祭りの終わり
「1か月もあるとか長いって思ってたけど、意外と早かったわね」
始まる前まで、1か月もお祭りが続くって長くない!? と思ってはいたものの、いざ始まってみるとあれよあれよという間に時間は過ぎていく。楽しい時間はあっという間に過ぎていくってやつね。
「これまでは特に問題もなく、住民にもお祭りは喜ばれているようですよ」
自分達の作った物を捧げて、お礼に交換ボックスをプレゼントされたことで、更なる貢献をしようと皆が張り切っているらしい。張り切り過ぎて無茶しない事を祈るばかりだ。
倉庫の中もはちきれんばかりの物量になってきていて、本格的にお裾分けをしないとヤバイ。
「残りは明日かぁ、もう終わりなんだねぇって思うと、長くもないのかな?」
「そうですね、母様を祝うお祭りは常にしていても私は良いと思いますよ?」
シエルはシャリオンから帰ってきてから、少しこういう冗談めかした事も言うようになった。じょ、冗談だよね・・・? 割と本気で言っていてもおかしくないことも言うので、ちょっと判断が付きづらい事もまあ割とある。
「毎日は、逆に疲れちゃうでしょ。こういうのはたまにやるからいいのよ」
「ふふっ、そうですね」
ほらやっぱり。分かって言ってたね!母様の目は常々養われていくのよ、シエルの事なら何でも丸っとお見通しですよ! 多分ね!
「ロクストの方でも、ネルさんの神への昇格祝いと、母様のトリルへの担当昇格へのお祝いの祭りを企画しているようですよ」
「ネルちゃんのは分かるけど、私も一緒でいいの!?」
「ロクストの方では今のところはネルさんの方が知名度は上なんですが、いい機会なので母様の知名度も上げてしまおうという計画なんだとか。合理的な所はネルさん流石と言わざるを得ません」
「確かに・・・! ネルちゃんはあれでいてかなりの合理主義だもんね」
ロクストの道路工事の際にシエルがお手伝いに行き、私の使徒であることをきっちりアピールしてきてくれている。これからは住民の前にシエルが姿を現す事も増えるだろうし、シエルのアピールにもなっていいと思う。私のことは、まあついででいいのよついでで。
というか、コーマをもっと前面に出しても良かったのでは・・・と少し思ってみたけど、コーマは元々裏方大好き人間だし、面倒臭がってやらなそう。それをネルちゃんはちゃんと見抜いていたのね。
「なんだか、コーマがどんどん存在感が・・・」
「母様、こればかりは私にもどうしようも・・・」
「あっ、いいのよ! どうせコーマは表に出るの嫌がると思うのよ」
「そうなんですか、目立つのが苦手なんですか?」
「うん、まあそのような感じね。縁の下の力持ちがかっこいいと思ってるタイプだから・・・地球に居た時でも凄いいい仕事しても評価されなかった事が凄く多かったのよ。でも、そんなに気にした様子はなかったから」
「奥ゆかしいお心をお持ちですね」
お、奥ゆかしいで済ませてもいいのだろうか・・・まあいいか。トリル全体の担当者として正式に手続きが済めば、直ぐにお祭りが出来るように、準備を進めているってところだね。こっちのお祭りが終わったらあっちの手伝いもできればしたいところね。
そういえば、最終日の最後の町での祭事が終わったら、シュミカがなんかしたいって言ってたなぁ・・・。一体何をしでかすのか今になってちょっとだけハラハラしてきた。
「ねえシエル、シュミカが何をするか聞いてる?」
「ああ、最後の最後で何かしたいって言ってましたね。お楽しみは最後までとっておくもんよ! って言ってましたから、私も詳しくは聞いておりません。聞いてきましょうか?」
「い、いやぁ、気になっただけだし・・・多分そんなマズイ事はしないと思うから大丈夫よ」
しないよね? 流石にそんなヤバそうなことやりそうならギルが止めるよね? 既に農業の神としての神格を得ているシュミカだ。そこまで分別のつかない事はしないだろうということでこの場はお茶を濁した。
そして、とうとう最後の町での私の役目が終わった。
すると、空からキラキラと光の粒がラプールに降り注ぎだした。私は上から見ているので、ラプールが光に包まれているように見えて、一瞬ギョッとしてしまった。
『皆様、私は農業を司るシュミカと申します。此の度は私の友であるアイリーンの為にお祭りを開いて頂き私も心から喜んでおります。私からもラプールの皆様に心ばかりのお礼を差し上げたいと思います』
シュミカらしからぬ畏まった物言いに、私のハラハラも止まらない。お、お礼・・・?
『これから先1年は五穀豊穣が約束された土地になります、この光の粒は大地を豊かに、水の流れを清らかに、そして大地で育まれるあらゆる植物を元気にしてくれます。皆様の農業ライフに幸多からん事を!』
私の見ているラプール大陸の模型の前にピロリンとウインドウが飛び出してきた。
『豊穣の願いが行き渡り、これから1年間の農業による食物の取れ高が2倍になります』
2倍はやりすぎじゃないかしら!?




