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引きこもりの吸血鬼

 生まれ変わらせたミノタウロス達の種族名は何のひねりもなくミノ族となった。流れる様な作業で生まれ変わらせたミノ族を地下都市に預け、ミノの間というなんとも美味しそうな名前が掲げられた部屋に元ダンジョンオーブを設置。

 おっとり系たわわちゃんのミノ族達はきっと地下都市でもうまくやっていくだろう。(丸投げ)


 管理室に戻ったコーマは、どでかい溜息を一つついて、その場に座り込んだ。


 「なんか・・・精神的に疲れたわ・・・」


 作業的には前回とほぼ変わらないはずなのに、なぜか精神がごりごりと削られた感じがする。神の体とはいえ、心は一般庶民のままなので、敬われるのにも慣れないが、何よりも理想がバッキバキに壊された事によるダメージが大きい。

 強い敵にロマンを感じるタイプだったので。


 しかし、この種族を救済する作業はまだまだ始まったばかりなのである。救済と銘うってはいるが、シャリオンの円滑な運営をするための土台作りともいえる。一括でパパっとやってのけたい気持ちは今でも心の隅っこにあるのだが、アイリーンの代理としてここにいるため、そのような勝手な事はできないし、したくない。


 「まあ、きっちりやらないとな・・・」


 体は疲れてはいないので、心の傷をそっと撫ででおく。理想と現実は違うもの、と自分に言い聞かせて心を奮い立たせるのだ。


 別の種族を担当しているギルはまだ戻ってきてはいない。サージェスの軍事(?)訓練もまだ終わっていないようだ。コーマは次の種族の情報を見てみる。


 「これもまたなんか・・・いや、まだ会うまでは分からない」


 次の種族はヴァンパイアだった。現在はどうなっているかは不明ではあるが、基本情報的には、気位が高く見目は美しいとある。

 人間を吸血し、その眷属を増やしてその人口を維持していた特性を見るに、これもまた人間が居なくなった事によって眷属を増やせずに数を徐々に減らしていると見ていいだろう。


 動物や他の魔物を眷属にすることはできるのだろうが、それでは種の維持はできない。その問題を解決することができなければならないのだ。

 だがそれは、ヴァンパイアとして生きたいという前提があっての話だ。全く新しい種族となり、他の種族と交わって血を薄める事が受け入れることが出来れば、その前提は崩れる。


 「とりあえず話を聞いてみるか・・・」


 ヴァンパイアの生き残りがいる地点へと向かう、そこには古びた城が建っている。城は経年劣化でぼろぼろになっており、夢魔たちのいた洋館のように状態保存の魔法はかけられていないようだった。

 建っているのも不思議なほどあらゆる箇所が朽ちかけている。こんな場所に本当にヴァンパイアが住んでいるのだろうか? イメージで言うなら貴族っぽい、華やかな衣装に身を包み、その美しさをひけらかしている。そんなところだろうか?


 古びた城の前に立ってみると、より一層そのオンボロさが目に入る。きっと以前は荘厳なお城だったのだろう。今では扉も半分壊れていて半分も動かせばすぐさま崩れ落ちそうだ。


 「廃墟じゃねえか」


 その一言に尽きるのだった。


 この中で20名ほどのヴァンパイアが住んでいるとは到底思えない、というか思いたくない。小声でお邪魔しますと言いながら城の中へと足を踏み入れる。


 広いホールも誇りに塗れていて、一体どれだけの長い間掃除していないのか・・・、ここにいては神の体にも影響があるんじゃないかという心配が沸き起こる程度には汚い。


 「ちょっとこれは・・・埃だけでも綺麗にしとこ」


 元々綺麗好きというわけでもないが、とてもじゃないが耐えれなかった。日本人は綺麗好き、と言いたいわけではない。汚すぎるのだ。

 コーマが手を翳すと、目に見えている範囲の埃が全て取り除かれ、普通の朽ちた城へと多少ランクアップした。朽ちそうなのには変わりないのだが。


 コーマ的には目に見えている範囲の掃除だったのだが、やがて人の声とおぼしき声が聞こえ始める。


 「なんだ、いきなり綺麗になったぞ!」

 「うおお、ベッドが綺麗になった!」

 「久しぶりに棺から外に出れた!」


 なんとなく、今回も理想は捨てておいた方が良さそうだと確信するコーマであった。やがて声はコーマの元へと近づいてくる。ぞろぞろと現れたヴァンパイア達は、一言で言うと・・・汚い。


 「うわぁ・・・」


 コーマもドン引きである。服はボロボロで薄汚れているを通り越して滅茶苦茶に汚い。髪の毛もカッピカピになっていて、ツヤどころの話ではない。炭鉱の奴隷でもこれよりマシと言いそうなほどにヴァンパイア達は汚れていた。

 彼らはきっと眷属にした人間を働かせて、自分達の身の回りの世話をさせていたのだろう。お世話する人が居なくなれば本当ならば自分でなんとかするものなのだが・・・。


 「だ、誰だ!?」


 「執事か?」


 そんなわけはない。神だ。


 「静かにしろ、俺はお前たちの世話をしに来た人間ではない、神だ。種族の存亡に関わる話をしにきたが、お前ら汚すぎるだろ! 綺麗にしてやるからそこへ並べ!」


 コーマが若干キレている。

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