魂のシステム
二人して固まってギルを凝視していると
「え、なに? 伝わらない? ピンクのあれだよ?」
「いや、それはわかるけど、とりあえず説明しろ」
なんでこっちが即座に把握するの前提で話してるんだこいつは・・・という目線をコーマから受け、やっとギルは経緯を話し始めた。
アイリーン達がトリルに保育園を作ろうと思い、トリルの中の人員を割くのではなく、保育士に向く種族を作るか、シャリオンに適した種族がいればそちらを引っ張ってくるのはどうかという話をしていたと。それでその魔物のイメージとして挙がったのがピンクのアレという事もギルは話す。
「マジで端折りすぎだからな? いくら俺でも伝わらないぞそれは」
「えー、即座によっしゃ! てなると思ってた」
「正直なのは宜しいが、説明を怠っていい理由にはならないぞ」
「えっ、なんかコーマがまともな事言ってる・・・」
「・・・貴様は以前に比べて適当になりすぎではないか?」
常識枠だったような気もするが、今では適当チャラ男枠の一人に名を連ねている。
「で、そんな感じのいい魔物いない?」
「はぁ・・・まあいいけど、今俺らも魔物達の種族改変とかシャリオンの再構成とかやりはじめたばっかりなんだよ。そんな都合よくぽんぽん見つかる訳ないだろ」
「むー、じゃあ俺も手伝うからちゃっちゃとスカウトしちゃおう」
「主はしっかり相手方に伝えて納得した上で連れて行かないと、納得しないと思うのだが」
サージェスは案外アイリーンの事を良く分かっている。元々サージェスは生真面目で融通の利かない男だ、暴走して例のアレ状態になっていたが、本来の彼は結構真面目に仕事をするのだ。病んでなければ有能なのだ、病んでなければ。
「ま、真面目にやるよ? そりゃもう誠心誠意・・・」
コーマではなくサージェスに突っ込まれるとは思っていなかったのか、ギルは視線を彷徨わせ、動揺している。問題児を押し付けられたり、デミスとのやり取りでストレスがたまっていたのか、何も考えずにはっちゃけそうになっていた自分を振り返り、頭を急速冷却したギルであった。
「一応このままだと滅亡しそうなやつらから優先的に対応していく予定にはなってるんだけど、それはまあ長期的に見ての計画だ、今はそっちの用事を先に済まそうか・・・ってそうだギルに聞きたい事があったんだよ」
「んー? なになに?」
「シャリオンとトリルの転生というか輪廻? のシステムってどうなってる? シャリオンは人間が滅亡して、魔物も徐々に数を減らしてるけど、そいつらの魂ってどういう循環になってるのかなって」
「あー・・・そういやそんな疑問をぶつけられることが無かったから、すっかり頭の中から抜け落ちてたねえ。そこまで面倒なシステムではないんだけど、いい機会だから説明しておこう」
ギルはこの星々の魂の循環などに関するシステムの説明を始めた。
まず、基本的に同じ種族同士で魂は循環する。その種族が滅びたりした場合、一旦保留状態になる。同じ種族同士の人口が増えて、その種族の魂のストックが無くなると、その保留状態の魂から自動的に適合するものが選ばれ、ストックが生まれるまで保留状態の方から供給されることになる。
新しく種族を作り、配置する場合も保留状態の魂が使われる。その魂が無い場合、新たに魂を生み出さなければならなくなり、その時にポイントが消費される。新しく種族を創り出す際にかかるポイントに加えて、魂を新規作成するためにもポイントが掛かるという仕組みだ。
現在シャリオンでは大量の保留状態の魂が存在しているため、種族の新規作成にかかるコストはトリルよりかなり低くなる。
「なるほど、もっとふわっとした感じなのかと思ってたけど、普通にシステムとして機能してるってわけだな」
「昔はかなりふわっとしてたっぽいけどね、今ではちゃんと管理した方がいいだろって事になってるんだよ」
「・・・もしかして、スタンピードとかってさ、そのふわっとした頃によくあったとか?」
「流石、察しがいいねコーマは」
現在数値化することによって、事前に防ぐことも、意図的に起こす事もできるが、ふわっとしていた時代は、神々ですらそれを食い止める事が難しかったのだ。なにせ魂を保管する場所すらもふわっとしていたのだから。
「昔はね、魂の保管場所をダンジョンで行ってたりしたんだよね、だから膨れ過ぎた魂たちの行き場がなくなってスタンピードが起こった。今は別の空間で保管しているから、意図的でない限り起こらないようにはなってるよ」
「今はトリルは魂の総数があまりないと考えていいのか?」
「そうだね、星の年齢としてはかなり若い方だからね。ちなみに普通に人口が増える場合はポイントが自動的に消費されてるよ、微々たるもんだから気にならないけど」
「人口が増えて文化度なんかが上がる方のポイントが多いわけか」
「そゆことそゆこと」
「保管されてる魂にも適性の検索は適応されるのか?」
「多分されると思うよ?」
「じゃあ新しく種族を作って、ここの魂を使ったとして、それをトリルに移送するのは?」
「問題ないね、管理者同じだから」
「よし、新しくピンク・・・じゃねえ、これは絶対怒られる。新しく保育用の魔物を作ろう」
方針は決まったらしい。




