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ヴィーア

 三毛猫は首を傾げている、なぜ自分だけが別の場所に連れて来られたのかが理解できないからだ。思考するだけの知能は与えられているが、今の状況を把握できるだけの知識はまだない。


 「にゃんこが悩んでる姿もいいものだ」


 とりあえず説明も何もせずに、三毛猫が今置かれている状況を把握しようと悩んでいる姿を愛でているコーマだった。


 「なーぅ・・・」


 「ああ、すまんすまん。俺は人間時代からずっと猫が飼いたかったんだ、ただそれだけ」


 「????????」


 「その中でも三毛猫が好きだから、お前をここに連れてきた。特に何か使命とかそんなのがあるわけじゃないんだ、俺が愛でたいだけ、おーけー?」


 「なう・・・」


 良く分からないが分かった。そんな様子だ。


 「名前決めないとな・・・普通にミケちゃんでもいいんだが、元ヴァンパイアだから・・・ヴィーアとかどうだ?」


 「にゃぁん」


 なんとなく肯定的に聞こえたので、採用することにした。シャリオンでは魔猫族となっているが、ここに連れてきた時点で神猫族にステータスが変化していた。コーマが設定したわけではないが、自動的にそうなったのだ。


 「これからまた、色々な種族と交渉つーか、話をしに行くことになるが、お前はどうしたい? ここで待ってるか?」


 ヴィーアは少し考えたように俯いて、小さく鳴くと、コーマの肩にひょいっと飛び乗った。傍にいるという選択をしたようだ。懐いてくれた事に嬉しさを覚えたコーマは、肩の上のヴィーアを優しく撫でる。


 魔猫と言っても、基本的には普通の猫とほとんど変わらない。多少知能があったり魔力があったりするだけだが、神猫となったヴィーアは更にそれを上回る能力を手に入れていた。そのうち多分喋りだしてくるだろう。


 「じゃあ、次の種族を見てみるか。俺とヴィーアの初めての共同作業だな!」


 コーマが若干気持ち悪い。


 上位に居る種族は大体が人間が居なくなったことによって割を食った種族だ。次からは普通に数を減らしつつある種族になるので、数もこれまでとは違いそれなりに多い。

 これからは作り替えるというよりは、行動範囲を広げてもらうといった方法も考えなくてはならない。現在は結界を種族ごとで張っているといった状態なので、まずはその結界を解いてもらう事から始めなくては。


 諸悪の根源であった悪魔族ももう居ないし、夜叉鵺も小さくなってトリルでのんびりと生活している。縄張り争いをせずに穏やかに過ごせば結界も必要ないと、コーマは考える。そこをちゃんと伝える事ができればいいのだが。

 勿論種族の作り替えも可能で、希望するなら実行する事も伝える。同一の種族ではないが、同系統で滅びてしまった種を復活させることも視野にいれての交渉をコーマは考えていた。現時点で存在する種族は数を減らし過ぎているのだ。シャリオンという広大な大地が広がる星の大部分が無駄になっている。


 「まあでもヤバ目の奴らは今の時点では居なくなったな、後は地道にやってくしかないな」


 現状確認を済ませると、一旦休憩する余裕がありそうだと、ヴィーアを肩から膝の上に降ろし、その毛並みを堪能する。ヴィーアは気持ちよさそうに喉を鳴らしながら、微睡んでいる。


 「ラピス第一部隊の訓練は一旦完了したぞ、代行殿」


 まったりし始めていたのに、サージェス軍曹が戻ってきてしまった。それに続いて精悍な顔つきを・・・しようとしている空気はあるが、基本的にゆるい顔をしたラピスラズリ達が現れる。一糸乱れぬその様子に眠りかけていたヴィーアも驚きのあまり毛が逆立っていた。


 「お、おう・・・じゃあ次のラピスラズリを作ってもいいわけだな?」


 「問題ない、一体に対して20体を訓練させる、そのように数を揃えて欲しい」


 「今回は使徒適性をちょっと下げるからな?」


 「? まあ別に構わんが」


 使徒適性の上位から魂を選んでしまったがために、この軍隊じみたゆるキャラ部隊が出来上がった事を失敗ととらえていたのはコーマだけだったらしい。サージェス的には特に問題ないと考えているようだった。温度差が酷い。


 4以上としていたものを、3のみに検索の設定をし直すと、それなりの数が選びだされる。今回はその数も多い為、上から無作為に選びだす。


 「あー、サージェスは勉強部屋を増やしといてくれ」


 「承知した、任せておけ」


 器を作り、魂を定着させる作業を20体、それを20回こなさないといけない。流れ作業のようになってしまうのは仕方ないのだが、前回のような暑苦しい場面を20回見なければならないのかと考えると、ちょっとだけ背筋に冷たいものを感じてしまうコーマだった。


 「よろしくです~ご主神様~」


 相変わらずのご主神様呼びだが、前回よりは多少緩い気がする。多分、きっと緩い。なんとなく間延びした感じの声がなんとも緩い気がするが、これが教育という名の洗脳を受けて、どう変化するかは考えたくなかった。


 「じゃ、とりあえず勉強部屋へ」


 そう促すと、訓練を終えたラピスラズリ第一部隊の一体がススッと前に出て、新しく生まれた20体を先導していった。


 動きに無駄が一切無かったのがちょっとだけ怖かった。

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