保育士な魔物?
絵本と音楽はまずはこれでいいでしょう。急ぎ過ぎてもいけないものだしね、文化というものは、時間を掛けてじっくりと育て上げていくものだと思うし。
保育園にも絵本を置きたいし、皆で歌える歌があってもいいと思う。保育園を前提に考えて行動したわけじゃないけど、結果として保育園の為にはなったんでなかろうかと。
「保育園といえば、保母さんどうしようかなぁ・・・」
自分達が子供の頃は保母さんと呼ばれていたが、大人になる頃には保育士と名前を変えていた気がする。別にどっちでもいいけどね・・・と関係が無くなった身分ではそう思っていたことを思い出す。
関係ないけど看護婦さんも看護師さんになってたなぁ・・・。ほんと関係ないけど。
現状、保育園で働いてくれる人がいるかどうか・・・中々に難しいだろう。下界の人達はそれぞれの生活の為にそれぞれが出来る事をしているので、人員に余裕などないのだ。職にあぶれている人はまずもって見当たらない。
「新しく種族作っちゃえば?」
急にギルの声が背後から聞こえて、体がびくりとはねた。帰ってきたんなら先に声かけてくれればよかったのに!
「あ、ああおかえりギル」
「ただいま。で、保育園・・・? 呟きに対して特に考えもなしに言っちゃったけど、保育園作るの?」
そういえば、ギルに相談はまだしてなかったっけ・・・問題児の事で手一杯だったしなぁ。
「うんまあ、準備を進めているところだけど、大体進捗はこんな感じで」
と、フローチャートを簡単に作って見せて、ギルに説明をしておく。そして、新しく施設を作るのはいいけど、人員が確保できないかもしれない問題に、今ぶち当たっているのだということも。
「あー、なるほど。じゃあさっきの新しく種族作っちゃえっていうのは大正解だった?」
「うん、そうなるわね・・・でも新しい種族かぁ・・・」
正直言うと、新しい種族とかを作るのはあまり得意ではないのだ。なんというか、デザインとかそういうのを考えるのが苦手というか。
ありきたりな物になってしまって、独自性がないというか。平凡すぎてインパクトがないというか。とにかく、新しく何かを生み出す作業というのが、ちょっとだけ苦手なのだ。こういうのはコーマとかシュミカの方が多分得意だと思う。
「シャリオンの何かの種族を連れて来るかい? 作り替えならコストもかかんないし」
「え、でもシャリオンは魔物ばっかりなんじゃ・・・」
「コーマは魔物を人型の種族に作り替えて、例の生き残り組をサポートさせてるよ?」
そういえば、そんな報告を聞いたような気もする。割とへえ、そうなの~みたいな感じで流してしまっていた少し前の自分に落胆してしまう・・・もっとちゃんと聞いておけば・・・!
「じゃあコーマに、こっちの星に来てもいいって思ってる種族を探してもらって、保育士にぴったりな種族に作り替えて貰おうかな?」
「別に同意なくても、種族作り替えたら記憶もリセットされるから問題ないと思うけど・・・」
「こういうのは、ちゃんと同意を得てからした方がいいと思うからよ。可哀想じゃないの」
「ま、まあそうだね・・・やっぱアイリーンは優しいね」
「褒めてもなんにも出ないわよ、とりあえずコーマに伝言お願いできる? ついでに様子も見てきてもらって、報告も欲しいかなぁ~なんて」
「はいはい、承ったよ。一応リクエストあれば聞いとくけど?」
すんなり了承してくれるなんて。ギルはこないだから損な役回りばかりさせてる気がして、ちょっと申し訳ない気持ちになってしまう。
でも行ってくれるらしいので、見た目はとにかく子供が怖がらないのが大前提ということ以外は特に要望はないと伝えておいた。
「欲がないというか、なんというか・・・」
「だって、思いつかないんだもん・・・」
「ポ〇モンのラ〇キーみたいな感じの・・・」
「子供が怖がらないけど、それはダメ! 可愛いけど・・・! ダメだからね!」
油断すると、すぐ版権モノに手を出しそうになるギルは恐ろしい子だわ。危険思想すぎる。いやそんな大それたものでもないんだけど、とにかく色んな方面に引っ掛かりそうなものはダメ絶対。
「ちぇ~、あのまるまるボディは魅力的だと思うんだけどな・・・ト〇ロとか」
「いいから早く行ってきてよもう! 版権モノはダメだからね!」
半ば追い出すようにギルを送り出す。このままだとツッコミで減ることの無い体力が減りそう! 見えないところのライフがゼロになりそうだわ。
「ふう・・・とりあえず保育士さんの問題は、あちらに任せておこう・・・疲れた」
「母様、ちょっとお尋ねしても宜しいですか?」
「ん? なぁに?」
「ポ〇モンのラ〇キーというのはどういう感じなのでしょうか?」
「お、おおう・・・まあここで説明する分には構わないか。地球の娯楽の中でね、出てくるキャラクターなんだけど、まるっとしてて・・・って実際見てもらった方がいいわね」
検索して画像を見せてあげると、シエルはまたもやキラキラした目をしてピンク色のアレを眺めている。
シエルがこれがいい! って言いだしたらどうしよう。




