シャリオンがアイリーンのモノになったからだとは思う」
双子みたいなもんかな? まあ確かにウィード本人よりは、見た目もそうだけど、喋り方も可愛げがある気がする、気がするだけだが。
「そっかー、じゃあ連絡とりたい時はシルフィーに頼めばいいんだね!」
「いやそこは本人と取ってやれよ・・・」
子犬、もとい、子フェンリルにジト目で見られてしまう。確かに、連絡は本人と取った方がよさそうだけど、ここから直接取るのは無理そげなんだよねえ。
「あっちに行けたら私が直接とるけども、いけないときはお願いね?」
「女神にお願いされたら聞くさ、今の俺は使徒なんだから」
そういえばそうだった。元々シエルの部下が欲しくて使徒を増やそうとしたんだった。ウィードの子供みたいな可愛らしい子が目の前にいて、色々と吹っ飛んでしまった。
しかし使徒にしては態度がデカすぎやしませんか。いいんだけどさ。
量産型のフェンリル達は皆並んでおすわりして待機している。こっちはお行儀がいいみたいだ。
「なんか失礼な事考えてるだろ」
「べ、べつに~? フェンリルちゃん達は大人しくおすわりできてていい子だね~?」
誤魔化すために量産型の方へと駆け寄り、頭を撫でてあげると、尻尾がちぎれるんじゃないかって位ブンブン振られていた。しかし、返答は真面目だったし、顔もキリッとしていた。体は正直だけど。
そんなこんなでシルフィー創ったりしてたら、ぽつぽつと旗が立っているのか、ピコンピコンと音が鳴っている。お知らせ機能マジ便利だね。
というか、バナナの性能を調整したっていうのに、物凄い勢いで完成してるのどういうことなんだろう・・・。ラプールのみんな頑張りすぎじゃないのかな?
と、とりあえず皆で手分けして、出来上がった所にラピスラズリ達を配置しに行ってもらおう。完成した数を見ると、コーマに追加で送って貰う事は決定だね。
「じゃあ初仕事してもらおうかな、シルフィーいける?」
「はいよ、任せられた」
うーん、軽口を叩くところはウィードだね。生まれたばかりとはいえ、狼達の王の分身だから心強い。
「量産型の子達も大丈夫なのかな?」
「あーそれは、一度見学させといて次から個別で当たらせるから心配しなくていい」
「分かった、そっちは任せちゃうわね、シエルもそれでいい?」
「はい、こちらにも半分見学に来てもらいましょうか」
というわけで、手分けして作業に当たってもらう事になった。量産型の子達は姿を見えなくしつつ、お手本を見学するようだ。その後は各自で動けるようにしてくれるらしい。頼もしい使徒達が出来て、私も満足である。
待機室から直接行くようで、シエルとシルフィーは子分たちを引き連れて行った。先程まではわらわらとこの部屋の中に居た子達がきれいさっぱり居なくなると、なんだか部屋が広くなったようにも感じられる。ま、白い部屋だから壁とかないんだけども。
「コーマ、思ったより早く完成しそうだから追加送ってもらってもいい?」
『おー? いいぞ、行けるやつら全部送るでいいか?』
「そうね、こちらも待機室作ったし、全員送ってもらっても構わないわよ」
そんなやり取りの後、大勢のラピスラズリ達がやってきたので、多少引いたけど、待機室に移ってもらった。あの大勢が一斉に跪くのって、なんか怖いよね・・・見た目がゆるいから余計になんか違和感が凄いし。
ラピスラズリを送り込んだ第一号の保育園の様子を見てみると、前もって完成後は預けると決まっていた子達が早速来ているようだった。ラピスラズリを初めて見た子達は、最初は驚いていたようだったけど、直ぐに慣れたみたい。子供の順応性が高すぎる。
バナナも好評のようで、出だしとしては、いいんじゃないかな? といった感じ。園庭で遊んでいる子を見守るラピスラズリ、中で遊ぶ子達やお昼寝する子達を見守るラピスラズリ。うん、作業分担も問題はないようだ。
ちゃんと喋りも優し気な感じに矯正されているっぽかった。
ここでもそうして欲しいものだ。




