農業の女神の配達
コーマからは定期的に連絡が来る。今はラピスラズリの最初の20体が訓練を終えたところだと、メールで報告がきてた。え、訓練・・・? 教育じゃなくて訓練?
あのゆるゆるな見た目から訓練という文字が結びつかないんだけど? シャリオンの天界は一体どうなっているんだろうか・・・。気になる。
「これから最初の20体がそれぞれ20体ずつを率いてくれるらしいわよ」
「そうですか、ならばもうすぐ保育士は用意できるのですね」
「うんうん、シュミカの方も順調に株分けが進んでるみたい」
各方面からの報告をまとめると、こちらで出来る事はほとんど完了したと思っていいわね。ラプールとロクストの各町の代表者を導いておいたので、建設予定地の選定などはすぐさま進められ、今は建物を建設中だ。
建物の方の文化も以前よりは進んできていて、道路工事で使っていた魔法を応用した工法が取り入れられている。中々に頑丈な建物が建設可能になっているのだ。
私の感覚だと少し前までは、石造りが中心で、それがやっと中世くらいに進化したって感じだったのが、鉄筋は入ってないものの、コンクリ系住宅といった感じの強度のある住宅が立ち並んでいるのだ。勿論木材も使われている。
ただちょっと、殺風景というか、彩りはそこまで豊かではないのよね。そこらへんは追々良くなっていけばいいなぁとは思ってる。
トリルの文化は基本的に飾り気がない。効率的に生きている人々はそこまで見た目を気にしない感じで、機能的であればそれでよいみたいなとこがかなりある。
以前は一世帯で一つの家だったのが、区画整理の時にできた集合住宅みたいなのも増えだしている。人口が増えてきた証拠でもあるんだけど。集合住宅と言っても、メゾネットの長屋みたいな?
マンションみたいなのは、今のところまだ出てきてはないようだ。
保育園の建物も、基本的には平屋建てだ。各町でそれぞれデザインは考えて建ててるみたいで、ちょっとずつ違いもあるようだけど、そこまで劇的に奇抜なデザインを選んだところはないように見える。
「ラピスラズリたちを派遣する時どうすればいいかを考えてなかったわ・・・!」
「っ・・・! そういえばそうでしたね、いきなり現れたら流石に住民が驚きますよね・・・」
シエルもうっかりすることがあるんだね! と、そうじゃない、今はラピスラズリ達をどうやって派遣させるかだわ。
「とりあえず建物が完成しないとだから、完成したら旗でも立ててもらう? その町から順番に派遣して・・・」
一斉にやると、それはそれで大変な事になりそうだから、順番の方がいいよね? バナナも植えないといけないしね!
「そうですね、仕様書には記しておきましたが、ラピスラズリ達のエネルギー源はトリルバナナの皮ですから、バナナの木が植えられていないところには派遣できませんし」
「あっ、そうだった! シュミカ! シュミカ今大丈夫?」
『はいはーい? どしたの~?』
「バナナの進捗はどう?」
『とりあえず発育が凄くいいから増やすのめっちゃ簡単だよ~! いつでもどうぞって感じ! 順番にはこんでこーか?』
「配達までやってくれるの? 凄く有難いけど!」
『配達ついでに、株分けの仕方も伝授しとくよー? どこからいけばいい?』
「あらやだシュミカったら有能! とりあえず、どこからでもいいけど・・・はしっこから順番にしていったほうが間違いがないとは思う」
『ん~そうだねえ、とびとびでやると分かんなくなりそうだもんね! じゃあそうする~』
「大変だとは思うけど、頑張ってね! ありがと~! あ、ついでに建物完成したら旗でも立てておいてって伝えといて!」
『らじゃった~! シュミカ様に任せておきなさい~』
早速やってくれるとは! シュミカは農業の神になってから、かなり仕事への意欲がもりもり沸いているらしい。やる気があるのは良い事だ。本当なら私も手伝いたいところではあるんだけど、それをやると大騒ぎになってしまうので、ここはぐっとこらえてシュミカに任せるとしよう。
進捗状況がこちらでも確認できるようにしておこうかな? というかそんなことできるのかな?
保育園建設地を全部マーキングしておいて・・・項目はバナナと旗にして、バナナが植え終われば黄色、旗が立てられたら赤をそれぞれ点灯させるように、と頭の中で願うと、早速マーキングがされた。そんなに早く植え終わらないので、まだ点灯はしていないが、多分これで大丈夫。
準備完了になったところから順番にラピスラズリ達を配置していこう。
「順番に派遣するのであれば、私が都度連れて行きましょうか?」
「シエルが忙しすぎる事にならない?」
「大丈夫ですよ、私は神の使徒ですから、これくらいの事はこなせて当然です」
むんっと、力こぶを作る動作をして見せるシエルが、最高に可愛らしいんだけど? 絶妙に可愛いドヤ顔も頂いてしまったし!
「じゃあシエルに任せちゃう!」
「はい、任されました」
そう言って、シエルは以前とは違うにこやかな笑みを私に向けた。
尊い。




