夢魔族の作り替え
夢魔たちの要望としては、記憶はそのままにするが全員。種族としての特性を取り除く事をこれも全員が希望した。種族としての特性というのは、人間の精を栄養源とすることと、子孫を残す方法の事だ。
基本的に夢魔は種族同士で交わる事はない。人間を惑わせそこに種付けをするといった方法だから、人間が居なくなった今、夢魔たちに種族を増やす方法は残されていない。
だからこその特性の除去。
夢魔改めキュバス族となる彼らには、人間と同じように自分達で交わり、子をなす事が出来るようになる予定で、食事の方法もよく話し合って決めた。
精を頂く方法から、通常の食事、もしくは周辺の魔力を取り込む事によって飢えを凌ぐことが出来るというもの。これならば、人間が居なくなったところで彼らを飢えが襲う事はない。
子作りに関しては、これもまた人間と同じように交わるのがいいかと思いきや、夢魔らしく、夢の中で交わう事で子をなす事が可能になるようにと要望を受けた。
見た目は人そのものではあるが、存在としては精霊に近くなるのかもしれないな。とコーマは心の中で完成図を描きながら思った。
天界に戻って作業しても良かったのだが、要望を聞きながら現地でやった方が効率もいいだろうと、今この場で作業中だ。と言っても、ステータスを開いて消したり加えたりするだけなのだが。
「さて、寿命に関してはどうする?」
現在最高齢で800歳と少しだそうで、過去長生きした中では1000歳に達した者もいたとかなんとか。
長生きを設定するのは簡単なことだが、長く生き過ぎると、子をなす事をあまりしなくなるような気もする。
「そうですな、私個人としては、自分が思った所で力を我が子に授けて人生を終えるのが望ましいのですが」
「ほい、じゃあそこまで長くない方が良さそうか。子育てにそこまで時間かかんないだろうし」
だとすると、最長でも200くらいに留めておくか。導く者も必要だろう。
「その、授ける力に関してなのですが・・・」
力と言っても、魔力やら身体能力やらまあ色々ある。スキルに関しても、習得した魔法に関してもだ。
「流石に全部そっくりそのままっていうとなぁ・・・よし、じゃあこれっていうやつを一つだけ継承できるようにしようか、ただし、攻撃系は除いてだ」
攻撃する手段を持つという事は、身の安全を確保するためにも必要な事なのではあるが、突き詰めてしまうと過剰防衛が過ぎる結果にも成り兼ねない。それはアイリーンの望む世界ではないのだ。
コーマはそれをよく理解している、幼馴染の理想を守ってやるだけの甲斐性を持たねば、とここを任された時から心に誓っているのだ。その事をアイリーンは欠片ほども気付いてないのだが。
「現在所持している攻撃系の魔法は、初期の魔法だけ残す。そしてそれは今後研鑽を積んでも威力が増す事も、新しく習得することもない、これはこの星全部で共通させる」
狩りをするにしても、最低限は残しておきたいだろう。だが威力は最低限度で、他人に向けて使用できない縛りを用意しておく。
「承知いたしました、貴方を遣わしたこの星の神はお優しい方なのですな」
コーマの独断でやったことではあるが、そこにアイリーンの意思は確かに存在していた。キュバス族になる予定の夢魔たちにはそのコーマの背後にある神の存在を、コーマからの配慮によって感じたのかもしれない。
「さて、じゃあ生まれ変わった後の事なんだが、今後もここで生き続けるか、それとも移住を希望するか、どうする?」
この人数ならばここで細々と生きてはいけるだろうが、これから子孫を作り、一族の人数を増やしていくとなると、手狭になってしまう。
「我々も、シャイターン族の方々と同じように、人間達の生き残りの方々と同じ場所で暮らせはしませんか?」
長の後ろに控えていた女性の夢魔が、おずおずと挙手をしながら提案してくる。映像で宜しくやっているところを見たせいもあるが、やはり人恋しいのだろう。
「そうだな、まだ居住区には余裕もあるし、それならば、人間と普通に交わって子をなす事もできるとしておくか?」
「はい、私個人の特性としてはそうして欲しいです」
「わかった、お前の個人設定はそのようにしておこう」
「ありがとうございます!」
ぱぁっと明るい表情を見せ、勢いよくコーマに対してお辞儀をする。これは将来ハーフとか普通に生まれそうだなとコーマは思った。
「他の者はどうだ? ここに残るか移住するか、あと他の種族とも交われるようにしておくか」
「我々もそれでお願いします」
話を聞いていた他の夢魔たちも、各々顔を見合わせて頷き合い、コーマに移住を希望した。
「うっし、じゃあちゃちゃっと生まれ変わらせて、地下都市へ引っ越しだな。あっと、忘れてたけど見た目はどうする? 全員子供からスタートするか?」
現在の彼らは年老いた感じはないものの、成熟しているので若々しいとは言えない。でも年齢はリセットされてしまうので、とてもアンバランスになってしまうのだが。
「人間で言う20前後くらいでお願いします」
ピッチピチの0歳(見た目合法)爆誕である。




