祭りの名前が決まった
「二人でやるにしても、結局どうやって?」
「それはまあ、起こして現状を説明してから本人達の希望を聞こうかなと」
「まぁ、そうするしかないよね・・・」
本人たちが目覚めなければ、話は進まないのだ。こちらで自由にするのもきっと希望を託されたに違いないあの人たちに申し訳ないしね。
コーマならそこまで悪い結果にはならないでしょう。私達よりベテランの神であるサージェスの方が心配なのはなんでだろうね?
「主よ、何やら疑っているようだが、俺は仕事はきっちりとするぞ」
「えー・・・ほんとかなぁ」
「以前の事を言っているなら、あれは遊びであって仕事ではないからだぞ。仕事ならばサボりはしない」
「その言葉信じるからね? コーマをちゃんと補佐してあげてね」
「承知した。全力を尽くそう」
「俺全力で補佐されんのちょっとこえーわ・・・」
補佐ってそもそも全力でするもんなんだろか? という疑問はさておき、とりあえずシャリオンの今後のカギはコーマとサージェスが握る事になった。まあ、ウィードも居るし、悪いようにはならないでしょ。
「そういえば、ギル。手続きがどーの言ってたけど、なんか不具合でもあった?」
「いや・・・そういうんじゃないんだけど、上司がちょっと最近態度変えてきてうざいっていうか・・・」
「あのチャラい人かぁ、前はあんなんじゃなかったとか?」
「つまらねえつまらねえって悪態ばっかついてたよ」
「じゃあ今はつまらなくないってこと?」
「あいつの基準なんて俺は良く分からないから・・・何が面白いんだか知らないけど、とりあえずトリル総合担当に正式に就任おめでとうアイリーン」
「おぉう・・・ありがとう」
「ではこれで、ロクストの方のお祭りも開始できるわけですね!」
ネルちゃんが目をキラキラ輝かせながら、ずずいっとこちらへ身を乗り出した。そういえばロクストのお祭りは手続き次第で保留中だったんだったわ。
「ネルちゃんの神昇格もおめでと! そういえばお祭りの名前は決めてあるの?」
シュミカのお祝いの言葉と疑問を受けて、ネルちゃんはそのまま固まってしまった。あ、これ考えてなかったやつだ。
「え、ええと・・・考えてなかったです、すみません・・・」
「そうねえ、自分の昇進祝いのパーティ名つけろって言われてるようなもんだしね・・・」
なんか恥ずかしいよね、わかる。でも、住民的には、自分達の身近な神の使徒が神へと昇格するんだから、お祝いはしたいはずだし、これから定期的に開催するようになれば、やはり名称は必要だろう。
「昇進の進と神をかけて昇神祭とか・・・?」
「アイリーンて案外おっさんくさいとこあるね」
よりによってギルからおっさんくさいとかいうツッコミを貰ってしまうなんて・・・!キィィ!
「じゃ、じゃあギルはなんかいい案あるっていうの?」
恥ずかしさと悔しさで火照る顔を覚ましながら、そういうギルには何かあるのかと聞いてみる。
「特に・・・」
ないのかよ! おっとお下品な言葉遣いになってしまったわ。とりあえずツッコミたかっただけなのね・・・。
ジト目でギルを睨みつけつつ、何かいい案がないか考えていると、シエルがスッと挙手をしていた。
「シエルさん、意見をどうぞ」
「か、母様なぜいきなりさん付けで・・・え、あの・・・星神祭はどうでしょうか・・・」
「せいしんさい?」
「星の神々を祝うお祭りということで、星神祭と・・・」
「お、いいんじゃない? なんか綺麗にまとまってる感」
「悪かったわね、オッサン的思考で!」
でも星神祭か・・・いいね! トリルの神々にちなんだお祭りってことで、特に昇進に拘ってない感じもいいと思います!
「だ、だめでしょうか?」
「良いと思う! 凄く良いと思うよ! 流石シエルだね!」
「わ、私もいいと思います! ありがとうシエルちゃん!」
「いえ、私はただ思い付いただけなので・・・」
顔をほんのり赤らめながら謙遜するシエル可愛い。凄く可愛い。語彙力が消失してる程度には可愛いと思うわ。
「では、その名称で準備を進めてまいりますね! 詳しい日時など決まりましたらまたご連絡いたしますので!」
ネルちゃんは忙しそうに、でもとても嬉しそうにロクストへと戻っていった。いつでも開催できるようにと準備は進めているようだったが、正式に名前が決まった事を告知したりするのかな? コーマがシャリオンへ赴任する挨拶もせずに去っていった・・・。
憐れむような視線を向けると、コーマは遠い目をしながら
「うん・・・」
誰に言ってるのかしらないけど、短くそう言っていた・・・。まあ、ネルちゃんとコーマの関係性なんて最初からこんなもんだったよね。
「うちも収穫祭的なのあればなぁ~、トリル全体でやりたい気はするけど、気候が違うから収穫時期も違うもんねえ・・・なんか農業的なお祭りできないかなぁ」
こっちはこっちで自分の主催のお祭りを妄想していた。多分、そのうちエルフのお祭りとして何かしら考えてくれるんじゃないかな?
多分ね・・・。




