そこで見つけたものは
「この部屋ですか?」
マップに表示された部屋の前に立つと、結構重厚な感じの扉がそびえていた。いかにもすぎる・・・。
「何かありそげな感じは凄くするけどね・・・」
扉を押すと、ギギギギッと重そうな音を立ててゆっくりと扉は開いていく。よかった、二人がかりで顔真っ赤っかにしながら女子にあるまじきふんばり声を出す羽目にならなくて。
いざとなれば開けごまで普通に開きそうなのが怖い。
全開にはせずに、通れる分だけ開けてから中へと入ると、そこは広い空間だった。棚がびっしりと四方を埋め尽くしており、そこには書物がビッチリ並べまくられていた。どうやら図書室のようだね、図書館というべきか・・・とにかく書物の量が半端ない。
「こ、これは・・・多すぎでは」
「母様は何の本が一番見たいと思いますか?」
「うーん・・・魔物辞典とか、魔法の本かなぁ?」
特に何の本を探しに来たというわけではないので、すぐには浮かんでこないので、思いついたものを上げていくと、シエルがまるでオーケストラの指揮者のように手を振り、その先から光の糸が伸びていく様子が目に入る。そして次々に私達の前へと本が整列していく。なるほど、司書要らずだね!
「というか、ジャンル指定してもこの量なの・・・?」
「ほとんどが魔法に関する本ですね、魔物辞典はこちらになります」
魔物辞典は東西南北で1冊ずつの合計4冊だった。この中で生き残っているのはどの種族なんだろか、帰ったらこれ見ながら現在の種族と照らし合わせて情報を精査しようっと。
シエルが手を止めると、光の糸は消えて、目の前には本の壁があった。
「一応魔法の系統ごとに分けましたが、それでもかなりの蔵書量ですね・・・」
「一旦目の前にある本だけ持って帰ろっか、他の本はまたその時に探しに来ましょ」
「そうですね、魔法関係の本を読むだけでも時間が掛かりそうですし、今回は探索メインという事ですのでこの本は私が収納しておきますね」
「お願いね、この階層にはこれ以上何も・・・」
ふと、今回の検索は「書物」と「魔道具」で検索したけど、他の検索結果は見なくていいのかと。な、ないとは思うけど・・・一応「人間」で検索かけてみたりして・・・。
マップには特に何も示されなかった。ホッ、良かったぁ。
『アイリーン、シエル! ちょっと来て~! すんごいもの見つけちゃった!』
ホッとしているところに、シュミカからの通信が入った。何やら物凄い鼻息の荒い感じだけど、一体何を見つけたっていうんだろう・・・。シュミカの現在地は・・・ここから5層ほど上に行ったところだね。
シエルと顔を見合わせて、お互いに無言で頷くと、手を取りシュミカの元へと移動するのだった。
「何を見つけたって言うのよ、えらい興奮してるけど」
「ここね・・・人間版のノアの箱舟っぽいの!」
「は? え? に、人間がいるの!?」
「人間だけじゃないわ、エルフにドワーフに獣人族、番で眠ってるの」
周りを良く見てみると、棺桶の中に人型が・・・。一応生きては居るようだけど・・・コールドスリープ的な感じなのかしら・・・ピクリとも動かない。何も知らずに見たら悲鳴上げそうな場所だわ。
人種博物館みたいになっている部屋の中をゆっくりと歩いて見て回る。若い男女が眠っている・・・。絶滅したと思われていたけど、まさか・・・まさかこんなところに封印されてたなんて。
「シュミカ、これは・・・ギルに相談する案件だと思うわ」
「だよね、私もそう思ってた」
「まさか封印解いてないよね?」
「解き方わかんないから解いてないと思うよ?」
「うーん・・・まあ大丈夫か。とんでもないもの見つけちゃったし、今日は一旦帰ろっか・・・」
「そうですね、私達だけでは処理しきれない問題ですし・・・」
「狼ちゃん達と一緒にお風呂はいるぅ」
「ちゃんとメスの子達と入るのよ?」
狼でもオスはオス、そんな乱れた風紀は許しませんよ! 一応この場を去る時にこの空間の封印的な物を探して、それが壊れてないかチェックしておいたけど、案外大丈夫そうな感じだった。
でも私は心配性なのでその上から更に封印を施しておいた。見てない間に目覚めて云々とかいうドタバタは怖すぎるからね・・・。
この部屋の事は一応ウィードにも知らせておこうかな・・・。もし目覚めさせる事になった時に、魔物だらけのこの星であの人数が過ごすには過酷すぎるもんね・・・味方がいないと。
「ただいまー」
「おかえり、早かったな? 何かあったのか?」
ウィードが以前よりも大人になった気がする・・・腹でも減ったのか? とかデリカシーの無い様な事を言う感じだったのに。
「お前今すげー失礼な事考えてない?」
「んーん? そんなことないわよ?」
こいつ鋭いな。
「私達は先にお風呂行ってるねー!」
「お前は行かないのか?」
「後で行くわ、今はそれよりちょっとウィードに報告が・・・」
地下都市で見つけた人型種族の番が眠る部屋の事と、封印を更に施してきたという報告と共に伝えると、ウィードは緊張した面持ちで私をじっと見つめていた。
「お前の決定に俺は従う、俺らに悪いようにはしないんだろ?」
そうだけど、なんか見透かされているようでちょっとだけ腹立つわ!




