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交渉と会議

 「何やら感じたことの無い気配がすると思って出てみれば・・・いきなり何を」


 当然のことながら怪しんでいる反応。そりゃそうだ、自己紹介すらしていないのだから。


 「ああ、すまないな、いきなりで驚かせたな。俺は現在のこの星の管理代行を任されているコーマという。一応神様なんだ、とりあえず話を聞くか? それともこのまま滅びを待つか?」


 簡単な挨拶と、突然の脅しに夢魔たちは目を白黒させている。自分達が抱えている問題を彼らは自覚しているのだ。それを躊躇なく踏み抜いてくるとは、胡散臭い人物を見る目から本当に神様なのかと畏れる眼差しに変わるのも仕方なかった。


 「我らの抱える問題をどこで・・・」


 「どこでっつったってなぁ、しいて言うなら天界で」


 深刻な夢魔たちに比べ、コーマの態度は軽い。軽く言ってのけるからこそ、余計にこの男の不気味さを夢魔たちは感じていた。久方振りに見る人の形をとってはいるが、この男は人ではない。それは理解できるが、突然神だなどと言われても、この短いやり取りの中で素直に信じられるほど夢魔たちは素直な性質を持っていない。


 「そうそう、お前達は封印された悪魔族って知ってるか?」


 「そ、それは知っておりますが・・・」


 「あいつ等は俺が種族を作り替えて新たな種族として生まれ変わらせた。現在の種族はシャイターン族という。とりあえず今のシャイターン族の様子を映像で見てもらうかな」


 生き残り組との共同生活を開始している彼らの映像を、目の前の空中に映し出す。いきなり現れた大画面に夢魔たちはどよめくが、普通に生活している見た事もない種族の姿を確認すると、やはり目の前にいるのは神で間違いないのでは、と感じ始めていた。


 「まあこいつらは元が元だっただけに承諾もなんもなしに、種族を生まれ変わらせたけど、話が通じる相手ならばそんな事はしたくないんでな、で、お前らはどうしたい?」


 夢魔たちは顔を見合わせて、困惑の色を隠せないでいる。存続の一大事だ、すぐにはいとも言えずに困っている。


 「少し・・・考えさせてもらっても?」


 絞り出すように夢魔の一人がそう言う。コーマも当然話し合いがなされることを想定していたため、快諾した。外で待ってもらっていては申し訳ないということで、館の中に招待されることになった。


 古びた洋館の中に入ると、思っていたよりは幽霊屋敷みたいな感じでもなく、普通のお屋敷だった。当然屋敷自体は古いので、直しながら大事に使っているのだろうという事が見て取れる。


 ホールから更に案内されると、そこは広い食堂のようなところだった。大きな机が真ん中にドンと置かれており、椅子が沢山並べられている。よくある貴族の食卓、といった印象だ。


 「ああ、俺は末席でいいからな、いつものように掛けて貰って結構だぞ」


 上座へと案内しようとしていた夢魔たちは、末席でいいという神に驚きを隠せない。尊い存在である身がそのような謙虚な姿勢でいる事が不思議でたまらないといった表情だ。


 「そ、そうですか、ではそのように」


 普段の食事の時のように腰かける夢魔たち。夢魔の本当の食事は人間の精なのだが、それが得られないときは普通に人間のような食事をとるのだ。思えばこの洋館の外には自給自足の為の小さな畑が存在していた。


 「コーマ様の言う通り、我々は現在種の存続の危機にある。これは皆も存じているだろう」


 長の言う言葉に、全員が頷く。


 「種族を作り替えるということは、この夢魔という種がこの世界から消えるという事、その認識であっておりますかな? コーマ様」


 一斉にコーマの方へと視線を向ける夢魔たちの瞳には、不安や恐怖といった負の色が滲んでいる。これから自分達はどうなっていくのか、見えない未来に向けた不安だ。


 「全く同じ種族と言った意味では無くなるが、お前たちの希望は極力叶えるつもりではある、似て非なるものというか、夢魔族から新夢魔族くらいの違いだ」


 そこまで大した違いはない事にも、夢魔たちには衝撃的だったようだ。作り替えるのなら全くの別ものになると思ったからだ。


 「お前たちが望むのなら、まっさらの状態に生まれ変わらせることも出来るし、ほとんど違いが無く、現在不便だと思っている機能を取り外すだけといった一部変更くらいで済ませる事も出来る」


 夢魔たちの瞳に希望の光が宿ったようだった。お互いに顔を見合わせ、今現在困っている事を取り除くだけの処置も出来るという。これならば、悲観的にならずともこの話を受けていいのではと思えてくる。


 「現在の私達が持っている記憶や知識などは、どうなるのでしょうか?」


 夢魔の女性が手を挙げて発言する、他に比べると若いのか、席次も下の方だ。数百歳とはいえ、その美貌は健在らしい。


 「一応引き継がせることもできるし、リセット、まあまっさらにすることもできる。その知識を使ってろくでもない事企んだりしない限りはな。作り替える度合いについては一律でも個々でも構わないぞ、何せ人数も少ないし」


 作業としては大した量じゃない。

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