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ミノタウロス

 「ここが・・・ダンジョン・・・?」


 コーマの目の前にあるのは、どう見ても洞窟だった。そしてその中を知ろうとマッピングをイメージしたところ、洞窟の中の様子が空中に示されている。


 通常ダンジョンと言われてイメージするのは洞窟の内部に入ると、洞窟とは異なる造りが成されていて、通路が複雑に入り組んでいたり、隠し部屋があったり、そして階段があって、地中深くに潜る、といったものだろう。

 しかし、コーマの目の前に表示されているのは、一本道で階段どころかボス部屋への扉的なものもない。一本道と言っても、距離としてはかなり短く、それを超えると広い空間がある、それだけだった。


 「一応これでもダンジョンっていうのか・・・」


 あからさまにテンションがだだ下がりのコーマは、とりあえず気を持ち直して中に入ろうと思ったのだった。

 マップで表示されるのは構造だけではなく、生命体がどれだけ生息しているのかといった情報もだ。管理室で見た情報通りの数がそこには示されていた。


 「おじゃましまーす」


 入口でそう言った所で、返事が返ってくるわけはないのだが、なんとなく一応言ってしまうのだ。庶民なので。

 通路は灯りなどは灯っておらず、暗い。だが、広間には灯りがあるのだろう、そこからの光で一本道はそこまで真っ暗というわけでもなかった。それだけでこの一本道の短さが伺える。


 広間に辿り着くと、各々のんびりと過ごしているミノタウロス達が居た。斧を持った個体は皆無だ。


 「おや、珍しい・・・こんなところにお客さんとは」


 その中の一体がコーマに気付いて声を掛けてくる。人を見たら襲い掛かってくるような獰猛な種族ではないらしい・・・、事前に見た情報では比較的好戦的とあったようなのだが、数百年の時を経て、性格が丸くなってしまったのだろうか?


 「どうもどうも、とりあえず怪しいものではないですよっと。この星の神様代行をしているコーマという、ここのミノさん達の代表者はいるか?」


 うさんくさすぎる挨拶にもニコニコとそうですか~と返すミノタウロス。それでいいのか門番的魔物よ。


 「ああ、代表者なんて大層なもんじゃないですが、私が一番年長者ですので代表といった事になるのでしょう。それで、何か御用ですか?」


 もう喋り方が既にミノ感が皆無だったし、魔物というカテゴリで見てみてもこの対応はおかしい。人を見なくなって久しいこの星だからなのか、野生を忘れてしまったのか。


 とりあえずコーマはキュバス族にしたように、滅亡の危機に瀕しているミノタウロス達を種族として作り替えたりすることが出来るといった説明をした。ミノタウロスの長老は、最初は驚いた様子を見せてはいたが、普通に滅びゆくのを受け入れてのんびり過ごしていたようで、そうですか、そうですかと相槌をうっていた。


 (あんまり危機感はないのか・・・)


 「ところで、ミノさん達はダンジョンで生きる魔物だよな? 情報が古くて申し訳ないが、好戦的といった表記を見たんだが、どう見てもそう見えないんだよ。何か理由でもあるのか?」


 「あ~、それは多分人間達のイメージがそうなんでしょうな、本来の姿が今の様子と思っていただいた方が宜しいかと。人間達が居た頃は、もっと深い場所で生活をしていたんですがねぇ、どこのダンジョンで生活していても人間達がやってくるんですよ・・・」


 聞けばミノさん達は体が大きいので、ボス部屋と称されるような広い部屋がある近くで生活を営む傾向があったらしく、人間達は勝手に押しかけてきて、攻撃を仕掛けてきたと。やめてほしくて抵抗をしていたら勝手に人間が死んだと。体格にもステータス的にも差があれば、まあそうなるのだ。


 「なるほど・・・人間が居なくなってからはダンジョンというか、この洞窟みたいなところで生活していたのか?」


 「人間達はダンジョンを踏破し、ダンジョンを構築していた力の源を奪っていったので、必然的に我々も住処を追われたというか」


 だいぶ昔の事なので、思い出しながらぽつりぽつりとミノ長老は言う。ミノタウロス達はダンジョンモンスターなので、ダンジョンの力の源から力を貰っていたのだが、それを人間が奪っていき、その数を減らしながらこの最後のダンジョンに辿り着いた。この洞窟は一応はダンジョンなので生活はできるのだが、一階層しかないダンジョンゆえにその力の源は微弱だ。

 そして、その微弱な力も尽きようとしていたのだ。このダンジョンが無くなれば、ミノタウロス達は自然と消滅してしまうだろうと悟っていたらしく、残された余生をのんびり過ごしていたところにコーマがやってきたという。


 「ダンジョンでしか生きられない特性を消せる。と言ったらどうする?」


 「我々が・・・外の世界でも生きられると?」


 「そうだ。今のまま、その特性だけを消す事も可能だし、全く違う種族に生まれ変わる事も可能だ」


 いつの間にか、他のミノさん達もコーマとミノ長老の周りに来て、前のめりに話を聞こうとしていた。どうやらダンジョンの外で生活できるという話が興味を引いたらしい。


 「どうせなら私は可愛い女の子になってみたいですな!」


 ミノ長老・・・?

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