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コーマの提案

 「提案がある」


 久しぶりの定時連絡会は、シュミカの居る世界樹の元で行われたのだが、そこでいきなりコーマが言い出した。


 「何よいきなり」


 「コーマはいつも唐突すぎるよねー」


 「まあ聞けよ、俺なりに考えてみたんだけど、一応この星の大陸って端っこの方で繋がってるだろ? そろそろ大陸同士の交流って出来ないかと思ってさ」


 「まあ、ある程度文化も違いが出てきてるし、面白そうかも?」


 「新しい刺激も文明を発展させるかもしれないだろ?」


 確かに大陸ごとで文化は少しずつ違っている。ウレインは自然と農業と精霊の大陸だし、ロクストは物作りや酒文化が特化している(あと人間がいない)、ラプールは普通の人間が大半で文明もごくごく普通のものだ。

 異文化交流をすることによって、お互いにいい刺激になればとコーマは考えたようだった。


 「でも端っこの方だけだからねえ、その辺りには集落も何もなかったと思うけど」


 「そう、だから大陸の境目の町をロクストでは作ろうと思ってる」


 「うーん、私はここから動けないし、エルフ達もこの近辺に住んじゃってるからなー・・・あっ、精霊さんにお願いしてどこでも〇ア的なの作れないかな・・・」


 「それ俺も欲しいわ普通に」


 「小さい頃の夢よねー」


 自然とその視線はギルの方へと向いていく。ギルは既にこの流れ的に自分の方へと3人の目が向くことを予想していたのか、軽くため息をついていた。


 「できるよ? できるけど・・・信仰が違うから問題は起きるかもね?」


 「信仰と言えば、なんか最近私の事を農業の神って言ってるエルフがいるんだけど・・・」


 「あー、その事でちょっとシュミカに言う事あったんだった。その農業の神の事なんだけど」


 「えっ、何かマズい事でもあるの!?」


 「いや、マズかないけど。寧ろシュミカにとってはプラスになるんじゃないかな? 大陸の管理はできないけど、農業の事に関してなら神の力を使えるようになったんだよ、神に昇華したってことで」


 「ほわー! それで最近何やらお野菜の発育が良くなったりしてたのかな!」


 「多分そうだろうねー、農業に関しての事のみだけどね。だからあまり力を使わないようにって気にする必要はなくなったって訳」


 「わあ、凄いじゃないシュミカ!」


 「俺は、俺はなんかそういうのないのか?」


 「特に何も、でもそろそろネルが使徒から神になっちゃうんじゃないの」


 「はっ!?」


 「だって、あの子ロクスト大陸でめっちゃ崇められてるんだよ? コーマの名前なんて知らない人いっぱいだけど、ネルの名前知らない人いないんじゃない?」


 「そっ・・・そんな・・・で、何を司る感じなんだ?」


 「あっ、そこまでショックでもないのか。ええと、調停と繁栄だね」


 「へえ、確かにロクスト大陸の今の繁栄はネルのおかげだな、お願いしたの俺なんだけど」


 「そんな事は現地民の知るところではないからね? うかうかしてると怠けものの神として知られるようになるかもよ~」


 コーマの神としての素質のなさがやばい。そしてネルの優秀さがやばい。


 「ネルちゃんにもちゃんと会ってじっくり話してみたいわねぇ」


 帰ってきた事は報告したものの、ちゃんと対面しての再会は果たせていないのだ。近々温泉にでもいきながら色々と話をしたいとは思ってはいるのだが・・・。


 「信仰か・・・それなら俺にちょっと考えがあるんだが」


 「またロクでもない事思い付いたの?」


 「おまっ、俺を何だと思ってんだよ」


 「怠け者の神?」


 「ちげーわ! 俺は知性とロマンの神だよ! 自称な!」


 「そこ自分で言っちゃうんだ」


 「それは置いといてだな、トリルを司る神としてアイリーンを筆頭にして、その下に色々な神がいるって設定にできないかって思ってな、それなら統一感あるだろ?」


 「コーマにしてはなんとなくマトモな気がする」


 「私に全部丸投げしてるようにも聞こえる」


 「実際丸投げしてる気がするねえ」


 「い、いや、丸投げしたいわけじゃねえよ! ロクストの管理は今まで通り俺がやるつもりだよ!」


 「でも悪くはないね、宗教戦争ほど起こりやすいものはないと思うし」


 「地球の歴史を見ても確かにそれは一理あるわね」


 「歴史はわかんないけど、なんとなくは分かる気がする~」


 信じる神が違えば価値観が異なる、異なるというのは争いの元になる事も多々ある。お互いを認め合うのは結構難しいものなのだ。


 「ウレインは即時対応OKだよ! 私が広めればすぐだもんね」


 「うちもネルに頼めばまあ・・・」


 「ほらそこでまたネルちゃんに頼るから・・・」


 「怠け者の神・・・」


 「俺が降臨してそれ言ってもな・・・言ってて悲しいが知名度がねえんだよっ!」


 「ネルは結構喜びそうだね、アイリーンに仕える神としてのポジションゲットなわけだから」


 元々ネルはアイリーンの事を尊敬していたし、大好きなのだから普通に喜ぶだろうというのは容易に想像できる。


 「なんか俺の心を抉ってくる・・・ま、まあそれならアイリーンの神格も上がるだろ」


 「そりゃ余裕で上がりそうだね、早速たびのとb」


 「ストップ、それ以上はいけない! 転移門でいいじゃん! どこでもなアレも禁止!」


 そんなこんなで大陸間交流と人事異動?が決定したのだった。

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