お祭りの挨拶
コーマがシャリオンに向かって暫く経った。緊急な連絡は特にない所を見ると、多分上手くやってるんだろうと思う。まあ何かあってもサージェスもいるし、大丈夫だよね?
こちらはロクストのお祭りの準備が整い、まさに今からその一大イベントが行われるというところ。
「人前に降りるのは緊張するわねえ」
今まで声だけの出演(?)みたいなのはあったけど、実際に降臨みたいなのはシエルがやってたしなぁ。大事なところで噛んだりしないかしら・・・。
先に現地に行っているネルちゃんがお祭りの開始を宣言する時に、ちょこっとだけ降臨して挨拶するだけなんだけどね。神様になってそれなりに色々やってきたけど、未だに自分が崇められるっていうのには慣れないなぁ。
お祭りのメイン会場であるロクオウ村の広場に沢山の人が集まっている。その中心部分には、シエルが作った私の像と、その隣にはロクストの住民が協力して作ったネルちゃんの像が並んでいる。
ちなみにコーマの像はない・・・まあ姿を知る人はほとんどいないので仕方ないんだけどね。一応担当なのに影が薄すぎる。
ネルちゃんが像の前のステージに上がり、それまでざわざわとしていた会場がスッと静かになる。
「皆様、本日はお祭りにお越しいただきありがとうございます、そして準備に携わった全ての人達に感謝します。今日のこのお祭りは、この星にあるラプール大陸を司る女神アイリーン様が、この星全体の神に昇格したお祝いと、不肖ながら私めが神コーマの使徒から神へと昇格した事を記念するものであります」
おおぉ・・・っと会場の人達は感嘆の声をあげ、ネルちゃんの方を見ながらお祈りしている人もちらほらいたり、ステージ上をガン見してる人も居たりでちょっとざわついた。
「ただいまより、この星・・・トリルの神になられたアイリーン様にお越しいただき、お言葉を賜りたいと思います」
よ、よし、行こう・・・!
意を決してお祭り会場のネルちゃんの隣を目指して転移を開始する。当然の事ながら、私の隣にはシエルもいる。シエルは道路事業の際に見た人もいるだろうから、顔は私よりも知れ渡ってるはずだ。
ネルちゃんの隣に、天上から光が差し込むと、会場に居た人たちはその光の柱に目が釘付けになっていた。どこか他人事のように観察しながらゆっくりと降りていく。
降りている本人なので、客観的な視点では見れないけど、きっと神秘的な光景になっているんだろうということは、会場に居る人たちのこちらを見る目で伝わってくる。大勢の人たちの目は私の降臨の際の光の柱を見ている事によってキラキラと輝いて見える。
まるで夜景を楽しむ様に、人々の様子を見ながら私はステージ上に降り立った。
すぅっと光が消え、ステージを取り囲む人々を見回した。沢山の種族が入り混じっているのが、普通になっているロクスト。対立することもなく異種族同士、とても仲の良い良好な関係を築いているのが良く分かる。ああ、なんて愛おしいんだろう。
「皆様、私共の為にこのようなお祭りを開いて頂き、誠にありがとうございます。此の度この惑星トリルの神となったアイリーンと申します、道路事業においては私の使徒であるシエルも大変お世話になりましたね」
にこりと微笑みながら、シエルの背中にそっと手を触れる。ああ、こういう挨拶はほんと慣れないわ・・・うっかりと政治家みたいな挨拶になりはしないだろうかと心配になるが、この世界には政治家なんていないので、そういうツッコミを貰う事はまあまずないだろうけど。
「今までの皆様の努力に感謝を、そしてこれからのこの星の発展に幸多からん事を」
この時の為に、何かできないかと考えていたことがある。シュミカがやったように、生産量アップみたいな事は流石にちょっとアレだけど、ささやかな祝福ができないかと。
それがこれだ。
両手を天に向け、腕を前に伸ばす。すると、私の手から光が溢れ出して、まるでタンポポの綿毛が風に乗って広がるように光が飛び出す。
「皆様に幸運が訪れますよう・・・」
幸運値というものが、ステータスには存在する。これは私達みたいに管理者の権限を持つ者にしか見えない数値なんだけど、運っていうパラメータは運というだけあって割とあてにならないものなのだ。
それでもその数値が少しでもアップすれば、割とささやかな幸せが訪れたりする。ほんとささやかなものなのだけど・・・ガ〇ガリ君の当たりが出たりとかその程度のはず。
キラキラと光る光の粒がロクスト大陸に降り注ぐ。大地にも、人々にも満遍なくささやかな幸運が訪れる事になるだろう。
皆に幸運が行き渡る頃、私とシエルは天界へと戻る。これで私達の出番は終了である。
「アイリーン様より祝福を受けた私達は、更にこの星を発展させていく事をここに誓い、ここに星神祭の開始を宣言いたしますっ!」
ステージ上で、ネルちゃんが祭りの開始を宣言すると、地面が揺れそうなほどの大歓声に包まれた。




