再会の食事会
皆に一斉通信した直後、白い部屋に二人の影が現れる。すかさず現れた二人に思わずくすりと笑ってしまう。
「「アイリーン!!」」
こちらに駆け寄り、コーマがアイリーンを抱きしめる。続いてギルも二人を纏めて抱きしめる。コーマにとっては3年ちょっとぶり、ギルにとっては眠っていた事もあってそこまで久しぶりというわけでもないのだろうけど、とにかく無事を確認出来て安心できたというところだろう。
「ちょっと見ないうちに・・・ボリュームが」
「久しぶりに会って早速その軽口なわけ? まあ・・・それはうん・・・」
生まれ変わったのだから、発育状況も、人種も異なるのだからボディラインが変わってしまうのも当たり前なのだが、アイリーンは自分でキャラメイクしたあのボディが失われてしまった事を実はちょっとだけ気にしていたのだ。
「別にそこは気にしなくてよくない? 恋人でもないのに」
「幼馴染としては複雑な心境でござる。折角ナイスバディを手に入れたのになぁ・・・」
コーマの好みでどうとかいう問題ではなかったようだ。アイリーンのコンプレックスが解消されたのがまた元通りという現状が気の毒になったというか。
この二人の間にはそういう色気は存在しないのだった。喜んでいいのか悪いのか。
「うっさいわね、自然の摂理、人体の神秘! 例のアレのサービス不足!」
「まあ、サービスするわけないよな、普通に考えて」
これには3人同時に頷いてしまう。悪意を持って転生させたのにサービスしてやる奴はいない。
「積もる話は色々あるんだけど、先にシュミカのとこに行ってきてもいい?」
「そうだな、俺らも行くわ」
記憶を失っていたので20年ぶりと言われるとそうでもないのだが、シュミカにとっては恐ろしく長く感じる3年だったに違いないと思い、早速皆でシュミカの元へ行くことに。
『シュミカ、今からそっちいくから待ってて』
『わかった! 正座して待ってる!』
『いや普通に待ってよ、なんで正座』
良く分からないが、待ってるようだ。シュミカの元へ行くのは個々でもできるのだが、今回はギルが全員を運ぶということになった。相変わらず一瞬でシュミカの待つ世界樹の元へと移動する。
視点が切り替わると、変わらぬ姿の世界樹と、変わり果てた姿の世界樹の周りの景色が広がった。
「なっ・・・なにこれ!?」
そこには一面の畑、畑、田んぼ、果樹園。立派な農場が出来上がっていた。ちらほらとお手伝いのエルフ達も汗を流しながら働いている。
アイリーンが居なくなってからの3年、エルフ達はシュミカに農業を学んでいたが、遠くの集落から通うより、ここの近くに住んで共に農場を営む方がいいという方針に転換し、現在では集落は畑の外側にあるのだ。
「いらっしゃい! 我が農場へ!」
「いや我が農場じゃないでしょ! 世界樹ってもっとこうありがたい感じのもんじゃないの!?」
「いや~、その的確なツッコミも久しぶりで身に染みるわ~」
頬に手を当てて、アイリーンのツッコミを堪能するシュミカは、久しぶりに会ったというのに相変わらず過ぎて、ただいまを言うタイミングも失ってしまった。
「あーもう、せっかくただいまって言おうと思ったのに」
「えへへ、アイリーンおかえりっ!」
眉間を押さえて、頭の中を整理しているアイリーンに、シュミカは抱き着いた。先におかえりを言いたかったらしい。
「もう・・・アンタは相変わらずね、ただいまシュミカ」
「ほんどに・・・よがっだ・・・っううっ」
既に泣き出していたシュミカはもう止まらなかった。そこから泣き止むまでに30分はかかっただろうか。更に嗚咽が落ち着くまで30分、シュミカの号泣に驚いたエルフ達が遠巻きにうろうろして落ち着かない。
「シュミカはな、アイリーンが帰ってきたらびっくりさせたいっつって、これ頑張ってたんだ」
寂しさを紛らわすためでもあった、世界樹のシュミカが動ける範囲の中で、農園を作る。帰ってきたら、アイリーンがびっくりするだろうなと思って、より一層色々と頑張ったらしい。
「今ではね、お米だって作ってるしね、懐かしい地球のごはんも食べれるよ! 帰ってきたら、一緒に食べようと思って、炊き立てご飯も空間収納に用意してあるんだよ!」
「おぉ・・・食べたい! 食べよう!」
オーソドックスに野菜炒め、罠で捕ってきた鶏肉で作った唐揚げに、自作の色んな野菜の漬物。デザートには果樹園のフルーツ盛り沢山、あえて加工をあまりせずに素材の味を楽しむ食事になった。それがとても懐かしく思えてならなかった。
魔物の星ではまともな料理も食べていなかったので、余計に調理されたものが美味しく感じる。漬物などは、ラプールにもなかったので、今度広めてみようと早速女神の仕事、復帰第一弾を考え始めてしまったアイリーンであった。
「ん~~~おいしい!」
「やっぱり、皆で食べるご飯は格別だねえ!」
「高級メロンなんて地球でも食った事無かったんだけど・・・」
コーマは一人貧乏くさい事を言っていた。




