再び地下都市探索へ
「今日一日くらい狼さん達と一緒に過ごさなくて良かったの?」
「いいのよ、これからはいつでも会いに行けるんだから。今回は長居しにきたんじゃないしね」
「母様、以前つけておいたマーカーが現在も残っているようです、これならすぐにでも現地にいけます」
そう、今回はウィード達との再会も目的ではあったけど、以前サージェスが私の記憶の封印を解いてしまったのでほとんど探索できなかった地下都市を調べるのが主な目的なのだ。
サージェスが眠りについていた地だから、他に何かしらあるんじゃないのかなって思ったんだけどね。トリルの発展のために活かせそうなものならば持って帰りたい。シャリオンもいずれ、魔物達の楽園として栄えてくれればと思っている。
以前なら移動にそれなりの時間が掛かっていたのだけど、今回はもうパワーが違うのよパワーがね! シエルは使徒としての力を取り戻したし、こっちは神二人がいるんだからね! 移動なんて一瞬ですよ一瞬!
「おぉ・・・瓦礫の中に隠された入り口とか・・・コーマが好きそう」
「だよね、コーマこういうの好きよね、ロマンがどうとか言い出して勝手に一人で延々と探索してそう」
「思ったんだけど、コーマってトリルよりこっちの方が肌に合ってるんじゃ・・・」
「ちょっと・・・いやでも・・・確かにそうかも」
コーマは元々モンスターとか異種族大好きっぽいし、この星はポイントとか関係ないし、ロマンに重きを置いているコーマは結構しっくりきそうな気がするのだ。帰ったらちょっとコーマに相談してみようかしら?
今のままトリルで怠惰の神みたいな扱いされてるのは、幼馴染としてはちょっと思うところがなくはない。
「コーマ様の就職先としては、一度ほろんだ未開の地というのは中々に・・・」
「こういうクセの強いとこの方がコーマはやる気でそうな感じはするのよね、ま、帰ったら話だけでもしてみるわ」
そんなコーマ談議をしつつ、前回サージェスを見つけた地点までやってきた。サージェスが寝ていたところまでは特に何もなかったんだけど、そういえばシエルはどの辺まで探索できてたんだろう?
「母様とサージェスがぶつかるまでの探索では特に何も見つけていませんね。凡その場所は見ましたが」
「じゃあ今回はその残りをちょいちょいっと見てから、私の方の見てない場所回りますか~」
「あ、私ちょっと気になる場所あるかも! 行ってきていい?」
シュミカが突然単独行動をしたいと言い出した。魔物の気配はないし危険はないとはおもうんだけど・・・ちょっと心配ではある。
「大丈夫なの? 何かあったら通信で言うのよ?」
「へーきへーき、ここは嫌な感じないし! 私のしっくすせんすがビビ~っときてんのよ!」
「良く分かりませんがお気を付けて」
あっという間にシュミカはこの場から消え去った。謎の行動力恐るべしだね。
「じゃあ私達は前回の続きを見ましょうか、シエルの方は何もなかったら合流しようね」
「分かりました、ちょっぱやで終わらせて合流します」
「どこでそんな言葉遣い覚えてくるのよ・・・」
多分ギルかコーマだろうけどね・・・。シエルの教育に悪い言葉まで教えてたらどうしてやろうか!
前回ここに来てから約1年、状態保存の魔法が掛かっているため、以前と何ら変わる事のない廊下をてくてくと歩いていく。神としての力を取り戻したせいか、ドアを開けなくても大体何があるかわかってしまう・・・。ゲーム的にはつまんないわね。
頭の中にマップまで表示されているので、迷子になる事もなさそう。せっかくマップもあるし、魔道具や書物を検索ワードに設定して、一気に何かしら探そうかな?
そう思った瞬間、マップに1か所だけ光が灯った。ほんと便利な機能だわ、神の機能。
その光の場所はここからそんなに遠くはなさそう・・・とマップを見ながら進んでいくと
『母様、こちらの探索は全て終了致しました、特に何もありませんでしたのでそちらに合流しますね』
『りょうかーい、現在地は・・・言わなくてもわかるわね。この場で立ち止まって待つわ』
そう言うと、あっという間にシエルが目の前に現れた。大体一瞬で来れるから、もう驚くこともなくなったけど、いきなり美少女が目の前に現れたら、普通はびっくりして腰抜かすよねえ。
「母様は、何か見つけられたのですか?」
「なんか、魔道具と書物で検索掛けたら1か所だけ反応あったから、そこに向かってるところよ」
「どちら・・・でしょうね」
魔道具か書物か。どっちでもいいなぁ、トリルにはシャリオンにあるような書物はまだないのよね。歴史書なら、そこから学べることもあるし、魔法書でも魔法づくりの参考になれればいいなと思うし。魔道具なら、シュウにまたお土産を渡す事になるかもしれないしね。
「前は何も手に入れずじまいだったからね、何かあるだけマシよマシ」
以前の私だったら、眠っている都市を荒らすような云々って感じで尻込みしていたかもしれないけど、ここで20年過ごしたアイリーンちゃんはそんな甘っちょろい事は言いません。
野生児なので。




