神の格
「無理なの分かってて言ってる自覚あるよね?」
「まあ、うん」
律儀にも一応掛け合ってみるギルである。アイリーンが世話になったウィード達をトリルに移住することはできるのかどうかなんて、普通に考えて無理なのである。
「ま、あの子がそのフェンリルに会いに行く方法なら・・・無くはないけど、アレがどう言うか」
「うっ・・・その方法はちょっと・・・」
「どうせあの星はもう担当者もいない廃棄星になるから、交渉次第ってところではあるんだけどね?」
魔物の星は人が住んでいない、だから神が管理する必要もないのだ。自然の摂理に任せ、衰退するのも繁栄するのも自由。だからあの星は実質空白地帯のようなもので、サージェスの物というわけでもなくなっているのだが・・・。
「名義自体はアレの物だからねー、いらないけどギルが欲しがってるなら渡さないって言われる可能性がねー」
「分かってる・・・分かってるから困ってるんだ」
「あ、そうだ。あの子、なんだっけアイリーン? あの子に直接交渉させたら?」
「えっ!? そんなこと・・・いや、でも・・・本人が納得するまでやらせた方がいいのかな」
「そろそろこっちの領域にも入れる程度には格が上がるんじゃない?」
神の格。それはこのゲームでのポイントがどうとかいう問題ではなく、どれだけの者が信仰しているか、愛されているか。その神を信じ、敬い、奉る。その総数、思いの強さ等で決まるのだ。
シュミカは神として働いていないので論外だが、コーマもその姿を知る者もいないし、知名度もほぼない。アイリーンだけがトリルで群を抜いて信仰されているのだ。
「そうだね、帰ったら打診してみるよ。格も確認しておく」
「アレには一応話を通しておいてあげるよ」
「感謝する」
そう言い、すぐさま退室するギルを見ながら驚きの表情を浮かべ、そしてそれは今まで見せた事も無い様な笑みに変わる。
「俺に感謝だなんて・・・ギルも変わったねえ」
この神のチャラい態度にも原因はあるが、ギルは今まで反発しかしてこなかった。拾い上げられた先でもサージェスと一緒という事がどうしても嫌だった。ある意味あの時サージェスを庇って死んだのは、サージェスとの関係から逃れる為という気持ちもあったからだ。
余計な事を、と。
「さてさて、愛しい神の子からお願いされたからには俺も頑張らないとね~」
無駄に張り切るとロクな事にはならないのだろうが、初めて感謝された神は嬉しそうにサージェスの元へと向かったのだった。
「・・・というわけなんだ」
「げっ・・・アレと話し合うの・・・」
「嫌かもしれないけど、こういうのアイリーンが自分でやった方がダメだったにしても納得いくでしょ?」
「それは、そうなんだけどね」
「それに、神の領域で話し合うわけだから、危害を加えたりとかそういう心配はしなくていい」
「そこは安心なんだろうけど、話通じるのかしら」
「うっ・・・それはその・・・なるようになる?」
「はぁ、まあウィード達と会う事ができるかもしれないもんね、頑張ってみるわ」
「その神の格ってのは、もう上がってるのか?」
コーマが横から疑問を投げかけてくる。アイリーンの神としての格は、ギルが見るにもう少しと言った所だった。このままいけばそう遠くない。
「あと少しってところだね、神としての仕事をキッチリこなせば全然問題ないね」
「ブランクは多少感じるところはあるけど、お仕事自体は好きだもの、頑張るわ」
「あ、そうだ、シュウにもちゃんと経緯を話しておいた方がいいんじゃないか?」
「そうね、シュウにもお世話になったしね、下界の時間で明日にでも話してみるわ」
シュウには地図を書いて貰ったり、いない間頑張って貰っていたりするので、かなり感謝しているのだ。それなりの形で功績を称えたいとアイリーンは思っていた。
帰還の報告と、シュウからの報告を受け取るために、明日の早朝にでも時間を取るつもりだった。ここでの話が纏まり次第、アイリーンはシュウに手紙を届け、いきなり呼び出しというサプライズを回避してあげたのだった。
「いきなり手紙もビックリはするよな・・・、でもまあ無事帰ってきて何よりだな」
その手紙を見たシュウは、軽くため息をつき、女神の無事を喜んだ。明日の朝は、待ちに待ったご対面だ。疲れている様子を見せてはいけないと思い、今ある作業を一旦終わらせ、早々と床に就くのだった。
下界時間での次の朝、いつもの時間を止めての呼び出し。そこにはギル・コーマ・シエル・アイリーンが居て、アイリーンはシュウに駆け寄り、その手を取って感謝の意を伝えた。
「ほんとに・・・ありがとう! なんでもって訳にはいかないけど、叶えられる範囲でならお願い事言ってみて!」
「それはありがたいんだけど、復活祭みたいな事やった方がいいんじゃないのか?」
「「「「復活祭?」」」」
「ほら、今は女神が不在だから皆で頑張ろうみたいになってるじゃないか、女神の帰還を伝えて、記念祭みたいにしたら、ラプール全土に安心が齎されるんじゃないかなって・・・」
「シュウ天才すぎ! ついでに尽力してくれたシュウにお土産・・・いえ、ご褒美あげる!」
どこからともなく取り出したそれは、魔物の星で手に入れたマジックバッグだった。




