電話的な物ができたらしい
各地の祭りはそれぞれの神殿で行われる事になった。素早く情報の伝達が行われた背景には、シュウの尽力があった。
乗り物を広めるついでに、実用化に向けて下準備をしていたものがあった。この世界は電力がまだないので、電話は使えない。魔法もそこまで遠くに言葉を飛ばすというものはないのだが、少しの距離なら言葉を飛ばす事はできるのだが、目印がないと目的の場所に飛ばす事はできないし、ちょっと使い勝手の悪い魔法だったのだ。
そこで、シュウは考えた。
電話の基地局的な物と、魔法で声を届ける距離を伸ばす手助けをする魔道具を作ろうと。大量には作れないので、町に一つずつといった所で精一杯なのだが、それでもそれが実用化すれば、ラプール全土に情報を伝達する速度は段違いに上がる。
それが更に進化すればファックスのようなものも出来るかもしれない。
まずは、隣町同士で連絡を取り合う実験を行い、それに成功すれば、更に遠くの町へと連絡を取り合ってみる。その試行錯誤を重ね、祭りを執り行う事を伝える今、やっとそれが完成したのだ。
ロクスト大陸での結界運用をヒントにし、こちらは神殿に空の魔石を設置して、少しずつ住民から魔力を融通してもらう。その魔力を利用して、受信と送信を可能にする魔道具を作った。
魔法を開発する町に通信の魔法を開発してもらい、それを元に魔道具を作成していくのはシュウの町アルケミスタだ。乗り物普及のついでに受信機と送信用の魔道具をそれぞれの町へと届けた。
今はまだ、隣同士を繋ぐ感じなのだが、隣と更に隣、という風に線で結んでいく形で全土に行き渡った。伝言ゲームのような感じで、多少不便ではあるが、わざわざ乗り物に乗って手紙を届けるといった時間のかかる手法をとらずに済むのだ。
空の魔石はコーマに融通してもらったので、その分のポイントはアイリーンからコーマへ既に支払い済みだ。
「空の魔石が比較的容易に手に入れれるようにしないといけないわね」
「そうですね、道具作りに役立ちますしね」
「したら、家電とかも夢じゃないよね・・・!」
「かでん・・・ですか?」
家電と言われても、見た事も聞いたこともないシエルにはピンとこない。不思議そうにかでんという言葉を呟いて、首を傾げたシエルはとても可愛らしく見えた。
「あー、私達がいた地球では家にある電化製品を略して家電というのだけど、電化製品っていうのはこっちでいうところの魔道具みたいなものね。魔力の代わりに電力というものを使ってるのよ」
「母様の居た星は、文明がとても進んでいたのですね」
「大昔は今と大して変わらないわよ、魔法もないしね」
「魔力をエネルギーに変えるかぁ・・・マジックバッグはどういう原理で作ってるんだろ?」
「空間を広げる魔法とそれを付与する魔法の2種類が必要になるかと思います。あちらの星で呼んだ文献では、魔法陣という物を縫い付けたり描いたりしてその魔法の効果を出す、といった手法もあるようです」
「へええ・・・あっちの人間達は魔法文明が進んでたのねー、参考になるわ」
「良い所はどんどん取り入れて行くべきですね」
「そうだね、何も全部自分で考え出さなくてもいいんだもんね!」
シュウをはじめとしたラプールの住民達の頑張りの成果を目の当たりにした二人は、その頑張りに応えるため、やる気をメラメラと燃え上がらせていたのだった。
「でもちょっと、ラプールらしい方法で作れたら嬉しいかなって気はする」
「そうですね、ラプールならばまず空間を広げる魔法を研究するところから始めないといけませんが」
「ま、シュウが広めてもいいと思ったらきっと自分で動き出すわよ」
その辺の判断は丸投げなのである。広めてもいいと思えば広めればいいし、世に出す事は危険だと思えばお蔵入りにすればいいのだ。上で決めるより、下で生きている人になるべく判断してほしいのだ。そのための手助けならば喜んでする。
「そうですね、今は祭りの手配でそれどころではないでしょうけども」
「あはは、そだねえ! どんな祭りになるのか楽しみだねえ~」
ラプールの人々は、祭りをどのように執り行うかを話し合うため、中央に位置する町へ代表を集め、そこで会議を行った。今回は中央の町で行われているが、基本的に毎回持ち回りである。国はないが、一つの町が偏った権力を持たないようにと配慮されているのである。
このルール作りも全土の住民達で話し合った結果なのだ。どこかに集中させてしまうと、ラプールの良さが失われてしまうのではないかと危惧する人がかなり多くいた。住民達の間で不満が出て、それを火種に争いに発展しては、女神が悲しまれる。そう人々は考えたのだった。
国もなければ王もいないが、女神は居る。ラプール大陸ではそれが普通で、女神の喜ぶ姿が見たい。それが原動力なのだ。
姿の見えない神を崇めるのと違い、ここの女神は割と身近に現れるし、なんなら結構な人が夢でその姿を見ている。教えを説く事もなければ、教義もないのだが、ラプール民的にはそれがいいらしかった。




